HOME > 菅原裕子先生 お悩みパパ&ママ子育て相談 >子育て相談 Vol.113
子育て相談 Vol.113

“性格”
- 引っ込み思案はなおらない?
- 幼い頃から引っ込み思案な小学6年・男子。 友だちがなかなかできなかったり、わかっているのに授業で手を挙げられなかったり、自分の思っていることを伝えられず誤解されたり……。
学年が上がると変わっていくものかと期待していましたが、「とてもおとなしい子」「自信のない子」のままです……。
ようやく授かった待望の孫ということで、幼い頃、祖父母2組にかわいがられすぎたからか……など、年々不安が増しています。アドバイスお願いします。
先生の回答
残念な側面でなく良い側面に焦点を当て、育てましょう
お子さんの性格を心配される親御さんからの相談はよくあります。乱暴な子、引っ込み思案な子、我が強い子、恥ずかしがりや。挙げたらきりがないほど、親の心配は多様です。確かに、友だちがなかなかできないとか、わかっているのに授業で手を挙げられないとか、自分の思っていることを伝えられず誤解されるということがあると親としては心配になるでしょう。
心配する親はとかく、友だちを作ろうとか、授業では手を挙げようと子どもを励ましたり、時にはそれをしない子どもを叱責したりしてしまいます。でもそれでは決して親が望むようにはならず、かえって子どもの欠点とも思える傾向を強めてしまいかねません。
お子さんの特性に対する観察力を高めましょう
人はそれぞれ生まれつきの気質があります。一般にいう性格というのは生まれつきのものです。同じ親から生まれて、同じ環境で育ってもそれぞれの性格が違うというのが普通です。そしてそれぞれの傾向には、裏と表があります。
例えば、〝自己主張の強いわがままな〟お子さんの場合、その特徴のもう一つの側面は〝意思がはっきりしている〟という誰もがうらやむような特性です。〝飽きっぽくて習い事が続かない〟というお子さんの場合、もう一つの側面は〝好奇心が旺盛である〟という美点です。
親の心配に耳を傾けていると、子どものある側面の、片方の面のみにフォーカスして心配している場合がほとんどです。つまり、〝自己主張が強くわがまま〟と〝意思がはっきりしている〟という裏表の〝わがまま〟のほうに焦点を当てて心配し、何とかなおせないものかと気をもんでいます。
残念ながらこのやり方ではかえってわがままを育ててしまいます。親がフォーカスしたほうが育つのです。ではどうすれば、もう一つの側面〝意思がはっきりしている〟ほうが育つのでしょうか。育ってほしいほうに焦点を当てればよいのです。
例えば、〝自己主張が強くわがまま〟で〝意思がはっきりしている〟という特性を持つ子どもは、日常的にその両方を発揮しています。まず親はその両方に気づくよう観察力を高めましょう。〝自己主張が強くわがまま〟で困っている親はそこしか見ていませんから、もう一つの〝意思がはっきりしている〟面にも気づく必要があります。そして、〝意思がはっきりしている〟面が現れたとき、それに注目し、時に応じて言葉にするといいでしょう。「そうやって自分の気持ちや考えをはっきり言えることはとてもいいことだよ」「はっきり言えてとてもうれしかった」などと、〝意思がはっきりしている〟という側面を認めるといいでしょう。
良いところは言葉にして伝えましょう
では、引っ込み思案なお子さんの良いところはどんなところですか?
まずよく観察してみましょう。おそらく「優しい」とか「人の気持ちを考えられる」、あるいは「観察力がある」とか「全体を俯瞰している」、もしくは「慎重」とか「熟慮」、場合によっては「丁寧」「コツコツと積み上げる」「ストイックで妥協しない」などの特性があると思われます。
お子さんが良い部分を発揮しているときに、それを言葉にして伝えるといいでしょう。「優しくしてくれてありがとう。すごくうれしかった」「あなたは本当によく観察しているね」「あなたは慎重にできるからけががなくて安心よ」と普段から、その側面に注目し、認めましょう。
そんなお子さんも小学6年ともなれば、自分に対する期待もはっきりしてくる年ごろです。自分の優しすぎるところや慎重さが情けないと思うようなことがあるかもしれません。そんな様子が見えたら、「そうだね、慎重すぎるのも残念な結果を生むかもしれないね」と受け止め、「あなたはどうなりたいの?」と彼の理想に耳を傾け、理想像に向けてできることを親子で話し合います。
人は皆、それぞれの傾向を持って生まれてきます。その傾向の良い面を育てるのか、それとも残念な面を育てるのかによって、その人の未来も大きく変わってきます。引っ込み思案な子」とある一面だけに焦点を当てず、もう一つのポジティブな側面を育てていきましょう。
Vol.113 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年6月号掲載