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Vol.73 小学生にとって必要なキャリア教育とは

 

 皆さんはキャリア教育と聞くとどのようなことを思い浮かべるでしょうか?
 最近では、小学校においてもキャリア教育の推進が求められていて、先生方が試行錯誤しながら指導案を考えています。それは、必ずしも仕事調べや職業体験といった「遠い将来」を意識させる内容だけではないようです。

家庭におけるキャリア教育の実態

 いま私の手元には、国立教育政策研究所がまとめた「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」の結果があります。ここでは小学生の保護者が回答した結果を紹介していきます。
 まず、「キャリア教育という言葉を聞いたことがあるか」という問いには、73.6%の人が「聞いたことがない」と答えています。小学生の保護者にとってはなじみがなく、中学70%、高校65.3%と学年が上がるにつれて耳にする機会が増える言葉ということがわかります。
 この言葉を聞いて最もイメージしやすい「将来の進路・生き方」に関する質問にある、「お子さんとどの程度話し合っていますか」という問いには、およそ4分の3の方が「よく・時々話し合っている」と答えているのですが、その内容については表1のように、直近の進路である「受験」が約80%、それに付随する「勉強」に関することが約70%と多くなっているようです。

 

表1 お子さんと話している内容(複数回答)

中学校・高校・大学等上級学校のことや様々な職業のこと
77.8%
将来に向けた勉強の大切さ
68.7%
お子さんのよさや得意なこと
62.4%
お子さんが憧れている将来の職業
55.4%
今後、家庭や学校でみんなと生活する上で大切な心構え等
50.2%
保護者自身の歩んできた人生やそこから得た教訓
48.8%
家業や保護者自身の職業のやりがいや苦労
37.5%

小学校におけるキャリア教育の実態

 それに対して小学校が目指すキャリア教育は、授業中に行われる性質上、様々な作業が入りますから、ご家庭でのやりとりとは一見すると方向が違っているようにも受け取れます。具体的な「キャリア教育における取り組み内容」として挙げられているものには、
 ・様々な立場の考えの相手に対して、その意見を聴き理解しようとする
 ・不得意なことや苦手なことでも、自分の成長のために進んで取り組もうとする
 ・相手が理解しやすいように自分の気持ちを整理して伝える
 ・学ぶことや働くことの意義について理解し、学校での学習と自分の将来をつなげて考える
といったものがあり、必ずしも仕事調べや職業紹介、あるいは講話だけがキャリア教育ではないことがわかります。特に重点をおいて先生方が指導されているのは「人間関係の形成・社会形成の能力」「自己理解・自己管理能力」に関する項目であり、これらを明確に設定して取り組むと子どもたちの学習意欲が向上するというデータも示されています。方法論としては家庭と学校で違っていますが、最終的に目指すところは「将来きちんと自分自身で学べるようになること」で一致しているようです。
 その一方で、実施時間の確保や評価(学校ですから成績をつけなければなりません)方法に困る先生が多く、「自分の目標の実現に向かって行動する」「将来について具体的な目標をたて実現方法を考える」といった、社会人基礎力とでもいうべき「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」については、まだまだ小学生のうちはほぼ手つかずになっている現状も調査結果から浮彫りになっています。
 ちなみに、我々の時代にはなかった「中学校への訪問や見学、体験入学、学校説明会」といった行事も「キャリア教育の学習内容」に分類されるそうです。


大人には「子どもがどんな情報を求めているか」が見えていない

 このように小学生に対するキャリア教育が注目される中、お子さまの先輩にあたる中学生や高校生が求めている情報が、家庭でも学校でもなかなか提供されていない実態も見えてきています。
 中学生・高校生への「将来の生き方や進路について考えるために指導してほしかったこと」という質問では、
 ・就職後の離職・失業など、将来起こり得る人生上の諸リスクへの対応
と回答した生徒の割合が、中学校で32.1%( 17項目中第2位)、高等学校では23.1%( 17項目中第3位)と非常に高くなっているのです。大人は進学であれ就職のことであれ「夢を実現するまで」の過程については指導やアドバイスをしますが、その後のことに触れることは少なくなるものです。表1を見てもおわかりのとおり、普段から保護者が子どもに対して「自分の職業についてのやりがいや苦労」「自分の歩んできた人生やそこから得た教訓」を話す機会が少ないこともその一因と考えられます。
 実は、この調査結果では中学生保護者の54.8%、高校生保護者の61.5%が将来のリスクへの対応の仕方についての指導を望んでいる(それは学校で教えてくれということ)とわかったのですが、私はこの部分について、学校の先生に指導を求めるには無理があると考えています。
 先生方が子どもを前にして「教師という仕事の苦労」を話せるはずがありませんよね。また、最初から「教師になりたい」という夢を持って努力し、それを実現した人たちですから、他の職業のやりがいや苦労について語れというほうが無茶だと私は思うのです。
 自分たちでは話せないから講演を依頼するとしても、普通大人がアポイントをとるのは「その道で活躍している人、その世界の第一人者」か「企業や団体への依頼」といったところでしょう。こういった方が、いわゆる「失敗談」「人生におけるリスク」を話してくれる可能性は少ないものです。

 子どもたちは「過去に失敗したけれど、そこから再起して立ち上がった」「人生にはこんなリスクがある」という話も欲しています。進学や就職に関する指導、「頑張れば夢はかなう」という話も大切ですが、「夢の陰に隠れた現実や挫折とそれを乗り越えた経緯」についても、皆さん自身の経験を話してあげる機会を設けてあげてください。おそらく子どもたちは真剣に、目を輝かせて話を聴くことでしょう。


参考資料:「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」国立教育政策研究所 2013年

vol.73 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 5月号掲載

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