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子育て相談 Vol.44

今月のお悩み

思わずついた嘘

子どもの嘘に付き合ってしまい、悩んでいます。
6年生の次男が、修学旅行の朝、持参禁止の携帯電話を持ち出そうとするので止めたところ、「仲間との約束だから」と懇願され、許してしまいました。その日の夜、旅先から5年生の担任だった先生から問い合わせの電話が。「○○君(次男)が持ってきている、と言う者がいるが、本人は、家に置いてきたと言っている。お母さん、本当におうちにありますか?」とのこと。次男は6年生の担任との相性が悪く、日々叱られてばかりで、旅先でまで怒られてはかわいそうだと思わず「あります」と嘘をついてしまいました。5年生の担任教諭は、日頃から、次男をかばってくださっており、そんな方に嘘をついてしまったこと、また、帰宅後、ピンチを乗り越えられた経緯をうれしそうに話す次男を見て、親としてどう対応するのが正解だったのかと悶々としています。アドバイスお願いします。

先生の回答

「責任」を学ばせることで、「現実に向き合う能力」を育みましょう。

「許した」から、共同責任者となってしまった

 子どもは大人になる前に責任を学ぶ必要があります。責任とは、自分の意志で行動し、自分の行動の結果を引き受け、望む結果が得られるように次の行動を変えていくという、いわば現実に向き合う能力のことです。お子さんは今回、「持参禁止のルール」と「仲間との約束」を比べて、「仲間との約束」のほうを取りました。もしその結果先生に怒られるとしても、それを自分で引き受けて、次の行動を考える能力こそが責任です。次は携帯電話を持っていかないかもしれませんし、仲間と違う約束をするかもしれません。ばれないように携帯電話の扱いを変えるというのも、ひとつの方法です。
 ですが今回、お子さんは、自分の行動の結果を引き受けませんでした。お母さんが嘘をついて自分をかばってくれたからです。子どもが体験したのは、叱られないで済むというラッキーな出来事でした。そして、それをうれしそうに話すお子さんを見て、お母さんは「自分のしたことは、間違っていたかもしれない」という罪悪感を持っておられるのですね。
 だとしたら、嘘をつかず、「うちの子は携帯を持っていきました」と先生に言えばよかったのでしょうか。恐らくそれはできなかったと思います。なぜならば、お母さんはお子さんが携帯を持っていくのを「許して」いるからです。お子さんの選択に同意したとき、子どもの選択について、一緒に責任を負うことになりました。正直に答えればきっとお子さんは、帰ってきてからお母さんを責めたでしょう。お母さんはお子さんを裏切ることになるのです。

責任の所在を親子で共有しておきましょう

 では、親としてどう対応するのが正解だったのでしょうか。「責任を学ぶ」ということを軸に考えるなら、子どもが携帯電話を持っていきたいと言ったとき、それがだれの責任かをもう一度子どもと共有し、親の立場を明らかにしたうえで、子どもに任せるという方法が考えられます。
 まずその携帯電話は誰のものだったのでしょうか。子どもの携帯電話であっても、使う時間や場所、使い道を親が管理している状態であったなら、携帯電話をどうするかの責任は親にあります。このとき親は「禁止されているなら、持っていってはいけません」と言うことができます。もし子どもが親の言うことを聞かず、勝手に持っていったとしたら、電話口で嘘をつく必要はありません。子どもも、なんでかばってくれないのと怒ることはないでしょう。親は一貫してダメと言うだけです。もし子どもがそれに背くのであれば、親の指示と学校の決まりの両方を破るという行動を選択し、その結果を引き受けなくてはなりません。子どもは責任を学ぶことができます。
 もし子どもに携帯電話の管理を任せているなら、すべて子どもの責任となります。「持っていっていい?」と聞かれても、親はいい悪いを決める立場にありません。ただ「持っていっていいの?」と聞き返せば良いでしょう。「だめだけど、約束だから」などと許可を求められたら、親の立場を丁寧に説明しましょう。「お母さんは、あなたの携帯の扱いを決める立場にありません。でも学校はダメだと言っています。旅行に持っていってなくしたり、こわしたり、先生に見つかったりしても、お母さんには責任をとることができません。あなたの責任で決めることです」。この場合、それでも携帯電話を持っていけば、子どもは学校の決まりを破るという選択をし、責任を取ることになります。

今からでも大丈夫!

 今回は過ぎてしまったことですが、もしこの「責任」の考え方がお母さんにとって納得できるものであるなら、今からでもお子さんと話す時間を取ってはいかがですか。お母さんが許可を出したこと、先生に嘘をついたこと、なのにお子さんがピンチを切り抜けたとうれしそうだったこと。お母さんが悶々としていることを話してみてはいかがでしょうか。そしてお母さんが今後どうしようと決めているのかを伝えるチャンスにするのです。
 今後できることとして、携帯電話について必要なルールを決め、子どもにどこまで任せられるかを考えてみてはいかがでしょう。壊してもお小遣いで買い替えると言うなら、すべて子どもに任せるべきです。ですが、一部でも親がお金を負担するのであれば、利用料金の制限や、使っていい時間の決まり、学校でのルールに従うことなど、どこまでなら子どもの自由にしていいかという範囲を、話し合って決めておくとよいでしょう。
 今回のこと、親子にとって良い学びの時となるといいですね。

Vol.44 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年9月号掲載

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