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子育て相談 Vol.114

“趣味と健康”
- 本が好きな娘。視力のこと、勉強や外遊びとの時間配分が心配です。
- 小1の娘は本好きで、興味があれば文字の小さいものも読みます。ただ、文字が小さければ小さいほど顔が本に寄っていってしまうので視力が心配です。
また、外遊び、習い事、宿題、その他のドリルなどやりたいこと・やらせたいことと、読書とのバランスの取り方が難しいです。アドバイスをお願いします。
先生の回答
“好きなことを楽しむ時間”を尊重しつつ目の健康を守るためのルール設定を
生まれつきの気質は、変わらないので……
小学校一年生で読書好きという傾向は、おそらく生まれつきの気質によるものではないでしょうか。興味を持ったことはそのままでは終えられず、もっともっとと情報を求めて、本に吸い寄せられるような様子ではありませんか。年齢の割には難しい内容も理解し、制限なくいろいろな本を読むのではないでしょうか。
もし気質からくるものであれば、この傾向はこれからも変わることはありません。ただ、年齢に応じて本がPCや携帯に代わるかもしれません。親として、我が子の目の健康を守りたい、読書以外の活動も楽しんでほしいと考えるのであれば、今のうちによく話し合うことをお勧めします。
わかりやすいルールを一緒に考え、やってみる
特に、目の健康を守ることについては、わかりやすいルールを設けると良いでしょう。ルールは、話し合いを通じて決められますが、このときに注意すべきポイントがあります。まず、お子さんの読書好きを、良いこととして認めましょう。お子さんが読書好きであることを歓迎して、これからもずっと好きな本が読めるように、目の健康を守りたいと思う、と話します。つい、目を使いすぎて視力が落ちると困るから、目の健康を害するのが嫌だから、というネガティブなアプローチをしてしまいますが、子どものやる気を育み、親への信頼を培おうと思うのであれば、ネガティブなアプローチはお勧めできません。子どもは、読書を否定されたと感じて、隠れて読むようになるかもしれません。ポジティブにアプローチしましょう。「世界にはまだ一生かけても読みきれないほど素敵な本がたくさんある。あなたが大人になってからもずっと本を楽しめるように、今から目を大切にしましょう」と。
そして、目を守るためどうしたらいいかを、できればお子さんと一緒に調べて、リストアップしていきましょう。いろいろな基準がありますが、たとえば、本と目の距離が近すぎると目に負担がかかるので、本は目から30センチ以上離すこと。普段本を読んでいるときの目と本の距離を確認して、どのような姿勢で読めばよいか、目安を確認しましょう。このとき、無理な姿勢が続かないよう、机や椅子の高さも、一緒に確かめる必要があるでしょう。本は充分に明るい所で読む必要があります。だからといって、本の白さに反射するほど眩しいと逆に負担になりますから、外や窓際はあまり読書に向いていないかもしれません。照明との位置関係で影にならないかを確かめ、必要であれば読書灯を用意する必要があるかもしれません。時間によっても変わりますから、しばらく観察が必要でしょう。目を疲れさせないため、たとえば20分読んだら休憩する。目の周りをリラックスさせるため、遠くの景色を1分間眺める、あるいは目をつぶって休むなど、いくつかの選択肢があります。
一方的に親の心配を押し付けて、こうしなさいと約束させるより、リスクやリターンを比べながら、一緒に考えることが大切です。そうすれば、子どももルールの意図を理解しやすくなり、守りやすくなります。
ルールを決めたら、実際にやってみましょう。たとえば、夢中になって本を読んでいると、時間を忘れてしまうものです。決まった時間で休憩しようと決めても、つい忘れてしまうかもしれません。何があれば忘れずにいられるか、あるいは、どうすれば忘れても大丈夫な仕組みを作ることができるか。ぜひ、引き続き親子で話し合ってください。
そして、うまくルールを守って読書している様子であれば、そこを「できているね」と言葉にして認めることが重要です。
余白の時間を読書タイムとする
また、読書の時間と、その他、学習や習い事、外遊びなどの時間のバランスについて考えるときは、どうしたら良いでしょうか。これはなかなか、ルールを決めるというわけにはいきません。
一週間の予定を書き出してみましょう。学校から帰って宿題するのはいつですか? 今やっている習い事はなんですか? 練習の時間が必要でしょうか。食事は? お風呂は? ベッドに入るのは何時でしょうか。
するべきことの間に空いた余白の時間が、お子さんの読書タイムになります。読書好きな子は、外遊びより読書を選ぶ可能性が高いものです。親としては、家の中でずっと本を読んでいないで、元気に外遊びしてほしいと思うかもしれませんが、そこは本人の選択に任せるしかないでしょう。ただし、読書をしているせいで、たとえば宿題が進まない、習い事の練習をしないということであれば、その点については話し合いが必要かもしれません。
お子さんが本を置いて外遊びをしたがるのは、一緒に遊ぶ友達ができたときか、お父さんやお母さんが一緒に外遊びしてくれるときです。まだ小学一年生です。親が外遊びに誘えば、乗り気になることも多いでしょう。親の誘いに乗らなくなる頃には、友だちとの遊びが盛んになっていきます。
どんな子どもにも、それぞれに好きなことがあります。自分が好きなことを楽しむ時間を、家族が喜び、尊重してくれることで、子どもは心からその時間を楽しめます。そうしてはじめて、他のことへの関心も育っていきます。好きなことを制限しても、やる気が他に向くわけではありません。大人も同じですね。お子さんが読書の時間を安全に満喫できるよう、しっかりサポートしていきましょう。
Vol.114 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年7月号掲載