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Vol.100 大学入試改革のいま(2)

 

 先月に続き、「大学入試制度の大改革」の概要についてお伝えしていきます。現行のセンター試験の後継となる「大学入学希望者学力評価テスト」がどのような中身か不透明であるために、「大学入試問題がどう変わるか」の全体像が見えていません。そんな中「すでに変わりつつある入試問題の傾向」から改革のヒントがみてとれそうなのです。

「批判的・論理的思考力テスト」という名称を聞いたことがありますか?

 先月の内容と若干重なりますが、「大学入学希望者学力評価テスト」(以降学力評価テスト)は、従来の大学入試センター試験が行っているマーク式の学力判定に加えて、「思考力・判断力・表現力」も評価することになります。よって、「答え」だけでなく問題解決の過程や自身の考えを記述する問題が出題されることになりますが、自由度の高い記述問題となると、採点時間やコスト、そして採点の公平性などに多くの課題が残されていて、現実には理想通りの出題ができないことが予想されています。
 そのため、「各大学が個別に行う試験」がどのように変化するのかについて注目が集まっています。自由度の高い記述問題(英数国を中心に)や、受験生の「主体性・多様性・協働性」を評価する手がかりとして重要性が増す小論文は、すでに出題傾向の変化が見られていて2020年度を見据えた各大学の取り組みと連動しているのです。
 2016年度入試から始まった東京大学の推薦入試・京都大学の特色入試を筆頭に、各大学が独自に行う選抜方法の多様化は進んでいくばかりです。まだ募集人員は少なく出願要件がかなり高いので、現在の高校生には縁遠いものかもしれませんが、それぞれの大学がここから試行錯誤を重ねて2020年度にピントを合わせて仕組みを作ってきます。私立大学はもちろん国立大学であっても、いわゆる難関大学も例外なく新しい取り組みを始めていて、今後「聞いたことのない名前の入試制度」が続々と増えてきます(別表参照)から、小学生のお子さまをお持ちの保護者の方々は「まだ先のこと」とは思わずに情報を収集しておくとよいでしょう。
 個人的には「批判的・論理的思考力テスト」が、いったいどのようなテストになっていくのか想像できず、とても興味があります。

     

各大学が実施する独自入試制度(一部)

実施開始年度 大学名 入試名
2015年度 ICU ATLUS(総合教養)入試
2015年度 長崎大学 批判的・論理的思考力テスト
2016年度 東京大学 推薦入試
2016年度 京都大学 特色入試
2017年度 お茶の水女子大学 新フンボルト入試
2017年度 大阪大学 世界適塾入試
2018年度 北海道大学 国際総合入試(仮称)
2018年度 一橋大学 推薦入試

「事前に決められた正解のない問題」が急激に増える

 自由度の高い記述問題、といえばこの10年で大きく様変わりしたのが「エッセイ型の英作文(自由英作文)です。

大阪大学(2016 年前期:英語)
「知識は力なり」と言われます。知識を持つということはどんな力を持つことになると思いますか。具体例を挙げ、あなたの考えを70語程度の英語で答えなさい。

東京大学(2016 年前期:英語)
下の絵に描かれた状況を簡単に説明した上で、それについてあなたが思ったことを述べよ。全体で60〜80語の英語で答えよ。


早稲田大学(政経2016 年:英語)
 次の文章を読んで、賛成か反対かの理由を少なくとも2つ挙げ、あなたの考えを英語で述べなさい。(130語程度)
 喫煙は日本では違法とされるべきである(原題は問題文も英語です)

 皆さまの高校時代、大学受験時と比較してみていかがでしょうか。
 英作文といえば「和文英訳」だった時代ははるか昔、今は英作文に「何を考え、自分なりに整理し、まとめるか」という問題解決能力が課せられていることがおわかりいただけると思います。
 この自由英作文の題材からもわかるように、「英語は自分の考えを述べるツールのひとつである」ことを念頭において「独りよがりではない視点で物事を考え、それを的確に他者に伝え、課題を把握できること」を試される傾向が、大学入試のみならず高校入試や中学入試においても高まっています。これは「社会からの強いニーズ」が背景にあることはもちろんですが、英語の試験でありながら「一般教養」「背景知識」「異文化理解」といった領域まで問うことによって、これまでの日本が量産してきた「暗記型の秀才」では対応できない能力、つまり「21世紀型の学力」を体現しているのです。
 このような背景を理解した上で、もう一度この問題を考えてみてください。大阪大学の問題は、人工知能(AI)が進化して人間の仕事を奪っていくと言われる時代が目の前に来ていることを前提として、あえて「知識とは?」と問いかけているのですから、英語力のみならずトータルな教養や問題意識が求められています。東京大学の問題は、状況説明はできても自分の思いを英語で述べるのは、大変難しかっただろうと思います。機会があればお子さまに絵を見せて「日本語で」述べてもらってみてください。小学生の方が奇抜で独創的な発想ができるかもしれません。そして早稲田大学ですが、もはや英作文ではなくディベートに近い出題です。英語力を見たいのか、それとも受験者の考え方、論理力を見たいのか、判断がつきかねます。
 こうした「事前に決められた正解のない問題」が、2020年度の新テスト開始とともに、一気に増えていくことが予想されています。これも「大学入試制度の大改革」の一つなのです。

 こうした変化を頭に入れ日々の生活に落とし込んでみると、「作文を書ける小学生」を育てる価値がおわかりいただけると思います。作文を書く際のルールやテクニックの修得、あるいは「入試で困らないために」という目的はもちろんのこと、この英作文のように一見漠然としてつかみどころのない事象をよく分析し、明確な根拠に基づき自分の意見を論じる習慣を構築することが、おそらく彼らの「21世紀を生き抜く力」に直結していくのでしょう。
 我々大人が気をつけておかなければならないことは、このような習慣が「ある日突然身につくものではない」ということです。新テストに関する情報が流れ始めて、そこから急に準備しようと思ってもおそらくその道程は困難を極めることでしょう。この点に関しては幼少からコツコツと積み重ねた経験に勝る特効薬はありません。

vol.100 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年8月号掲載

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