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子育て相談 Vol.41

今月のお悩み

担任への不安・不満

担任の指導力に不安を覚えたとき、親にできることは?
「学校公開」(授業参観)で、長女(3年生)のクラスのざわつきが、とても気になりました。担任は若い男の先生で、教科指導はもちろん、クラスを静かにさせるのも覚束ない……といった状態でした。親の印象は娘には言わないようにしていますが、子どもたちとしても、頼りなく思っていることは娘の日々の話から伝わってきます。他の保護者の方々も不安を覚えつつも、「一年間の辛抱」と諦めておられる様子でした。このような場合、親にできることは何かないものでしょうか?

先生の回答

子どもの印象、気持ちを尊重しつつ、難しいと思う相手への、大人としての対処・親の価値観を示しましょう。

様々な大人と接することで子どもの価値観は育まれる

 子どもが小さいうちは「大人の言うことをよく聞きましょう」が鉄則でした。しかし思春期を迎えるころには、子どもはただ大人の言うことを聞くだけではなく、自分なりの意見を持つようになります。自分の意見と大人の意見と照らし合わせて、いろいろな角度から考えてみたり、反抗してみたり、意見のやり取りを求めたりもするでしょう。小学3年生であれば、まもなく思春期に差し掛かる時期です。大人も自分と同じ一人の人間だということを、娘さんは理解しつつあります。
 そのような時期の子どもにとって、様々なタイプの大人と接することはとても大切なことです。学校という枠の中で、深刻な問題を抱えることなく毎日が進んでいるのなら、親は子どもを支えながら見守っていけば良いのではないでしょうか。その点で、親のネガティブな印象を言わないというのは良い選択です。子どもが、親の否定的な印象を鵜呑みにしてしまうと、子ども自身の「物事を多角的に捉え、理解し、自分の価値観と照らし合わせる」という力が育ちません。「お父さん・お母さんがそう言っていたから、あの先生は〇〇だ」ではなく、「こういうエピソードのこういうところから、私はあの先生を〇〇だと感じている」と捉えることが、自立の第一歩です。そうして子どもは自分の価値観を確認し、一人の自立した人間として社会に参加できるようになっていきます。

子どもに期待することをまず親が実行して見せる

 担任の先生が頼りなかったとき、子どもたちはどう対応するでしょうか。あなたは親として、我が子にどんな対応を期待していますか。選択肢はいろいろあります。一年間の辛抱と諦めるのも一つの方法ですし、先生を支えながら良いクラスづくりに協力することもできます。少し高度なことですが、わかりにくい授業に対して、何がわからなかったか、わからない部分をどうすればいいか自分で考えられる、という可能性もあります。先生の良いところを探して関わっていく、軽んじるような言動をしないなど、様々な期待があることと思います。
 まずは、子どもに期待することを、親が実行して見せましょう。これは、大人になりつつある子どもに対して、一人の大人としての親の価値観を示すということでもあります。もし親が諦めれば、それを見た子どもは諦めるという方法があることを学び、親がそのような価値観を持っていることを学びます。もし親が「じゃあ、どうしたらもっと良くなるだろう」「そのために私は何ができるだろう」という視点を持っていれば、子どもはそのような視点があることを学び、親の生き方を学んでいきます。

基本、子どもの後ろで、気持ちの整理を手伝う

 このときに大切なのが、子どもが先生に対して感じているネガティブな気持ちを否定しないことです。もっとも、もし子どもの口ぶりが悪意のある悪口だと感じられたら、「人に対してそういう言い方は失礼だと思う」ということは伝えるべきかもしれません。ですが、「なんとなく頼りない」「心配だ」というような子どもの気持ちを、親が「そんなことないよ」「そんなふうに言わないで」と押し込めてしまうと、子どもは親に不安や不満を受け止めてもらえない、という体験をします。大人も、口に出さないとしても、様々な不満や不安を抱えています。子どもがそういった気持ちを整理する相手として親を選び、子どもなりの一定の配慮をしながらネガティブな気持ちを語っているなら、「それで心配だったんだね」「もうちょっと〇〇してくれたらいいなって思ってるんだね」と、子どもの気持ちや価値観、どうしたいかという意思に焦点を当てながら、子どもの言うとおりに受け取って聞いていきます。そうするとやがて子どもは気持ちに整理をつけ、「だから、どうしたいか」「次に何をしようか」というところに向かっていきます。
 役割のイメージは、先生と子どもの間に入って防波堤になろうとするのではなく、先生に向かっていく子どもの後ろに控えて、子どもの気持ちの整理を手伝ったり、時に少し離れたところで手本を見せて、こんなやり方もあるよと示したりする感じです。この機会を、難しいと思う相手への、大人としての対処を示すチャンス、親の価値観を示すチャンスとして活かせたらいいですね。

Vol.41 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年6月号掲載

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