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Vol.98 しっかりしない子どもは、いつになったら自立するの?

 

 わが家には大学生の子どもが2人いますが、彼らの成長につれて我々親は「どんな可能性があるのだろうか」という期待が消え、「進学は、就職は、そして結婚は大丈夫なのだろうか」という心配や不安に悩まされる度合いが大きくなっていることを強く実感しています。こうした心配や不安の要因について分析した調査結果が先日公表されました。

子どもの将来は楽しみ? それとも不安?

 今回紹介する調査は、小学1年生から高校3年生までの親子1万6千組のデータを分析したもので、2015年夏に行われたものです。保護者から見た子どもに対する心配の中で象徴的なデータから紹介していきます。

子どもが大人になったとき自立できるか不安

  男子 女子
全学年 55.4 47.0
小1〜3年 50.7 46.0
小4〜6年 55.0 44.0
中学生 58.6 49.2
高校生 58.0 49.1

(単位:%)とてもあてはまる+まああてはまる の割合

 小1から高3まで全学年を対象とすると、子どもの自立について不安を感じる保護者の割合は51.2%となります。これを高いとみるかどうかは判断が分かれますが、どの学年においても約半数の保護者が不安に感じていて、中学生以降にその割合が高くなる傾向がみてとれます。紹介した表の通り性別でみると、男子の保護者のほうが不安を感じている傾 向にあって、小4~6までの学年では男女差が10ポイントを超えていることが注目されます。
 この要因として、一般的に言われるのは「男子の幼さ」でしょうか。中学受験においては、特に男子において「精神的成長の遅さ」が様々なデメリットを生じさせる原因であるという論が一般的です。
 中学受験で扱われる国語の読解問題に目を通したことのある方は実感をお持ちかもしれませんが、扱われる題材は一般的な小学生向けのものではないことが多く、主人公の心の機微や世の中の事象に広く興味を持とうとしない子どもにとっては、全く面白みが感じられないと思われます。つまり中学受験に限って言えば、精神的な幼さを残す子どもには適していないチャレンジだという一面もあるのです。
 中学受験をしない場合においても、整理整頓やゲーム・テレビとの付き合い方などでお子さまの一挙手一投足にイライラされている方は数多くおられることでしょう。生活習慣における自立度が親の想定するラインに達していないケースが、小学生から中学生においては男子の割合のほうがかなり高いであろうことは私自身の経験上からも容易に想像がで きることです。

将来が見えないのは保護者も子どもも同じ?

 一方、中学生・高校生と学年が上がるにつれて、心配や不安の中身が学校の成績や将来の進路、あるいはスマホの使い方にシフトしている傾向が、紙面の都合上データは紹介できませんがはっきりと数値として表れています。それに対して、この年代になると子ども自身は「将来やりたいこと」に悩み始めるのです。

将来の目標がはっきりしている

  男子 女子
全学年 47.0 53.2
小 4 49.2 55.7
小 5 48.7 61.5
小 6 49.8 54.7
中 1 45.6 49.7
中 2 39.5 45.1
中 3 41.0 47.6
高 1 44.1 48.3
高 2 47.5 51.4
高 3 57.7 64.5

(単位:%)とてもあてはまる+まああてはまる の割合

    

 「将来の目標がはっきりしている」と答えた小学生の割合は、半数を超える程度です。小学生だと「野球選手になりたい」「パティシエになりたい」など、漠然とした「職業への憧れ」を持っていても不思議ではないのですが、男子の数値の低さや男女差が、前述の「保護者が感じる自立への不安」の割合と見事にリンクしていることがおわかりいただけると思います。
 さらに彼らが中学生になると、男女ともに数値が減少していることにも注目してください。純粋に夢を語る小学生と現実を見据えた進路選択を意識する高校生の「はざま」に位置する中学生にとっては、「自分の将来像を意識しその目標に向かって頑張る」という行動パターンを確立することすら難しくなっていることがうかがえます。このような迷いの中で毎日を過ごす中学生に向かって、保護者が普段から感じている「(子どもの)将来への心配」を、何かのきっかけで感情にまかせてぶつけるようなことがあれば、大きな反発が戻ってくることはいうまでもありませんね。子ども自身に答えが見えていないから、反発という手段しかとりようがないのでしょう。

親の役割は指摘よりも励まし

 そんな中学生・高校生が前を向いて進むよ うになるためのヒントが、子どもへの質問と その調査結果の中にありました。

難しいことや新しいことにいつも挑戦したい

小4~小6 65.3
中学生 56.2
高校生 53.4

     
保護者のかかわり方で比較
とても応援してくれる 68.7
まあ応援してくれる 50.1
応援してくれない 38.5
 

(単位:%)とてもあてはまる+まああてはまる の割合

 将来像が見えないからチャレンジしなくなるのか、それとも逆なのかはわかりませんが、学校段階が上がるにつれて子どもたちから「チャレンジしようとする意識」が消えていくようです。これは言い方を変えれば、部活やテスト勉強など「目の前に課された課題」をこなすことで精一杯の毎日を過ごしている現実の表れなのかもしれません。しかしながら、このチャレンジ意識の有無にははっきりとした差が存在しました。それは「保護者からの励まし・応援などの働きかけ」です。私も保護者として耳が痛いのですが、子どもの至らないところを指摘するだけでは彼らの行動は変わらないようです。むしろ「励まし・応援」を受けている子どもは、そうでない子どもに比べて30ポイントもの差をつけてチャレンジ意識を持ち合わせているのです。同様に、将来の目標設定においても、「とても応援してくれる」と答えた子どもと「応援してくれない」と答えた子どもとの間には20ポイントの差が生じていることも覚えておいてください。

 我々保護者の子どもに対する接し方は、ついつい「叱る・説教・指摘」の類になりがちです。時と場合にもよりますが、この結果によると「励まし・応援」とのバランスが大切で、子どもの自立段階やスピードにあわせて、可能な限り肯定的にかかわったほうが様々な面での子どもの成長を促すことになるようです。次の機会にはちょっとだけ気をつけてみてはいかがでしょうか。

資料:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査」2015年

vol.98 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年6月号掲載

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