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子育て相談 Vol.36
引っ込み思案
- 引っ込み思案をなおすには?
- 小学4年生の息子の引っ込み思案を、歴代の担任の先生方すべてに指摘されてきました。具体的には、手を挙げて発表しない、自分からは友だちの輪に入れないなどです。本人としてはそれなりに楽しく学校には通っているので、そう深刻には受け止めてこなかったのですが、いつも「もっと積極的に!」と言われ続けていますと、やはり気になります。引っ込み思案をなおすために、何かしてやれることを教えてください。
先生の回答
「引っ込み思案」もひとつのスタイル。
でも、「積極性」というスキルは大切です。
世の中には、何事にも積極的で、自分をはっきりと出していく人たちがいます。一方、どちらかといえば引っ込み思案で、控えめにしている人たちもいます。それは一人ひとりの性格によるものであって、どちらかがより優れているというものではありません。ただし、時と場合によって、より積極的であることを期待されたり、より控えめであることを期待されたりすることがあります。
引っ込み思案の理由を確認しましょう
もし引っ込み思案である理由が、何かに萎縮していて自分を出せないとか、本当は自分から声を上げたいのに怖くてできない、というのであれば、引っ込み思案を「なおす」というアプローチも考えられます。萎縮する気持ちや怖さを抱え続けることは、かなりのストレスになるからです。ですが、もしその引っ込み思案が本人の生まれもった人付き合いのスタイルであり、本人がその過ごし方に満足しているなら、そもそもその引っ込み思案は問題の表れということではありません。ですから、「なおす」必要はないのです。
その意味で、「それなりに楽しく学校に通えている」というところから、事態を深刻に受け止めてこなかったお母さんの対応は、正しかったと言えるでしょう。最大の理解者であるはずの親に、もっと積極的になりなさいと迫られるほど、子どもは、積極的になれない自分のことを嫌いになってしまうかもしれません。親は「あなたはそれでいいのよ」という態度でいていいのです。
積極性という〝スキル〟を身につけるには?
ですが、「もっと積極的に!」と迫る学校の対応も一理あります。もともとの性格はそれでいいとしても、積極性を発揮「できる」というスキルは大切です。「積極的に手を挙げることがよい」と求められたとき、手を挙げられないよりは、挙げられたほうがいいのです。「手を挙げて発表しない」ということについては、まさにスキルの問題です。ではどうやってそのスキルを身につけるか、考えてみましょう。
そもそも息子さんは、自分が手を挙げて発表することを求められている、ということを本当に理解できているでしょうか。集団の中で自分の考えを話すことは、同じ考えの人を励まし、違う考えの人のヒントとなります。「私もそうだと思う。なぜならば~」「私は違うと思う。なぜならば~」「ここについてはそうだと思う。なぜならば~」とくり返すことで、一人で考えているだけでは得られない豊かな発想を得ることができます。学校に行ってみんなで学ぶ理由は、そこにあります。みんなには、息子さんの考えを知ることが必要なのです。
もしかすると息子さんは、考えがまとまってから言おうとして、タイミングを見てしまうタイプかもしれません。そのうえ共感する力が強いと、人の発言を聞いたときに「なるほど、その通りだ。言いたいことを全部言われてしまった」と思って、発言できなくなってしまいます。ですから、まずは練習として、とにかく何でもいいから話すというところから始めてみましょう。家で家族といるときの息子さんはどうですか? まず、家族の中で練習をしてみてはどうでしょう。家族の誰かの意見がそうだと思ったら「僕も賛成、なぜかと言うと」と話し始めます。言葉にせずに漠然と考えているだけでは、考えはまとまりません。「なぜならば」という言葉を声に出し、誰かに向かって話すことで、脳は必死で理由を探し、まとめようとします。その中で初めて、誰とも違う自分の考えというものが表れてくるのです。言葉にする前に考えがまとまるということは、そもそもないのです。
学校では、まずは手を挙げて言ってみる、ということだけを目標にします。最初から満点を求めないことです。先生にも協力をお願いして、手を挙げるようになったら、そのことを認めてもらうようにするといいですね。今よりも少しだけよくするためには何ができるかを考え、それをもとに少しだけやり方を変えてみます。それで前より、どこがどのようによくなったかを評価する。この繰り返しで、少しずつ洗練させていけばよいのです。
なお、「自分からは友だちの輪に入れない」というのは、人付き合いのスタイルの問題です。本人やお友だちがそのことで困っていないなら、変える必要はありません。これから思春期に入り、子ども同士の付き合い方も変化していきます。その中で、自分がどんな関わりを望んでおり、他人とどう折り合いをつけていくべきであるか、彼自身が経験を通じて学んでいきます。親にできることは、本人がそれでよいと感じているかどうか、よく観察することです。もし先生がお友だち付き合いについてくり返し言及するようであれば、先生の目から見て何か問題があるのかもしれませんから、詳しく聞いてみてもいいでしょう。
Vol.36 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年1月号掲載