子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

HOME > 菅原裕子先生 お悩みパパ&ママ子育て相談 >子育て相談 Vol.23

子育て相談 Vol.23

今月のお悩み

祖母の見舞い

特養施設に幼い子を連れて行っていいものか……。
私の母は、息子(現在1年生)が生まれたときにはすでに若年性認知症を発症しており、現在は特養に入所しています。子ども好きだった母は、ほとんど寝たきりになってしまった今も息子を見るとうれしそうな表情を見せてくれます。母の反応がうれしく、父はたびたび私に息子を連れて来るように言います。私も母の喜ぶ顔は見たいのですが、特養にはいろいろな症状の方が入所されており、まだ小さな息子には少し刺激が強いのではないかと内心気になっています。

先生の回答

お子さんと、ご自身と、ご家族の気持ちに添って、少しずつ調整していきましょう

 お母さまには孫の顔を見せたいと思う反面、その環境がお子さんにとっては刺激の強いものではないかということを心配しておられるのですね。確かに認知症が進むと、子どもでなくてもびっくりしてしまうような行動に出る人もいるでしょう。
 大人であれば、ある程度の知識や経験があるので、「そんなもんだ」と捉えることもできます。しかし、まだ充分な経験のない子どもにはそれではすまないような、刺激的な場面に出会うかもしれません。それが、映像や音の記憶となって、心に残ってしまう可能性がないとは言えません。難しい決断ですね。どのような視点から考えればいいかを検討してみましょう。

ご家族の視点から

 連れて行かないという選択をすることもできます。その場合、後々、ご自身のためにも、もっと会わせてあげればよかったと後悔することのない、はっきりとした決断をしたほうがいいでしょう。そして、連れてきてほしいとおっしゃるお父さまにどう納得していただくかも課題です。考え方が違えば、お父さまをがっかりさせる可能性もあります。表面的でごまかすような理由を言うことで、最終的にご家族を傷つけてしまう結果になりかねません。それらのこともしっかり考えて、決断することが大切でしょう。

お子さんの反応から

 お子さんがどう思っているかも判断の材料になります。一度でも面会に行ったことがあるなら、お子さん自身がその体験をどう捉えているかが、判断材料の一つになります。
 子どもの気質によって、体験に対するさまざまな傾向があります。繊細で、強い刺激に敏感に反応して、未知のものを怖がる傾向の強い子どもがいます。反対に、比較的どっしり構えていて、多少のことでは動じない子どももいます。
 お子さんが前者であれば、そして、行きたくないと言えばそれを受け入れるのが一番です。お父さまへの説得もしやすいでしょう。後者の傾向が強く、行きたいと言えばどうでしょうか。連れていくことにそれほど心配する必要はないと言えますが、ご自身はどうお考えになるでしょうか。
 また、繊細で恐がりなのに、おじいちゃんおばあちゃんを喜ばせたいと、少し無理をして「行きたい」と言うこともあります。この場合はよく話をして、親の心配についても伝えた上で、最終的にはやはり本人の意見を尊重することが望ましいでしょう。

ご自身のことについて

 戸惑いの中に、お子さんのことではなく、ご自身の反応はありませんか? ご自身の、痴呆の方々の振る舞いに対する恐れはないでしょうか。ご自身が繊細に反応するタイプの方であれば、その反応をお子さんに投影して、「自分が怖い」と思う代わりに「子どもを怖がらせたくない」と思ってしまうかもしれません。しかし、その恐れはご自身のものであって、お子さんが怖がっているわけではありません。お子さん自身がどう思っているかということを、もう一度よく観察してみてください。

決断に向けての考え方

 決断をするときには、訪問のしかたを変えることも視野に入れて検討します。お子さんが嫌がらないのであれば、最大限の努力をして、短い時間でも定期的に訪問するやり方を考えてみてはどうでしょうか。たとえば比較的入居者が落ち着いている時間帯があるならば、その時間帯に訪問するということが考えられます。
 現実的にお母さまがどのような環境の中で生活をしているかにもよると思います。これまでも訪問した時に、お母さまのすぐそばに重篤な症状の方がいたことがあったでしょうか。また、大きな音などで、お子さんが怯えるようなことはあったでしょうか。
 子どもへの刺激に対して、あまり過敏に反応する必要はありません。子どもの世界には、たとえば幼稚園や学校にも、家にはないような刺激があります。刺激の中でさまざまなことを感じ、自分の反応を調節しながら、子どもは心を育てていきます。心配のあまり、先回りして刺激を取り除くと、結果的に子どもの成長を妨げる結果になりかねません。そういった意味で、「きっといい経験になる、優しい子になりますよ」というのは、その通りでしょう。とはいえ、繰り返し脅かされて精神状態が不安定になるような状況からは、親が責任を持って遠ざけなくてはいけません。
 だからといって、今すぐに白か黒かの決断をして、この先ずっとそうしなければならないというわけではありません。慎重に様子を観察し、お子さんの考えを聞きながら、お子さんと、ご自身と、ご家族全体の気持ちに可能な限り添えるよう、少しずつ調整していけばよいのではないでしょうか。

Vol.23 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年12月号掲載

一覧へ戻る
春の入会キャンペーン
無料体験キット