子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

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子育て相談 Vol.109

今月のお悩み

“読書”

本を読んでもらいたがります……。
 小学校1年生の娘は本が好きなのですが、読んでもらうことが好きで、自分で読むことは好きではありません。読めないわけではないのですが、面倒に感じているようです。
 そろそろ自分で読んでもらいたいのですが、どのように対応すればよいでしょうか。

先生の回答

自分で本を読み進めるようになるまで親子での読み聞かせを楽しみましょう

「聞く・話す」が、「読む・書く」の下地になる

 子どもが育っていく過程で、聞く・話す能力が身につきはじめるのは、かなり早い段階です。子どもたちは大変なスピードで新しい言葉を覚え、大人が驚くほどぴったりのタイミングで言葉を使います。
 聞く・話す能力を身につけるとき、子どもの先生になるのは、周りにいる大人や年長のきょうだいです。周囲のコミュニケーションが活発に行われる中で、幼い子どもの聞く能力は飛躍的に伸びていきます。そして間もなく、聞いて覚えた言葉を使うようになり、それで周囲の人たちとコミュニケーションが取れるようになることで、語彙を飛躍的に増やしていきます。
 それに比べ、読み書きに関する子どもの能力の育ちは、きわめてゆっくりです。大変個人差が大きいものですが、標準的には4歳ぐらいにひらがなの読みに興味を示すようになり、それを追いかけるように、書く能力がゆっくりと芽生えていきます。小学校入学前後にはひらがなを使いこなすようになり、中学3年生まで10年近くをかけて、漢字を含んだ2千数百の文字を覚えることになります。読み書きの能力は、大変長い時間をかけて養われるのです。この読み書きの力の下地になるのは、早い時期から獲得されている、聞く・話す能力です。

無理に自分で読ませようとするのは逆効果

 「本が好きなのですが、読んでもらうことが好きで、自分で読むことは好きではありません」ということです。本が好きなのは、素晴らしいことですね。本の読み聞かせにじっと耳を傾けているときには、様々な能力が育っています。集中力や想像力、共感力、また読解力も高められます。読んでもらった物語に耳を傾けながら、お嬢さんは心の中で物語を描いて、その世界を楽しんでいるのではないでしょうか。
 今はまだ、子どもの読む速度では、心が物語を描く速さに追いつかないのです。読む能力が育ち、また年齢が上がっていくと、お子さんの心もどんどん成長し、物語の世界でもより複雑なものを求めるようになります。そうすると、親が読んでくれる速度では物足りなくなっていくものです。そうなれば自然と、自分で本を読み進めるようになります。それまではぜひ親子での読み聞かせを楽しんでください。
 一年生の今、まだ自分で読むのが面倒だと思うような時期に、無理に自分で読ませようとするのは逆効果です。もう小学生なんだから自分で読みなさいと突き放して、読書が嫌いになっては元も子もありません。自分で読むこと自体、まだ最近練習しはじめたばかりの、新しくて不慣れな作業です。ここから伸びていくところです。これまでのように、難しいことを考えずに楽しくお話の世界に浸れるような時間が取れれば、子どもが読む力を育てる励みにもなるでしょう。

 同時に以下のこともぜひ試してみましょう。
 ① 親の読み聞かせの時間を決める(一日15分、など)
 本が好きで物語が好きなら、もっと読んでほしい、と求めます。その欲求不満が、自分で読みたいという思いにつながっていくでしょう。もっと読みたいと思えば、自分で読むようにもなります。
 ② 音読を楽しめる工夫を
 学校の宿題にも音読がありますね。ぜひ熱心に聴いて、良いところを見つけてください。
 声が大きい、滑舌が良い、情景描写ができている、感情が伝わってくる……など、具体的に良いところを伝えましょう。「滑舌って何?」「情景描写って何?」と聞かれたら、詳しく説明しましょう。
 子どもは音読しながら知らない言葉に触れることができます。子どもが音読している内容をどのくらい理解しているかを確認するために「何故、〇〇は~したの?」などと、内容に関して質問するのもいいでしょう。
 ③ 親が読書する姿を見せる
 お子さんが本を好きになるということは、ご両親も読書が好きなのではないでしょうか。家族のだんらんの一場面で、親が静かに本を読む姿は、子どもの興味を引き付け、「そんなに楽しいなら、やってみよう」という気持ちを呼び起こします。思春期前の子どもは、親が好むものを好み、生活の中で目にするものに親しみを持ちます。
 ④ 読むものに制限をくわえない
 子どもが読む本に対して、親がある種の制限をくわえていると、子どもは読書を楽しめません。マンガでも、図鑑でも、お子さんが興味を持つものなら何でも与えましょう。特にマンガは、絵が物語の理解を助けてくれます。低学年の子どもにとってまだまだハードルの高い、たくさんの登場人物たちのやりとりや、思惑の「ずれ」なども、絵の助けがあれば理解しやすくなります。文字で直接的には語られないものを推測したり、間や呼吸を取りながら読み進めたりする力が育てば、より複雑な物語を扱う力になります。
 ⑤ 図書館に本を探しに行く
 本が好きなら、図書館や、最近よくある本の読める本屋さんなど、ゆっくり本を探せる場所を訪ねるのも良いでしょう。あまり時間に制限を設けずに、親も一緒に本探しを楽しんではいかがでしょうか。
 他の様々な能力と同じように、読み書きの能力も、伸びる時期や伸び方には個性があるものです。学年によってここまではできるはずと一律に線を引いてしまわず、子どもの求めに応じてサポートしていきましょう。

Vol.109 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年2月号掲載

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