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Vol.110 嫌いだった勉強が好きになった子の特徴とは?
私は現在中学生に数学を指導していますが、けっして昔から数学が得意だったわけではありません。実は中2の夏まではむしろ「嫌い」に近い存在でした。ところが、ふとしたきっかけで数学との関わり方が変わり「楽しくなる→成績が上がる→もっと楽しくなる」の好循環が起こり、文字通り人生まで変わってしまったわけです。このような経験をした小中学生に関する調査はこれまでなかったのですが、今回初めてデータでその実態を知ることができました。驚くことも多かったので、皆さまにもご紹介していきます。
追跡調査で初めてわかった「嫌い→好き」の割合
今回ご紹介するのは「2015年と2016年で同じ人に同じ調査をした結果」です。この1年間の間で勉強が好きになったり逆に嫌いになったり、ということまで数値で把握することができました。
あなたは「勉強」がどれくらい好きですか
2015 小4・小5 | 2016 小5・小6 | |||
---|---|---|---|---|
勉強が好き | 68.1% | → | 好きのまま | 55.4% |
好き→嫌い | 12.9% | |||
勉強嫌い | 31.9% | 嫌い→好き | 11.1% | |
嫌いのまま | 20.5% |
2015 小6・中1・中2 | 2016 中1・中2・中3 | |||
---|---|---|---|---|
勉強が好き | 53.4% | → | 好きのまま | 37.0% |
好き→嫌い | 16.4% | |||
勉強嫌い | 46.6% | 嫌い→好き | 9.4% | |
嫌いのまま | 37.2% |
具体的に数値を紹介すると、「小4→小5」 「小5→小6」にはそれぞれ11・0%、11・2%の割合で勉強が「嫌い→好き」に変わった子どもが存在しています(逆に、「好き→嫌い」は順に14.6%、11.2%)。
これが中学生になると、「嫌い→好き」は「小6→中1」「中1→中2」ではいずれも10%を下回り(「好き→嫌い」は順に19.2%、17.4%)、受験学年で少々持ち直すものの「嫌い」を「好き」に修正することは難しくなります。事実、勉強を「嫌い」と回答する子どもは中学生以降急激に増え、中学2年以降は半数を超えてしまうことを覚えておいてください。
勉強が「嫌い」の比率(2016年)
小4生 | 26.7% |
---|---|
小5生 | 32.1% |
小6生 | 31.3% |
中1生 | 45.5% |
中2生 | 57.3% |
中3生 | 56.3% |
「あまり好きではない」「まったく好きではない」の合計
しかしながら、少数とはいえ小学生でも中学生でも勉強が「好き」になったケースはあるのです。彼らが具体的に何を変えたのかを見てみましょう。そこに「勉強好きな子どもを育てるヒント」が隠されていると思われるからです。
勉強が「好き」に変わった子の特徴を探る
2015年の調査で「勉強が嫌い」と回答した子どもたちの1年後に関する調査結果をご覧ください。
勉強方法について(2016年)
項目 | 2016年回答 | 小5・小6 | 中学生 |
---|---|---|---|
くり返し書いて覚える | 嫌い→好き | 62.9% | 73.7% |
嫌いなまま | 41.1% | 51.4% | |
テストで間違えた問題をやり直す | 嫌い→好き | 77.8% | 70.1% |
嫌いなまま | 55.6% | 53.1% | |
何がわかっていないか確かめながら勉強する | 嫌い→好き | 54.1% | 73.7% |
嫌いなまま | 31.4% | 46.8% |
小学生・中学生と成長するにつれ、「勉強の好き嫌い」の変化に影響を与える効果的な学習方法が違っていることがわかります。もちろん子どもの成長度合には個人差がありますので一概には言えませんが、小学生段階では「習慣化、ルール作り(継続)」、中学生段階では「自己分析」が必要とされるということでしょう。これらを確立できれば勉強を「好き」に変えることができるはずです。
大切なことは、小学生で身につけた学習習慣・学習スタイルを小6後半~中1の間に(自主的な)工夫が伴う形に変化させることです。成長とともに遊びの質が変わっていくように、勉強方法も変えていかなければなりません。小学生のうちは「勉強が楽しくなった」で充分ですが、中学生になれば「勉強は(自分で)楽しくする」ものになります。これに気づかないと中2あたりから勉強が苦しくなってくるということを、前述のデータがハッキリ示しています。
次に、「勉強をするようになった動機・きっかけ」にも注目しましょう。 「新しいことを知るうれしさを知った」割合が高くなっていることが目につきます。自身の成長とともに興味・関心が増え、自然科学だろうと地理だろうとスポーツだろうと、何か一つのことを調べることで面白さを感じたのかもしれません。そのジャンルを問わず「知ったことを掘り下げて調べる」という習慣が大学での専攻にまで影響を及ぼす可能性もあるのですから、できれば時間のある小学生のうちに「目をキラキラさせて、時の経つのを忘れて没頭する」何か(親としてはゲームでは困りますが)に出会えることが大切なのでしょう。反対に「叱られる」「ペナルティが与えられる」ルールの中での勉強は、「やらされるだけ」に終始して効果が得られない可能性が高くなることを示しています。
勉強する理由について(2016年)
項目 | 2016年回答 | 小5・小6 | 中学生 |
---|---|---|---|
新しいことを知るのがうれしいから | 嫌い→好き | 76.1% | 72.0% |
嫌いなまま | 42.0% | 36.8% | |
友だちに負けたくないから | 嫌い→好き | 68.5% | 72.4% |
嫌いなまま | 47.3% | 50.6% | |
先生や親に叱られたくないから | 嫌い→好き | 51.1% | 40.4% |
嫌いなまま | 51.3% | 49.2% |
こうして多くのデータを紹介しましたが、これだけでは特に小学生のお子さまに対して保護者がどのような関わり方をするべきなのかその方向性が見えてきません。次回は「保護者の関わり」の部分に注目して調査結果からわかることを掘り下げていきます。
出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査 2016」
vol.110 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年6月号掲載