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Vol.34 「内向き志向」の現実をのぞいてみよう

 

 日本から海外へ留学する学生が減少しています。08年に米国に留学した日本人(高校生以下を除く)は、97年の6割程度まで落ち込み、長期派遣研究者数にいたっては、ピーク時の98年に比べて半減してしまいました。最近ではこのような「海外に出たくない」と考える学生のことを、「内向き志向」と呼ぶようです。
 急激なグローバル社会の到来によって、仕事のスタイルから就職活動までが変化しつつある中、戸惑いを感じる大学生や若手社会人は少なくないようです。こうした彼らの戸惑いぶりは、もしかするとみなさんのお子さまの「未来の姿」を暗示しているのかもしれません。
 今回は、産業能率大学が発表した「第4回新入社員のグローバル意識調査」の中からいくつかのデータを紹介しながら、「内向き志向」の現実をのぞいてみることにします。

海外で働きたいと思うか

 回答した「今年の新入社員」のうち二人に一人が、海外では「働きたいとは思わない」と考えています。これは過去3回の調査結果に比べても際立って高い数値となりました。その一方で「どんな国・地域でも働きたい」と答えた率も過去最高(27%)に達し、『海外志向の二極化』が目立つ結果となっています。企業の海外進出が積極的になる中、特に新卒採用では「少数派の海外志向の強い人材の争奪戦」が今後激化することが予想されます。
 また、回答理由に注目すると、「働きたい」と答えた人からは「自分自身の視野を広げたい」「日本ではできない経験を積みたい」といったチャレンジ精神がうかがえますが、「働きたくない」と答えた人では「海外勤務はリスクが高い」「自分の能力に自信がない」といった回答が上位をしめており、こうした傾向が「内向き志向」をネガティブにとられる理由のひとつとして挙げられます。

      

海外赴任を命じられたら

    

 実際に海外赴任を命じられた場合には、最も多かった回答は「命令ならば仕方なく従う」の40.0%で、次いで「喜んで従う」が33.0%となっています。二人に一人が「海外で働きたくない」と回答しているわりには拒否しようとする割合が低く、この結果からは「グローバル化が避けられないことはわかっているが、できることなら自分は国内に留まっておきたい」という傾向を読み取ることができます。これは、企業側の視点に立てば「内向き志向=消極的」と見えることは当然です。     

    

 また、海外勤務での不安を尋ねた質問では、「治安」の84.8%が最も高く、「言葉」「食事」を上回っている点が注目です。「現地での人間関係の構築」「仕事上の責任の重さ」といった項目は、比較的ポイントが低く、仕事よりも生活面での不安が「海外に出たくない=内向き志向」の要因であることがうかがえます。私はこの原因を「実体験ではなく、ネットなどから得たバーチャル情報への過信」の習慣によるものと考えます(ここでは詳述しません)。事実、回答者の「留学経験の有無」と「海外進出志向」には相関があり、「内向き志向」の原因として「未体験の事象に一歩踏みだしてチャレンジしようとする意欲の不足」はもちろん、「自分の手持ちの情報やイメージのみで是非を判断する傾向」があると思うのです。

      

 勤務地に対する質問もあります。「先進国」「新興国」「途上国」の三つに分けて、どの程度働きたいかを尋ねたところ、今後日本の重要な貿易相手国になるであろう「新興国」「途上国」で働きたいと思う人の割合は、それぞれ11.3%、8.5%と低い結果であり、逆に「働きたくない」と思う人はそれぞれ40%を超えています。これも「回答者が持つ国へのイメージ」が影響していると思われます。今後数十年の間に経済成長が見込まれる地域にチャレンジしようとする意欲の無さは、そのまま新卒採用における「アジア留学生の積極採用へのシフト」につながり、若者にとってプラスには作用しません。

 

「外を見る」大切さ

 報道等で紹介されているように、今年は企業の新卒採用に関して「転換点」を迎えていることは間違いありません。中・高校生の保護者と話していても、「どの大学に行けるか」より「子どもが社会人になれるのか」という心配の方が大きくなっていることを実感します。
 ところが最近の大学生の多くは、中学・高校の間に「社会人になるために必要な要素」を学ぶことなく受験勉強に終始し、大学に入っても「留学する時間もなく」就職活動の時期を迎えます。こうした事情から、すべてにおいて経験不足で視野が狭いため「まだ見ぬ世界」に不安を抱くのも当たり前です。これが「内向き志向」の原点だと私は思うのです。昔はこれでも通用したかもしれませんが、今後は無理です。
 どうか、お子さまに対して「広い視野で世の中を見ること」を高校を卒業するまでに経験させてあげてください。テストの結果に一喜一憂するだけの時間を過ごすと、強烈なシッペ返しにあう時代になっていることを肝に銘じて、かわいい子にはさまざまな旅や経験をさせてあげてほしいと思います。

   

vol.34 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2011年 1月号掲載

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