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子育て相談 Vol.107

“生活”
- 勉強を始めるまでに、とにかく時間がかかります……。
- 小5の次男は、やり始めさえしたら、それなりに集中して一人で勉強できるのですが、始めるまでにとにかく時間がかかります。
「ちょっとこれ読んでから」「ちょっとゲームしてから」……と、今にも始めそうな状況から、何時間も〝寄り道〞した後に着手するので、夜寝るのが遅くなって、朝なかなか起きられないという悪循環に陥っています。
私にも似たようなところがあるだけに、今のうちに〝すぐやる癖〞を身につけてやりたいのですが、良い方法があれば教えてください。
先生の回答
休息や気分転換のための時間も大切。
〝ダラダラ時間〟とうまく付き合うところから始めてみても
ダラダラ時間は重要なリラックスタイム
大人としては、さっさと課題に取り組んでほしいと思うものです。課題を終えれば、あとでゆっくりと好きなことができるので、やるべきことを先にやってしまったほうが良いと考えます。理屈としてはその通りですが、子どもの側には、なかなかそうはできない事情があります。それは「疲れ」です。
学校生活は子どもにとってかなりの緊張を強いるものです。指示に従って行動することも、他の子どもたちとの関係に気を遣うことも、時には退屈な授業をじっと聞くことも、課題と向き合って解答することも、かなりの緊張がともないます。学校から帰った子どもが次の頭脳労働に取り掛かるには、一日の学校生活での緊張を緩和し、リラックスする時間が必要です。
私たち大人も同じですね。職場で考えがまとまらなかったり、行き詰まったりすると、誰かと喋ったり、お茶を飲んだり、必ずしも行く必要のないトイレに行ったりすることがあります。そのようにして気分を変えることで、また仕事に集中することができるのです。
子どもが学校から帰ってきた後にダラダラしているのを見かけたら、まずは親のほうが、そのダラダラ時間が重要なリラックスタイムであることを理解しましょう。
子どもと〝現状の問題点〟を共有する
その後、話し合うことから始めましょう。親のほうも、本を読む時間やゲームをする時間が大切であると理解していることを伝えます。そして、そのような時間がのびて課題に手をつけるのが遅くなると、就寝時刻が遅くなり、睡眠不足や翌朝のバタバタにつながるので、何とか改善したいと思っていることなど、現状を伝え、子どもの意見を聞いてください。
この時、説教したり、無理やり親の意見を押しつけたりしないよう、気をつけましょう。下手をするとけんかで終わってしまいます。親が子どもの気持ちを尊重し、子どもの話をよく聞いたうえで冷静に話せば、子どもも親の話に耳を傾けやすくなります。
「ダラダラ時間を終わらせるにはどうしたらいいかな?」
子どもと、ダラダラ時間に区切りをつけたほうが良いという意識を共有できたら、「そのためにはどうしたらいいかな?」と一緒にいろいろな方法を考えていきましょう。その際、親からも提案できる方法をいくつか考えておくと良いでしょう。たとえば
・ダラダラ時間を一定に決める(何時まで/何分間 など)
・その時間の過ごし方は子どもに任せ、口出しをしない
・切り替える時刻を知らせる合図を決める(タイマーを活用する など)
学校の宿題などで、親による採点や確認が求められることもあります。その場合、親の帰宅時刻や家事、食事や入浴の段取りを踏まえて、時間を決める必要があるでしょう。子どもの習い事などで、そもそも時間がとりにくい日もあるかもしれません。場合によっては、すべて終えてから寝ようとするのではなく、翌朝少し早く起きてやるようにしたほうがうまくいくこともあります。いろいろな可能性を考えて、良い方法にたどり着くまで、いろいろ試してみるようなつもりでいると良いでしょう。
話し合い、いろいろと試していく中で、子どもからも面白いアイデアや、親へのお願いが出てくるかもしれません。いろいろな案が出たら、まずは子どもの選んだアイデアから試してみたら良いでしょう。自分で決めたことであれば、より主体的・積極的に挑戦することができます。何日か試してみて、うまくいったかどうか検討し、必要であればもっと良い案がないか探します。
ダラダラ時間の過ごし方を変えてみる
休む必要はあるけれど、そこでゲームなどを始めてしまうと、切り上げるのが難しいということはあるかもしれません。読書やマンガ、ゲームは、私たちの意識をほかの世界に連れて行ってくれるので、緊張で疲れた脳をほぐすには最適です。とはいえ、違う世界でリラックスすると、戻ってきて課題をやるのに腰が重くなってしまいがちです。
どうしても切り上げるのが難しいのであれば、「帰ってきたら、おやつを食べて、ソファで横になって静かに休む。ゲームをするのは課題が終わってから」というような休み方を試しても良いかもしれません。ワクワクするような楽しい休み方ではないので、遊びたい気持ちが強ければ、自分から切り上げるでしょう。
これを一週間ほど試してみて、休んだまま眠ってしまって起きられないとか、じっと休み続けて動かないというようなことが続くのであれば、やるべきことが多すぎるか、睡眠不足が深刻なのかもしれません。その場合は、一日の流れを見直すチャンスです。
ダラダラはただのムダではなく、休息や気分転換であったり、サインであったりします。すぐやる習慣づけの第一歩として、ダラダラ時間を充実させ、うまく付き合っていくところから始めてみてはいかがでしょうか。
Vol.107 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年12月号掲載