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子育て相談 Vol.116

“勉強”
- 子どもの勉強に、いつまでどれくらい関わればよいものでしょう?
- 息子がまだ小学3年生のため、現在は仕事をセーブしていますが、いずれはフルタイムで働きたいと考えています。これから中学、高校と、子どもの年齢が上がるにつれて、育児の時間は減っていくとは思いますが、子どもの勉強には、いつまで、どれくらい関わればよいものでしょうか。
先生の回答
勉強への関わり方次第では、困ったことに……。正しい関わり方を確認しましょう
「どれくらい」ではなく、「どのように」と考えましょう
子どもの勉強に、いつまで、どれくらい関わればよいものかというご質問ですが、ご質問にお答えするにあたっては、「どれくらい」ではなく「どのように」ということを中心に考えていきたいと思います。おっしゃる通り、子どもの年齢が上がるにつれて育児の時間は減っていきます。ですが、それと同時に親の悩みが減っていくとは限らないのです。
こんなケースがよくあります。子どもが小学生の間、親は勉強に熱心に付き合い、それなりの成績を維持してきました。中学受験も成功し、無事に第一希望の中学に入学します。親は安心して、あとは自分でやっていくだろうと考えました。ところが、子どもは学校の勉強についていけず、成績が落ち、生活習慣も乱れていきます。親は慌てて以前のように手出し口出しをしようとしますが、思春期に入った子どもは親の言うことは聞きません。とはいえ、子ども一人の力ではどうすることもできないまま、やがて遅刻が増え、登校まで渋るようになってしまう……。
このような問題の原因は、小学生の頃の親の、勉強への関わり方にあります。親が子どもにぴったりと付き添い、手取り足取り勉強させていると、つまり、親が子どもの勉強の主導権を握ってしまうと、子どもは自発的に考え、勉強と向き合うことを学びません。「一日に3ページずつ進めなさい」「とめ・はね・はらいをしっかり書きなさい」「単位を忘れないで」「しっかり消しゴムを使って」…… もちろん、どれも大切なことです。ただ、すべて指示されながら進めるうちに、子どもは「それが勉強だ」と考えるようになります。
小学校高学年になれば、思春期の入り口です。すでに子どもは親と距離を取り始めています。言われたとおりに頑張って無事に中学に入学すれば、晴れて親の手出し口出しもおしまいだと、親も子も思っています。ですが、親主導で進めてきた勉強や、場合によっては生活習慣に関わる一つひとつを、突然自分主導に切り替えられるわけではありません。それなのに、このタイミングで親が当然のように手を離し、目まで離してしまうわけですから、困ったことになってしまいます。
「勉強をすること」よりも、「自発的であること」が大切
私たち親が子どもの学習に関わるときには、勉強させて成績を向上させることより、子どもが自発的に勉強に取り組む姿勢を育てることが大切です。幸いなことに高校までは、学校が一つひとつの課題を示してくれます。その課題の中の何を目標とし、どう進めるか、自分で考える力を育てましょう。このような自発性が育っていれば、子どもは目標を持ったとき、いつでも自発的に勉強に向かうことができます。
では、どのように自発性を育てたらよいのでしょうか。焦点を当てるべきは「勉強をすること」ではなく、「自発的であること」です。例えば、小学1年で初めて宿題が出たときに、親が「宿題をやりましょう」と声掛けしてしまっては、宿題が親主導になってしまいます。子どもが自発的に動けるよう、子どもがランドセルから筆箱やノートを出すのを見守り、鉛筆を持つのを見守ります。その間、親は「今日は何を習ったの?」「宿題は出たの?」などと声をかけて促すでしょう。親の最初の仕事は、子どもがほんの15分間、自分で宿題に向かう環境を整えること、“まるつけ”をして、一緒に完了を喜ぶことです。
自発的に自分のやるべきことに取り組む姿勢は、学習にのみ発揮されるものではありません。食事の後に使った食器をシンクまで下げるとか、歯磨きや入浴をこなすとかいうことが、いちいち親に言われなくてもできるようになっていきます。子どもができるようになるのを見守り、できたらそっと手を離し、そして次の新しい仕事を任せていく。このくり返しです。
ですので、「どれくらい関わればよいか」というご質問に、「3年生ならこのくらいです」というようにお答えすることはできません。いつまでか、どのぐらいかは、その子ども次第です。小さいうちから一人でやりたがり、親の手出しを嫌う子もいます。大きくなっても甘えん坊で、一人で取り組むのを嫌がる子もいます。兄弟でも違いがあるでしょう。思春期の様子も、子どもによって異なります。それまでとあまり変わらない子もいれば、大きく変わる子もいます。その様子をしっかりと観察しましょう。子どもがどのようなタイプであっても、そのあり方を受け入れ、その子の自発性を尊重したやり方を心がけて関わっていけば、親も「今はこのぐらいで大丈夫だな」という手ごたえを感じ、安心して仕事に出ることができるでしょう。
Vol.116 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年9月号掲載
