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子育て相談 Vol.56

今月のお悩み

金銭感覚

子どもに「金銭感覚」を身につけさせるにはどうすればよいでしょうか?
私たち親世代が子どもの頃は、近所に駄菓子屋さんがあり、また、消費税など半端な数が発生することもなく、自分の小遣いの範囲で、金銭感覚を自然と身につけられたように思います。ですが、今は、お菓子も案外高く、子どもに自分の裁量でお金を使わせる場面がありません。子どもに「お金」について教えるいい方法はないでしょうか。

先生の回答

 10円単位でいろいろ組み合わせて日々のおやつを調達するようなことは、現在では難しくなったかもしれません。ですが、金銭感覚を身につけるためには、やはり自分の裁量でお金を使う経験をするのが一番です。昔に比べて難しい部分もあるかもしれませんが、工夫してお金を使う体験をさせたいものです。

一緒に買い物に行く

 まずは、普段の買い物に一緒に行くことから始めてはいかがでしょうか。生活に必要なあらゆるものには値段があること、それを買って生活していることを学びます。子どもが自分で欲しい物を決められる年齢になったら、買い物の体験を始めましょう。スーパーマーケットなどに行く時に、例えば週に2回は子どもの好きなおやつを買ってもいいという決め事をしてみましょう。その時は、100円以下とか額の設定もしておきます。子どもが欲しい物を選んで親のところに持ってきたら、レジが混雑していない時間であれば、現金を子どもに渡して、子どもが自分で払うようにしてもいいでしょう。レシートを受け取れば、あとで買った物の値段と消費税の説明ができます。幼稚園ぐらいでは、そのすべてが理解できないかもしれませんが、まずは体験を積んでいくことから始めましょう。

「自分の財布」を与える

 誕生日やクリスマスなどの特別なプレゼントをもらう時以外は、むやみに物を買い与えないことも、子どもの金銭感覚を育てる上で大切です。欲しい物を手に入れるためには、待つことが必要だったり、それなりの努力が必要だったりします。欲しいと言えば親に何でも買ってもらえる環境では、子どもは多くを学ぶことができません。そのかわり、子ども用の財布を与えてはいかがでしょうか。子どもはガチャガチャをやりたがったり、小さなおもちゃを欲しがったりします。そんな時は、自分の財布から自由に使ってもいいとしておきます。一定のお小遣いというよりも、お年玉の一部や、親戚からもらうイレギュラーなお小遣いを入れておくイメージです。「これ買ってもいい?」と聞いてきますから、「財布にいくらあるの?」「それ買うと、残りが〇〇円になるよ」「でも、欲しかったら買っていいよ」などと言って、お金は使えば減ること、なくなったら他の物が買えなくなることを教えていきます。子どもが小さいうちは、親が財布を預かっていても良いでしょう。

両親の努力あっての家計

 小学生になる頃には、お金がどのように家計に入ってくるかの話をするといいでしょう。お父さんとお母さんが働き、それによって家計にお金が入り、家族が生活できること、生活を楽しむことができることをわかりやすく話します。この会話は大変重要です。子どもの金銭感覚だけではなく、子どもの働くことや生活そのものに対する姿勢にも変化を与える可能性があります。生活の基盤に、お父さんとお母さんの努力があることが伝えられるといいですね。

感覚は、尊重されて身につく

 また、お小遣いは年齢にそって、自由に使える金額を設定しましょう。月にいくら、あるいは週にいくらと決めて、定期的に渡すようにしましょう。このお金は、親が管理せず、子どもが自由に使えるお金です。自由に使えるということは、同時に、お金を使い切ったらおしまいだということです。足りないからといって、予定外のお小遣いを追加でもらえるということはありません。すると子どもは「まんがとおもちゃ、両方欲しいけれど、両方を買うお金はない」と葛藤するようになります。時には、いらない物を買ってしまうような無駄もあるでしょう。そのうちに、「家に帰れば麦茶はあるから、今ここで買う必要はない」とか、「欲しい物があるから、今月のお小遣いはとっておこう」と、戦略的に考えられるようになっていきます。
 子どもに500 円のお小遣いを渡すということは、500円を自由に使う力を持たせるということです。親がその力を尊重した時にはじめて、子どもは自分なりの金銭感覚を身につけはじめます。親があれこれ口出しをしたのでは、親の考える『よいお金の使い方』を教え込むことはできても、子どもの金銭感覚を育てることはできません。例えば、スマートフォンのゲームにお金を投じれば、ゲームをする楽しみは得られますが、手元に何か物が残るわけではないかもしれません。それが自分にとって十分な価値のあることかどうかを判断するために、それまでに育てた金銭感覚が役に立ちます。

義務に対価を設定するのは要注意

 子どもの金銭感覚を高めるために、お手伝いに対してお小遣いを払うという考え方もありますが、ここには注意が必要です。例えば、何かお手伝いをしたらいくらとしてしまうと、家族のために働くことすべてがお金に換算されてしまう可能性があります。お手伝いを頼んだら、「いくら?」と聞かれてしまったという親もいました。お小遣いをもらって手伝うということは、裏を返すと、お小遣いを断れば家のことは手伝わなくてもいいということになります。子どもが家事を手伝うのは、教育の一部であり、家族の一員としての義務です。安易に対価を設定する前に、その意味合いをよく考えてみてください。

Vol.56 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年9月号掲載

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