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子育て相談 Vol.112

今月のお悩み

“学習習慣”

学習を習慣化させるには……?
 この春、小学3年生と小学1年生になった長男と次男。長男の小学校入学時も、短くとも決まった時間に机に向かう習慣をつけようとしたのですが、無理でした……。
 次男の入学に伴い、改めて、学習の習慣化に取り組みたいと思っています。
 アドバイスいただけますでしょうか。

先生の回答

子どものやり方を尊重しつつ、懲りずに問いかけ続ければ……

 低学年の子どもにとって、自分で生活習慣を整えるというのは、相当に困難です。ほとんど不可能と言ってもいいでしょう。大人のように都度見通しを立てて動くようなことはできません。それでも、発達の進み具合や本人の性格と、環境、加えて親との関係によって、小学校1年生でも自分で宿題を管理できるという子もいますが、6年生になっても声をかけなければ忘れてしまうという子もいます。ある程度は本人に任せないと伸びませんが、大人が先導してパターンをつかませなければ、子どもとしてもやりようがない、という側面もあります。

なぜ、学習習慣をつけるのか?

 子どもに学習習慣をつけることの目的は、学習習慣のついた大人を育てることではありません。子どもが子ども自身を理解し、どうやったら自分を律することができるかを知ることです。自分の性格や行動パターンを理解し、どうすればやる気のない時でも課題に向き合えるか、どうすればタスクをしっかり管理できるか、自分なりの勝ちパターンを知ることです。それによって、未知の課題にぶつかったときや、困難な状況に置かれたときでも、「今はどうしたらいいかわからないけれど、どうにかする方法はあるはずだ」と信じられるようになります。机に向かって勉強する内容そのものより、その過程で起こる、できない、うまくいかない、やりたくないを乗り越えることのほうが重要なのです。

なぜ、習慣づかないのか?

 ご長男の小学校入学時は、決まった時間に机に向かう習慣をつけられなかったということですが、その時は何が起きたのでしょうか。集中力がもたない?気力体力の問題として飽きてしまうのか、環境に反応して注意を持っていかれてしまうのかで、取るべき対策は違います。そもそも忘れてしまう?それとも、ダラダラしてしまって始められないのでしょうか。親も一緒に忘れてしまうというケースも多いです。共働きで子どもの勉強を見ていられる人がいないなら、学童や塾の助けを借りる手もあります。
 どちらにしても、お子さんは3年前のお子さんとは違います。今挑戦すれば、3年前とは少し違うことが起こるでしょう。1回でいきなり習慣がつくということはなかなかありません。今回は何が起こるのか、どこまでうまくいって、どこでどのように失敗するのか、観察してみましょう。もちろん弟さんも、お兄さんとは違うつまずきかたをするはずです。弟さんには何が起こるか、起きたことにどう反応するのか、よく観察しましょう。

そもそも、可能なのか?

 最初の一歩は、親がはっきり宣言をすることです。「4月から、あなたたちに、短くとも決まった時間に机に向かう習慣をつけてもらいたいと思います。勉強とうまく付き合い、学びを深め、本当にやりたいことを見つけてもらうためには、まず習慣をつける必要があるからです」ということを、子どもたちに説明して、理解を求めましょう。
 次に、実際の取り組みについて計画を立てます。最初は「ちょっと工夫すれば、今と同じ労力でこなせるところ」を探しましょう。たとえば、現在でも、宿題は大体ちゃんとやっているけれど、一日二日遅れることがある……というのであれば、タスクは宿題のみとし、毎日こなすことを目標とします。
 そもそも、机に向かう時間帯を固定することは、システム的に可能でしょうか。一週間の予定を広げてみて、帰ってすぐ、夕飯の前、夕飯の後、寝る前、朝起きてから……など、いつならできそうかを、子どもと一緒に考えます。場合によっては、時間を固定することが現実的でないかもしれません。親子で一緒に落としどころを探ってください。

どうしたらうまくいくだろう?

 3年生のお兄ちゃんは、勉強の仕方について、自分なりの意見を持っているはずです。「寝る前に15分でできる」などと言われると、親としては「本当に?無理じゃない?」と思うところです。では、実際にやったら何が起こるか、確かめてみましょう。「まずそれで一週間やってみて、週末に振り返ってみましょう。よさそうならそれを続けて、難しければ違う方法を考えましょう」といって、まず一週間任せてみます。
 一週間を費やして、「寝る前は眠いから、ゲームなら集中できるけど、勉強は無理」ということを身をもって理解できるなら、それは大変豊かな学びです。もどかしいかもしれませんが、任せる価値があります。場合によっては、計画通りうまくいってしまうこともあります。それはそれでラッキーです。
 3年生になると、早い子では、そろそろ親の言うことを聞かなくなってきます。親に「勉強は?」と言われるのは嫌なものです。ありがたいことに、最近ではスマートフォンやスマートスピーカーに「5時です。勉強の時間です」などと言わせることができます。「親が言うから、やる」ではなく「そういうルールにしたから、やる」のほうが、子どもにとっても気が楽です。そのためにも、ルールはできる限り子どもに決めさせます。もちろん、計画の段階で「5時になったら声をかけようか?」と提案しても構いませんが、子どもに断られたら、次の振り返りのタイミングまでは黙っていましょう。
 そして、毎週末の振り返りが粘りどころです。親は自分のやり方を尊重して、とことん付き合ってくれる、でも絶対に勉強させることを諦めない。毎週、懲りずに「どうしたらうまくいくだろう。今週はどうする?」と問いかけてくる。その姿勢がはっきり伝われば、小学生ならば、親のその取り組みに付き合ってくれる可能性は高いでしょう。

Vol.112 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年5月号掲載

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