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子育て相談 Vol.102

今月のお悩み

“負けず嫌い”

間違いや負けを素直に受け入れられません……。
 小2の息子は間違えることが大嫌いです。計算や漢字ドリルの答え合わせで、間違えるたびに、「ああ、間違えた!」と叫んで、ものすごく機嫌が悪くなります。友だちや家族とゲームをしていて負けた時も同様で、すぐに不機嫌になり、癇しゃくを起こします。息子に「間違えてもいい」「負けを素直に認める」ということを、上手に教える方法を教えてください。

先生の回答

親が“もっといいやり方”を探しながら頑張っている姿を見せていきましょう

大人になっても続くテーマ

 負けて不機嫌になったり、癇しゃくを起こしたりすると、一緒に過ごしている人も楽しくありません。子どもによっては、失敗したり負けたりしても落ち着いている子もいますから、親としては心配ですね。負けや失敗を受け入れて、気持ちを切り替えて取り組めるようになれば、もっと前向きに過ごせるようになります。ですが、小学2年生の子どもにとって、これは相当に複雑な課題です。
 難しい課題に直面した時、うまくできないのは自分の能力が足りていないからだという事実を認識し、イライラするという反応は、大人にもあるものですね。このイライラ感は、実はとても幼い時期、3歳頃までに獲得されるものです。一方で、「うまくいかなくても、それを受け入れて取り組む」という態度の完成には、もっとずっと長い時間を必要とします。衝動をこらえて、より適切な形で表現したり、自分で自分の気持ちを立て直したり、先の見通しをもって取り組んだりしながら、それらをより成熟した水準に引き上げる……という課題に繰り返し取り組んで、大人と同じ水準まで育つためには、思春期の終わる18歳頃まで待たなくてはなりません。さらに大人になってからも成長の続く、非常に取り組みがいのあるテーマです。

負けず嫌いはギフトでもある

 小学2年生というのはどのくらいの年齢でしょうか。小学生の時期に身につけられる心の能力として、「自分がどうなりたいかを理解し、そこに向かって努力できる」というものがあります。子どもは、小学校低学年の頃に自分と周りの違いに気づき、自分には得意なものも、苦手なものもあるということを理解します。その中で、たとえば、二重跳びができるようになりたいとか、もっと絵を上手に書きたいとか、友だちにやさしくできる人でありたいとか、その子なりの目標を持つようになります。高学年になると、これに向かって努力したり、自分の行動をコントロールしたりして、その結果報われたり、報われなかったりする経験を重ね、徐々に感情と行動のコントロールがうまくなっていきます。
 お子さんはおそらく負けず嫌いで、完璧主義なところがあるのでしょう。よいことです。お子さんがいずれ大きくなった時、自分の生まれ持った気質を理解し、自分らしい人生を歩むうえで鍵になる部分です。世の中にはあまり勝敗を気にせず、間違いに対しておおらかな人もいます。ですが、お子さんはそのようには生まれませんでした。これは生まれつきのギフトですから、大事に置いておきましょう。お子さんはこれから長い時間をかけて、どうすればもっと自分らしく、かつ、周囲と調和して暮らせるかを学んでいきます。

親にできることは?

 お子さんのように、負けず嫌いで完璧主義な子にとって、負けるかもしれない・完璧でないかもしれない自分と向き合うのは、簡単なことではありません。そんな現実に向き合うのは、人生で初めてのことです。心は傷つき、悔しく、悲しく、耐え難いものでしょう。これを何十年もやってきた人間のように、すんなり消化できるわけがありません。勝負にこだわりのない子がしているように、軽く流すこともできません。このように感情を爆発させるようになっていること自体は、順調な成長の表れです。彼は自分のまだ知らない側面に出会ったのです。その先に、一度の負けや失敗で深く傷ついてしまうのではなく、努力の余地を見い出し、あるいは、勝負は運次第でもあることを理解して受け入れるという段階がきます。
 そこに到達するには、まず目先の小さな勝ちや完璧にこだわり、うまくいかずに傷つき、怒り、不機嫌になり、その状況を苦しみながら、それでも恐る恐る世界を観察して、「この世には、もっといいやり方があるのだ」と気づく必要があります。親にできることは、その〝もっといいやり方〟のモデルになることだけです。
 10年後の彼にどうなっていてほしいでしょうか。おおらかに受け入れ、また頑張るよと言える子でいてほしいでしょうか。親がそれをして見せてください。子どもに物事の道理を言い聞かせるとか、理解を促すということは、気休めにしかなりません。なぜなら、子どもはまだその理屈を受け入れられる段階には来ておらず、大人は子どもの生々しい苦しみを理解できません。親にできるのは、親自身が失敗をおおらかに受け入れる姿を見せること。そして、親自身が様々な課題と向き合い、“もっといいやり方”があるのではないかと手探りで頑張っている姿を見せることです。取り組みが語れる内容であれば、家族で「どうすればもっとうまくできるか」ということを話し合います。父と母が話し合う姿や、話している内容から、子どもは多くの学びを得ます。子どもの近くで親自身の課題に取り組み、たくさん失敗して、どうそれを受け入れていくかを見せていくのが、最善のサポートになることでしょう。

Vol.102 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年7月号掲載

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