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子育て相談 Vol.115

今月のお悩み

“性格”

友だちに注意して、怒らせては、悩んでいます。
 小3の娘はお友だちと遊ぶのが大好きです。ただ、親しくなり自分を出せるようになると、「廊下は走っちゃダメなんだよ」「それしたら危ないよ」とお友だちによく「注意」してはお友だちをむっとさせてしまい、よくケンカになるようです。すぐ仲直りできない時は、自分から謝らざるをえず、「私は悪くないのになんでいつも私から謝まらないといけないんだろう」とジレンマを抱えています。そうやって成長していくものなのかなとは思いつつ、本人がちょっとつらそうなので、どうしたものかと思っています。

先生の回答

「どういったら伝わるのかしらね」と一緒に考えてあげましょう

根元にある“善意”を大人は理解する必要がある

 お子さんには理想があるのですね。先生から言われているのだから、廊下は走ってはいけない。危ないことはしないほうがいい。
 お子さんは、そのような理想に忠実であろうとする傾向が強いのです。この傾向は、生まれもった気質によるものです。理想そのものは、非の打ちどころはなく、全くその通りです。廊下は走らないほうがいいし、危ないことはしないほうがいい。お子さんは、学校で友人たちが安全に過ごせるよう、自分自身がその一翼を担おうと、善意で行動しているのです。
 ところが注意されたほうは、注意されたこと自体が気に入らないものです。また、周囲の大人がそのような傾向を理解しなければ、子どもの傾向の根元にある善意は気づいてもらえないままに終わるものでしょう。

理想に忠実であるがゆえに叱られてしまう子どもたち

 私の友人に同じような気質の人がいます。彼女が幼いころのことを話してくれました。
 彼女は背が高く、小学生のころから並ぶと一番後ろ。一列に並ぶと、前に並んでいる子たちがきれいに一列になっていないことが気になり、後ろからヒョイと首を出して、前の子たちにきれいに並ぶよう注意していたそうです。
 ところが、列の前にいる先生から見えるのは、ひょいひょい首を出す彼女。いつも先生からは、落ち着きがないと注意されたそうです。子ども心に、なぜ自分が注意されなくてはならないのか。まっすぐに並んでいないのは他の子たちで、自分はその子たちをまっすぐに並ばせようとしているだけなのにと、腹を立てていたようです。
 学校で注意されたことは家にも報告され、家ではご両親からも叱られたようです。いま彼女は笑って話してくれますが、子ども心にはかなりつらかったのではないかと推察します。
 理想があって、その理想をみんなに伝えたいと思うのに、それが理解されない。それどころか、その行動が注意され、落ち着きのない子と言うレッテルが貼られ、おまけに両親に叱られる。理不尽ですね。
 
 私も同じような幼い少女にあったことがあります。
 孫が4歳だったころ、幼稚園の行事にミニ遠足がありました。近所の公園にお弁当を持って遠足です。親が同行するのですが、その日は両親ともに都合が悪く、おばあちゃんがついていきました。
 公園で子どもたちがクラスごとに並びます。孫はふらふらとしていて、なかなかまっすぐに並ぼうとしません。すると一人の女の子がやって来て、孫にちゃんと並ぶよう指示し始めました。私はそのような気質の子だとほほえましく見ていたのですが、そのお母さんらしき人が慌ててやってきて、その子を叱り、私と孫に「ごめんなさいね」と本当に申し訳なさそうに謝りました。その瞬間、きっと彼女は自分の母親に腹を立てていたと思います。彼女のほうが正しいのに、その彼女が叱られ、おまけに母が謝るのですから。理不尽です。

親が耳を傾けてくれれば子どもは頑張れる

 ですからせめて親だけは、子どもの理想に耳を傾け、「私は悪くないのになんでいつも私から謝まらないといけないんだろう」というお子さんのジレンマに耳を傾けていただきたいのです。「そうか」「それはいやだったね」「あなたは悪くないのにね」と相槌を打ちながら、話を聞いてください。そして、「あなたの言い方が悪いのよ」などと批判的な言い方ではなく、「どういったら伝わるのかしらね」とお子さんと一緒に考えましょう。
 
 お母さんが耳を傾けてくれる限り、お子さんはお母さんと一緒により良い方法を見つける努力ができるのです。大きくなるにつれて、自分の周りで起こっていることが理解できるようになると、腹を立てながらもお子さんは、より良い方法を自分で模索するようになります。お母さんが言ってくれた「どういったら伝わるのかしらね」を自分に言えるようになるのです。

Vol.115 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年8月号掲載

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