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Vol.74 ビジネスの最前線に携わる人が考える『企業が欲しがる人材』とは

 

 連休中のある日、民間企業(某通信系大手)に勤める友人と食事をしました。私の子どもが大学生だということもあって、話題はどうしても「最近の就職活動事情」が中心になりました。この友人は人事担当ではありませんが、現場で新入社員を預かる者として「保護者の方へ」とメッセージを託してくれました。

新人採用の実態について聞いてみた

友人が勤める企業では、今春200名前後の新入社員を採用したといいます。その内訳について、彼が「社内報で見た限りだが」という前置きつきで教えてくれました。
(1)採用の75%は理系から(技術・開発職)。文系は少数激戦。
(2)採用の3~4割は外国人留学生(アジア系が多い)。
これを単純に計算すると、200名のうち文系は50名しか採用されず、さらにそのうち20名前後は外国人留学生ということになります。この採用事情からも昨今の大学生に見られる「理系志向の高まり」の理由の一端がうかがえます。友人はこの理由として、こんな話をしてくれました。
 ウチの会社の生命線は新技術・新製品の開発。だから理系重視は当たり前。人事・経理といった事務畑、営業畑は理系の人間だって研修すればできるようになるが、その逆はない。最初から事務・営業しかできない自分みたいな人間(友人は私立文系)を大量に採用していた時代は、もう遠い昔のことなんだ。
と。さらに、外国人留学生採用の実態についても教えてくれました。採用される外国人留学生は間違いなく優秀。母国語・英語・日本語の最低3か国語はビジネスレベルで流暢に使いこなす。ビジネスメールは日本語で、時候のあいさつや敬語もちゃんと使いこなすから、その辺の日本人よりよっぽど日本語の扱いは丁寧だ。電話のやり取りももちろん日本語を全く問題なく使いこなす。自分の関西弁もちゃんと聞き取って理解するのだからたいしたものだ。と。そして、友人はこう続けました。
 シンガポールから来た新人にこう言われたよ。「日本はこれだけ平和で夜の治安もいいのに、どうして皆仕事が終わった後勉強しないのですか」だと。彼らは余暇の時間でも勉強する。治安がよいということは部下や上司と飲みに行けるということではなくて、「夜遅くまで勉強のために移動できる」という大きなメリットらしい。すでに3か国語を話せる部下に「いまスペイン語の勉強にはまっています」なんて言われてみろ、こっちは何も言い返せないよ。私は、苦笑いするしかありません。英語も自由に使いこなせないのが現実なのですから。そして友人は、メッセージとして次のことを皆さんに伝えたいと続けました。彼らは国家レベルのエリートで、今この会社で仕事をしながらも、次のステップアップをいつも考えているのです。母国に帰って仕事をするのか、アメリカに行こうとするのか。だからいつもどんなときも自分を磨き続けています。そんな彼らと張り合おうと思ったら、TOEICの点数がどうだこうだと言っているレベルでは太刀打ちできません。
 じゃあ、何を磨けばよいのかといえばプレゼン力とか自己アピール力とかではありません。こんなものは練習すればある程度までは上達するし、就職活動の段階ではそれほど差がつくものではないからです。大きく差がつくのは「問題解決力」とか「数学的思考」といった「論理的に物事を考える習慣」で、これらはちょっと準備しただけなら底の浅さがすぐに見えてしまいます。すぐにはどうにも鍛えられないものなのです。だから、新人採用においては、大学名を聞こうが聞くまいが、採用する人材はおおむね大学の序列に比例することになりがちです。とのことでした。私は途中から父親としてこの話を聞いていましたが、背筋がゾッとする思いでした。

 

小学生は、英語より「自分で考える力」が優先

 友人の会社に限らず「グローバル化を見据えた新人採用」を考える企業の話題は、新聞やTVにおいて本当によく見かけるようになりました。報道の多くは「海外に拠点を持って、社員の海外勤務を前提とする」「採用・経営についてその人材を日本人に限定しない」といった方針転換の話題であり、その業種もメーカー、小売を問わず幅広くなっているようです。
 こうした改革の第一歩として象徴的に使われるのが「応募基準」「昇進基準」にTOEICのような明確な基準を設けることです。例えば武田薬品工業では2013年入社の新卒採用から、研究職の応募条件について「TOEIC730点以上(満点は990点)が望ましい」との基準を設けています。この会社は研究部門トップに外国人が就任し、取締役会も英語で開くなど「机を並べる上司・同僚が日本人ではない」光景が恒常化することを前提に準備していると思われます。
 こうした改革に追随する企業が多くなると、「採用の際に学校名は一切見ない代わりに、語学力についてTOEICの得点を目安にする」「英語力がなければ門前払い」という方針が飛び交うことも今後予想され、我々保護者の心配はつきず「では、とにかく英語力を磨こう」となりがちですが、「語学力はあって当たり前、しかし語学力があることはアドバンテージにはならない」ということを、前提としてしっかり理解しておくことが大切です。
 友人のメッセージにもあるとおり、新入社員に最も求められるものは「問題解決力」であったり、主体性・創造力といった「自分で物事を組み上げる力」なのです。そして、その自分の考えを主張する手段として「外国語」が必要となるのです。たとえば「時間を守る」という習慣があいまいな国の方々と仕事をしようと思えば、日本人の時間に関する常識をただ押し付けてもうまくいくはずがありません。相手に気持ちよく仕事をしてもらおうと思えば、相手のことをよく理解し「自分が耐えれば済むから我慢しよう」「初めから時間を早めに設定してみよう」といった、臨機応変に対応する「観察眼」が最も重要になってくるでしょう。これがないと、いくら語学に堪能であったとしても仕事で成功することは難しくなります。
 だからこそ、小学生はもちろん中学・高校時代を通して最も経験してほしいことは「自分で物事を組み上げる力の育成」、具体的には「諦めずに粘り強く考え抜く姿勢の育成」「自分の考えを書いたり話したりして、わかりやすく相手に伝える習慣の育成」です。これらは、誰かに教え込まれて身につけるものではなく、学生時代に自分自身で考え・工夫した多種多様な経験でのみ養われるものだと私は考えます。これこそが企業が求める「自分で物事を組み上げる力」の正体だと思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。 学年が上がれば上がるほど、英語を初めとする外国語の勉強に時間を割くようになることは当然ですが、小学生の間は「まず日本語で考え、まとめることができる」ことを優先したいものです。母語である日本語で表現できないものは外国語でも表現できるはずがありません。現在お子さまが受講されている作文講座にも、将来のグローバル人材を育むエッセンスが充分に含まれていることを、ぜひお子さまに伝えてあげてください。

vol.74 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 6月号掲載

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