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子育て相談 Vol.32
授業の進み方
- 勉強は学校で教えてもらえるものと思っていたのですが……。
- 授業参観や、長男(3年)の話から、長男の通う小学校では、塾などで予習していることを前提に学習が進められているように感じています。夫婦ともに働いており、勉強を見る時間はとりにくく、また、小学生の間は塾に通わせるつもりはなかったのですが……。勉強は学校で教えてもらうという考え方ではいけないのでしょうか。
先生の回答
“どう学ぶか”について考えるプロセスもまた子どもの成長につながります
原則として、勉強は学校で教えてもらうものです。ですが現実には、学習塾での予習を前提として授業が進んでいると感じているご家庭は少なくありません。背後には親の、進学・教育への不安があるようです。「学校の勉強だけでは足りないのでは」という親の不安に、学習塾は「学校で教える以上のことを教えます」と応えました。そうして学習塾でプラスアルファを先取りした子にとっては、学校の基礎的な授業は退屈です。学校の先生は彼らの関心をひきつけるため、学習塾以上に応用的な内容を取り上げるようになります。このサイクルの結果、学習塾に通っていることを前提としたかのような授業が行われるようになってしまったのだといいます。
「親の教育方針」を明確にする
では、これに対して親は、どのような考え方でのぞめばいいのでしょうか。まず必要なのは、親の教育方針がどのようなものであるかを、親自身がはっきりと知るということです。なぜ、『小学生の間は塾に通わせるつもりがなかった』のでしょうか。机に向かって学習することより、遊んだり、体験したりすることのほうが大切だと考えたのでしょうか。それとも、長い間、なんとなく塾通いをするより、ここぞという時に集中して学習したほうが良いと考えたのでしょうか。それ以外の理由はありますか。また、そう考えたのは何故ですか。親自身の経験からですか、子どもの性格からですか、誰かのアドバイスですか。塾に行く行かないはいったん脇に置いて、親の教育方針を明確にしましょう。
たとえば、このまま公立中学校に進み、高校で受験をすると決めているならば、焦る必要はないかもしれません。中学受験をするにしても、切り替えが早く、物事の変化を楽しむタイプの子であれば、必ずしも今の段階で塾に通い始める必要はないかもしれません。ですが、新しい環境になじむのに時間のかかるタイプの子が、中学受験のために進学塾を検討しているということであれば、むしろ塾通いのある生活に慣れていくために、今から始めたほうがいいという考え方もあります。子どもが、一人では学習を進めるのが難しいタイプの子で、みんなと一緒のほうがいいかもしれないと考えるならば、塾を試してみる価値はあるでしょう。
単純に「行くべきかどうか」ではなく、いろいろな角度から考えてみましょう。
「子どもがどう感じているか?」を確認する
子どもが学校の授業をどう感じているかは、最大の判断材料です。もしお子さんが、授業の進み方に違和感を持っておらず、それなりに楽しんでいるのであれば、そこには大きな問題はありません。ですがもしお子さんが、授業の進み方が早いことに苦痛を感じていて、そのせいで劣等感や自己否定の気持ちを持ってしまっているなら、すぐに行動を起こしたほうがいいでしょう。理解できない授業に参加するということは、大変な苦痛を伴います。それを続けていれば、勉強嫌いになることも考えられます。子どもを勉強嫌いにしてはいけません。学ぶことが好きな子どもを育てることは、テストで良い成績をとれる子どもを育てることよりも、ずっと大切です。
子どもと一緒に考える
さて、ここで親が起こすべき行動とはなんでしょうか。子どもを塾に行かせることではありません。まず、子どもと一緒に考えましょう。「授業についていけなくて、困ってるんだよね。教えてあげられたらいいんだけど、お父さんもお母さんも仕事があるから、土日しか時間がとれないの。でも土日は一緒に遊びたいって思ってるの。どうしたらいいと思う?」と、親がここまでにたどってきたプロセスを、子どもにわかる言葉を使いながら、もう一度一緒に考えてみましょう。もし塾に行くという結論が出たとしてもそこで終わらずに、塾で何をしたいのか(予習か、復習か)、どう学びたいか(個別か、集団か)、いつ通えるか、ということまで掘り下げてみましょう。最初に目的を明確にしておくことで、望んだ結果が出なかった時には、やり方を変えてみよう、と考えることができます。
学校の勉強をどうするか考える、というプロセス自体を、子どもと一緒に学び楽しんでください。親の楽しむ姿勢と、親と一緒に考える経験が、学ぶことが好きな子どもを育みます。
Vol.32 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年9月号掲載