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Vol.25 文章題を「嫌い」から「好き」に変えるには

 

 算数の問題を出題します。ぜひお子さまといっしょに考えてみてください。

A、B、Cの3人がゲームをした。
ルールはジャンケンに勝ったら、勝った人が他の2人のそれぞれから、自分の持っている玉と同じ数の玉をもらえるというものだった。
次のことがわかっているとき、はじめにBが持っていた玉の数はいくつか。

①ジャンケンはいずれの回も1度で1人の勝者が決まった。
②1回目と2回目のジャンケンは、Aが勝った。
③3回目と4回目のジャンケンは、Bが勝った。
④5回目のジャンケンでCがやっと勝つと、AとBの玉はすべてCの手に渡った。そのとき、Cの持っていた玉は243個だった。
⑤ジャンケンに負けた人は、常に勝った人の持っている玉の数以上を持っていた。

解法のポイント

 お母さん、最初から「どうせわからないから……」と諦めようとしませんでしたか? お子さまはどうでしたか?「諦めたらそこで試合終了」というフレーズにもあるとおり、諦めたら先には進めません。ところが、文章題を嫌う人には「すぐに諦めてしまう」共通の特徴があるのです。
 この問題は「国家公務員試験(Ⅰ種)」で出題されたものです。この問題の出題意図は、「結局どういうことなの?」ということを瞬時に把握できるかどうかであり、公式やテクニックの類を必要とはしないので、小学生でも大人でも同じ条件で考えることができるレベルの問題です。具体的に言えば、「ジャンケンに勝つと自分の持っている玉の数が3倍になる」という隠れたルールに気づくかどうかの差でしかありません。「どんな公式を使うのだろう?」とか「こんな問題は解いたことがない」「子どもはまだ方程式を習っていないのに」といったことは、全く考える必要がありません。

 

文章題嫌いになる原因

 普段中学生と接していて、文章題を苦手にしている生徒の多くは「食塩水の入れ替えの解き方は……」「出会いと追いつきのときは……」など、パターンごとに解法を覚えて練習し、模試でも入試本番でも、自分の経験の範囲内で解ければ正解、ダメなら諦めるといった習性を共通して持っています。だから自分で一読してイメージがわかないと、それだけで諦めてしまうのです(粘って考えれば簡単な問題であっても)。
 保護者会でこの話をすると「私も学生時代そうだった」という人がかなりの割合でいらっしゃるので、私の感覚はそれほどずれているとは思えません。そして困ったことに、中学受験の準備をしている小学生の段階から、同じスタイルの学習を塾や家庭ですりこまれている子どもが存在するのです。
 これだけは声高に訴えたいのですが、算数や数学において文章題を扱う目的は「よい中学やよい大学に合格すること」ではありません。志望校に合格することは自分の目標を実現するための「手段」であって、本来これを「目的」とすること自体が間違っているはずなのです。
 この「目的」と「手段」の区別があいまいになっていると、「とりあえずパターンを覚えてしまえばいいや」というスタイルの勉強法で固まってしまいます。この勉強法は公立高校の入試対策(難しくないレベルの問題を確実に正解することが問われる)では一般的になってしまっています。同様に小学校で行われる普段の授業やテストにおいても、子どもが「100点取りたい、自分で○をつけたい」という意志が強くなればなるほど「この場合はかけ算、こっちの場合はわり算」とパターン暗記の方向へ進んでいきます。すると「学校レベルの文章題はよくできるけれど、ちょっとひねったレベルになると全く歯が立たない」子どもに育ってしまうことになるのです。これこそが「文章題嫌い」を大量に生み出す原因なのです。


文章題の意図

 そもそもにして、あらゆる解法をマスターした上で受験に臨むなんてことはできるはずもありません。
 教える側にしても、すべての問題をパターン分けしてあげることなんてできるはずがないし、その必要もありません。必要なことは「経験を基にして自分で考える習慣」を身につけさせてあげることではないでしょうか。文章題を扱う意図が「覚えてきた頻出パターンの手順どおりに解き進め正解まで至るか」ではなく、「散在する情報の中から最も重要なものをピックアップし、これを起点として自分で筋道を立て正解を目指す」ことであることを理解していない大人が、保護者にも学校の先生にも塾の先生にも多くなりすぎました。この意図は受験のみならず、お子さまが社会に出て仕事をするようになったときに最も必要とされることであり、公式やテクニック、裏技やマニュアル等の便利なツールに頼り切った勉強や生活とは真逆に位置づけられるも のです。

諦めない力を養う

 最後に、お子さまを「文章題嫌い」から脱却させるにはどうすればよいのかアドバイスをします。「正解を出せるかどうか」を全く問わず、今回紹介したような問題を「30分」粘り強く考えることが苦にならないような習慣を身につけさせればOKです。はじめはパズルからでもよいでしょう。30分集中できれば、ずいぶん試行錯誤を繰り返すはずです。その経験の中から「ポイントを拾ってくる」「筋道を立てて考える」習慣が身につきます。
 そのためには、保護者が一緒になって挑戦し、面白がってみせる演出も必要です。くれぐれも保護者の方が先にギブアップしてしまわれませんように……。
 ちなみに文頭の問題の答えは「61」になります。いかがだったでしょうか?

vol.25 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2010年 4月号掲載

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