子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

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子育て相談 Vol.53

今月のお悩み

叩いてしまう

言葉で言い返せず、手が出るようです。
2年生の女の子です。内気な性格を心配していましたが、先日クラスの男の子に「〇〇ちゃん(娘)に叩かれた」と言われ、びっくりしてしまいました。本人に聞くと、先に嫌なことを言ってくるなど、悪いのは明らかに相手の男の子のようではありました。友だちにからかわれたときや、自分の意見をうまく説明できないときなどに、手を出してしまわないようにするにはどうしたらいいでしょうか。

先生の回答

まずは、“叩いた理由”を聞いてあげて。
そうすれば、考え、気付きます。

「知っている」と、「できる」の隔たり

 小学校の低学年は、自分の気持ちを言葉にして表現する力はまだ充分ではありません。特に内気な子の場合、言葉を持っていてもなかなか言えないことがあります。小学2年生にもなれば多くの場合、「人を叩いてはいけない」と知っています。ですが、いざその場面で「やめて」と言うのは簡単なことではありません。知っていてもできないというのは、大人にもありますよね。「人を叩いてはいけないと知っている」という状態と、「ムカッ! ときた瞬間に、相手を叩かずにうまく自分の気持ちをおさめ、適切な方法で対応できる」という状態の間には、いくらかの隔たりがあるのです。

叩いた理由を言葉にする

 では、「知っている」と「できる」の間で頑張っている子をサポートするには、どうすればよいのでしょうか。まずは、そのときの気持ちを受け止めましょう。なぜお子さんは叩いたのでしょうか。きっと訳があります。その訳を言葉にする練習をお母さんとするのです。子どもを責めるような口調にならないよう、できるだけ穏やかなトーンで、「○○君から、あなたが○○君のこと叩いたって言われて、びっくりしちゃった。何があったのか教えてくれる?」と聞いてみましょう。
 話を聞く目的は、そのときの子どもの気持ちを理解することです。状況を聞き出すためではありません。優しいトーンで、どんな気持ちだったのかを聞いてください。大人が自分の味方をしてくれるとわかれば、「だってね、○○君がね……」と、なぜ自分が彼を叩いたかを説明してくれるでしょう。それによく耳を傾けてください。子どもが語る気持ちの中に、悔しさ、悲しさ、恥ずかしさなど、どんな感情があるのかをよく聞いてください。そして気持ちを受け止めます。「イヤ」と言えないとき、子どもは自分を守るためにとっさに手を出しています。叩いた理由を受け止めずにただ『叩いちゃダメ』と言われると、子どもは理解されないと感じます。また、叩かない代わりにどうしたらいいかも学べません。

〝嫌な気持ち〟を受け止めどうするか考える

 子どもがひとしきり話してくれたら、「それはイヤだったよね。だから叩いちゃったんだ」と、子どもの嫌な気持ちを受け取ります。親が決して怒ってはいないことが伝わったら、「それでもやっぱり、叩いちゃダメなんだよね」というところに話を進めます。嫌な気持ちをいったん受け止めて、どうするかを考える、という体験です。親子の間でこのやり取りをすることで、やがて子ども自身が、自分の気持ちを受け止め、おさめられるようになります。
 そして、子どもに聞いてみましょう。「じゃあ、もしまた同じことが起こったら、○○ちゃんはどうする?」すると恐らく、「イヤって言う」などの方法が出てくるでしょう。親子で、いろいろな方法を考えてみましょう。強めに「やめて!」と言う方法、「そういうふうに言われると悲しいからやめて」と気持ちを言葉にする方法、「なんで人が嫌がることするの?」と反撃に出る方法、いろいろあります。何を望むかは子ども次第です。親が思うほど、言い返したいという思いは強くないかもしれません。やり過ごせればそれでいい、おおごとにしたくないという気持ちがあれば、それを尊重します。
 選択肢が多ければ、ひとつがうまくいかなくても、他の方法を取ることができます。大切なことは、お子さんが他にもいろいろなやり方があると気づくことです。ですからここは親がアイディアを出すのではなく、質問してお子さんが考えるやり方がいいでしょう。「他の場所に行く」「友だちに助けを求める」「先生に言う」……あまりスマートではありませんが、「泣く」「うるさい、と大声を出す」なども、選択肢に入れて構いません。子どもがその選択肢で「できそう」という気持ちになればいいのです。「また今度、嫌なことがあったら、どういうふうにしたか教えてね」と結んでもいいでしょう。

「イヤ!」と言う練習をする

 もし子どもが「でも、うまく言えない」と訴えたり、次にも同じように手が出てしまったりとなったら、「イヤと言う練習」を親子でしてみてもよいでしょう。実際の場面とは違うのだから、と思うかもしれませんが、「こういう言い回しで言う」「こんなふうに声を出す」と準備して、くり返し体で覚えておくことで、いざというときにきちんと声が出る、ということがあります。人は緊張するとうまく体を使えなくなります。緊張していないときによく練習しておくことで、緊張したときに、いつもの落ち着いた状態を取り戻しやすくなります。

Vol.53 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年6月号掲載

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