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Vol.37 理科を制する者は未来を制す?

 

 いよいよ4月から、小学校では「脱ゆとり」の指導要領による授業がスタートします。算数で33 %、理科で37%も教科書のページ数が増える「理数重視」のカリキュラムとなりますので、ご家庭でも今まで以上に理科・算数の学習到達度には注意が必要です。これによって、いわゆる「理科離れ」の解消も期待されているわけですが、小学校の先生の中に「理科の指導が不安」という方が多いという声も聞きます。はたして、理科の勉強は学校任せ・塾任せで大丈夫なのでしょうか。

理科離れの実態とは

 2004年春、新聞に「小学生の4割は『太陽が地球の周囲を回っている』と思っている」という衝撃の調査結果が掲載されました。我々の時代に「子どもでも常識」とされてきた科学知識であっても、現代の子どもたちが必ずしもきちんと理解しているとは限らないことを実証するものとなりました。現在の日本では、「理科や数学が面白い」と答える生徒の割合が低いことが指摘され(グラフ1)、また、学年が進むほど理科の勉強に対する関心が低くなる(グラフ2)とされています。
 また、日本の大人の科学技術に対する理解度も低いとされ、特に高校生から20歳代にかけての世代において関心が低いとの指摘もあるのです。「便利になりすぎて科学技術への感動がない」「理系は文系より不遇である(?)」など、さまざまな理由が考えられますが、何にしても悪い傾向であることに違いはありません。

      

理科離れ=国家の危機

    

 資源を持たない我が国にとっては、人材や知的財産こそがこれまでも、そしてこれからの時代を生き抜くためにも、重要な「唯一の資源」です。事実、高度経済成長期には理工系学部の新設が相次ぎ、1964年までの10年間だけで、理工系学部は約2万7000人の定員増となっているのです(参考:資料1)。
 それに対して現代はどうでしょうか。知的財産権を中心とした新たな産業競争力を意識しなければ生き残れない時代でありながら、若者の理科離れが進み、特にテコ入れがされてきたわけではありません。
 これは、「将来の日本を支える人材が質・量ともに不足する」時代がくることを意味します。その不足分を補うどころか、今後日本の若者に変わって活躍するのがインドや中国の優秀な若者たちであり、すなわちグローバル社会における国際競争力の低下(日本の地盤沈下)につながります。この面ではすでに、日本は大ピンチの状態に陥っているのです。     


最も重要な「親の意識改革」

 ここで我々保護者に必要なのは、理科や算数を勉強する意味は、「子ども自身が自分の未来を生き抜くため」であることを再認識することだと思います。もう一度言いますが「科学技術力は国際競争力に直結している」のです。子どもたちが「理科や算数が大好き」と言ってくれないと日本が滅びます。大好きになってもらうために、目先の点数に一喜一憂するのではなく、まず我々保護者が子どもへの接し方を改めることが大切だと思うのです。
 ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士は「理科は教科書だけでなく実験をさせることが重要。今の子どもたちが本物の自然に触れる機会が激減していることが問題である」と発言されているそうです。その影響でしょうか、中学入試においても実験・観察に関する出題が多くなり、進学塾での理科実験教室の開講が増えています。私は仕事柄、保護者の方から相談を受ける機会がありますが、実験・観察に関しては「ただ塾に行かせても効果はない。保護者が一緒になって関心を持つことが大事」とお答えしています。
 理科や算数に関しては、「親は無関心(苦手)だったけれど、子どもは勝手に興味を持って……」という事例を、私は見聞したことはありません。「ウチの子は理科が苦手で……」とおっしゃる保護者のほとんどが、自身理科が苦手で自然科学に関心を持っておられないようです。これでは、子どもの周辺に自然科学に関する情報があふれるはずがありません。子どもの理科離れを心配するのであれば、まずは保護者が理科や算数に関して「ワクワクしている姿勢」を見せる必要があります(もちろん演出でかまいません)。テストの点数だけ見て怒ることが、「怒られるのがイヤだから暗記する=つまらない」と考える最も大きな要因であるということは、経験上ハッキリと申し上げることができるのです。

 

理科重視の時代がやって来る?

 そんな中、「全国学力・学習状況調査」において、実は平成24年度から「理科」を追加することが検討されることになりました。教科の特性上実現に向けての課題も多いのですが、子どもたちの理科離れをくいとめること、「国際的な学習到達度調査(PISA型)」といった新しい指標への対応など、複数の要因が重なって、いよいよ「理科重視」の方針が打ち出されることになりそうです。しかしながら、子どもたちが理科好きになる素晴らしい授業が、突然全国の学校で展開されるようになるとは思えません。であれば、親自らが子どもと一緒になって「理科を楽しむ」ことが一番だと思うのです。
 早速、始めてみませんか。

   

vol.37 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2011年 4月号掲載

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