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Vol.29 物理学はノーベル賞への近道

タイトル

人類に最大の貢献をした人々

いきなりですが、みなさん、12月10日は何の日か、何があるかご存知ですか? では、ノーベル賞は、聞いたことがありますよね。ダイナマイトを発明したスウェーデン人のアルフレッド・ノーベルが創設した賞です。そのノーベルの命日であり、ノーベル賞の授賞式が行われる日です。今年で120回目になります。授賞式の前後の期間は「ノーベルウィーク」と呼ばれ、式典の会場となるストックホルムでは連日、受賞者を祝福するさまざまな行事が行われます。

ノーベル賞には、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞などがあり、これまで、ノーベル賞をもらった日本出身の人は29人、理科の分野が多く1949年の湯川秀樹氏の物理学賞をはじめ今年受賞が決まっている眞鍋淑郎氏まで25人にも及びます。

いまの世界があるのはこの人たちのおかげといっても過言ではないでしょう。

すべての自然科学の基礎・物理学

科学者の中でも物理学者は、人類の希望の星といわれる人たちです。なぜなら、物理学というのは、地球や太陽や宇宙がどうなっているのか説明できるからです。

有名な物理学者をあげると、まず古代ギリシアのアルキメデス、それからイタリアのガリレオ・ガリレイ、イギリスのニュートン、そして、アインシュタインです。アインシュタインは、ノーベル物理学賞もとった人で、日本に来たこともあり、舌をぺろっと出した写真がチャーミングで、世界的に人気のある科学者です。

アインシュタインに学ぶ

大天才といわれたアインシュタインですが、小学生のときには先生から「君は教室の後ろに座ってにやにやしているだけだ」といわれるくらい、あまりできがいいとはいえない子どもでした。でも、自分の好きなことにはのめり込んでいくタイプでした。

みなさんも子どもの頃、サッカーが好きならば一日中やっていても疲れないし、ピアノが得意ならば一日中弾いていても疲れなかったのではないでしょうか。アインシュタインにとっては、それが数学や物理学だったのです。自分はエリートでもないし、勉強ができるわけでもない。でも、自分の才能を信じていて、自分は何かすごい発見ができるのではないかという予感があり、その予感に導かれるようにして、若い頃から仲間とアイディアを出し合って研究をしていました。

アインシュタインは、宇宙がどうなっているのか望遠鏡で観察しましたが、全部が見えるわけではないので、想像力を働かせました。彼は「知識には限界があるけれども、想像は世界をすっぽりと包むのだ」と、想像することの大切さをいっています。

つまり、アインシュタインのすごさは、自分の想像力で理論を立てたことです。そして後になって、アインシュタインの理論どおりだったということが実証されました。つまり予言しているのだけれども、占いのような予言ではなく、もっと理論的にこうなっていくのだと予言したのです。そして、「すべての物が、目に見えない演奏者が遠くで奏でる不思議な調べに合わせて踊っている」と、宇宙の法則性を予言するような言葉も残しています。

そして、1905年物理学の世界で奇跡の年といわるのですが、アインシュタインが「特殊相対性理論」という有名な論文を発表します。アインシュタインは、宇宙は、時間と空間が関係している不思議な世界だといっています。宇宙を光の速さで移動したときには、地球で計っている時間ではなくなってしまい、空間もまっすくではなくて、ゆがんでしまうというのです。

光の速度は1秒間に地球を7周半する速さだから、光の速度で人間が移動することはできないけれど、もし光の背に乗って走ることができたら、周囲はどのように見えるのかと、彼は頭の中で想像してみました。頭の中で実験することを「思考実験」といいます。

実際、彼は路面電車に乗って時計台を見ながら思考実験をしました。もし路面電車が光の速さで走ったら、「時計台の時計は止まっているように見えるかもしれないが、自分の懐中時計はそのまま動いているのではないか」「物体の速度が光の速度に近づくと、時間はだれにとっても同じものではなくなる」ということを直感的に感じ取ったのです。そして、双子の一人は地球にいて、一人は高速のロケットに乗って宇宙に行くと、帰ってきたときには年齢が違っている。ちょっと不思議だけれど、そういうことがあるともいっています。

また、アインシュタインは、物がエネルギーだということも発見しました。

私たちが手にする鉛筆やボールペンはエネルギーを持っていないように感じます。しかし、原子という、ものすごく小さな単位で考えると、鉛筆やボールペンの中では原子たちがすごい速さで振動していて、エネルギーだということがわかるのです。アインシュタインのエネルギーの理論によって、太陽は物質がエネルギーに変わって燃えているということもわかったし、原子核反応によってとてつもないエネルギーが出るということもわかり、そこから原子爆弾ができることもわかりました。

ですが、科学の発見は使い方次第で、悪い結果をもたらす場合もあります。

原爆もそうです。アインシュタインが原爆づくりに関わったわけではないけれど、こういう爆弾ができるというヒントを教えてしまったのです。

目指せ第二のアインシュタイン

アインシュタインはその後、湯川秀樹氏などと一緒に平和運動に力を入れ、世界平和が大事だと言い続けました。原爆のヒントを与えたことに対する、罪滅ぼしだったのかもしれませんね。

物理学は日本人に向いているといわれていて、先述しましたが、ノーベル物理学賞を湯川秀樹氏をはじめ12人もとっています。みなさんのお子さんの中からもノーベル賞を受賞した人たちにあこがれて、科学者、物理学者になる人が出てきてほしいと思います。

vol.29 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年12月号掲載

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