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子育て相談 Vol.58
汚い字
- どうしたら字をきれいに書くようになりますか?
- 小学3年の男の子です。学校のノート、塾の宿題、ブンブンの提出課題すべてなぐり書きです。私が横について書き直しさせると、いやいやですが、とてもきれいな字を書きます。そばを離れるととたんになぐり書きになります。自分で書いた字が汚すぎて読めないこともあります(暗号のような連絡帳……)。
何かよい方法があったら教えてください。
先生の回答
親がきれいに書かせるのは困難
長い目で見て、信頼関係を築いたほうが得策です。
そもそも、きれいな字を書きたいと思っているのか?
書こうと思えばきれいな字が書けるわけですから、きっと本人は普段、きれいな字を書く必要がないと思っているのでしょう。一方で親としては、字は読むために書くのだから、読めるように書くべきだと思っています。このすれ違いが問題につながっているようです。では、きれいな字を書く重要性を理解させることはできるのでしょうか。
親からの働きかけによって字をきれいにするというのは、困難です。横について書き直しをさせるというのは一つの方法ですが、親にとっても大変ですし、子どもにとっても、いやいや書き直すのは苦痛です。まもなく思春期にもなれば、書き直しを求める親に怒りをぶつけることはあっても、きれいに書き直すことはなくなるでしょう。
ではどんな時、人は、字をきれいに書こうと思うのでしょうか。書いた字を読みたい、あるいは、読んでもらいたいと思った時ではないでしょうか。例えば、自分でも読めない連絡帳のせいで何か困ることがあったら、その時初めて、連絡帳は読めるように書こう、と思うはずです。
注意・お説教は逆効果
もし現在、読めない連絡帳に困っていないとしたら、その理由はいくつか考えられます。ひとつは、読めないけれど困ったことが起きていないというパターンです。例えば、読みづらくても結局は解読できたり、自分で思い出せたりして、連絡帳が機能している場合。あるいは、連絡帳は機能しておらず忘れ物をしているけれど、誰かが貸してくれたり、届けてくれたりというフォローが得られるので、結果として困っていないという場合。そういう状況であれば、連絡帳を足掛かりにしてきれいな字を覚えるのは難しいかもしれません。
もうひとつは、本人は連絡帳が読めないことで困っているのだけれど、それ以上に親のお説教がうるさいパターンです。親に口うるさく言われると、自分の字がどうかという問題に向き合う前に、親がうるさくていやだという問題が立ちはだかってきます。こうなると、問題は字が汚いことではなく、親がうるさいことにすり替わってしまいます。叱られている時に親を黙らせたいと思うことはあっても、連絡帳を書く時に字をきれいにしようと思うことはないでしょう。もしこのパターンであれば、親は口出しを控えるのがベストです。
つまり、本人が読めない連絡帳で困っていないのであれば、口うるさくするのをやめ、子どもが気づく日を待つしかありません。もし本人が読めない連絡帳で困っているなら、「だからきれいな字で書かないといけないのよ」とお説教をするのではなく、子どもに聞いてみてください。「どうしたら困らなくなると思う?」子どもは、字をきれいに書く、と答えるかもしません。
もう一歩踏み込んで考えてみましょう。「どうしたら、書く時に、きれいな字で書けると思う?」どのような方法でも構いません。子どもが、自分の課題を見つけて、自分で解決していくという姿勢が大切です。きれいに書くことを忘れてしまうのであれば、連絡帳の新しいページに赤で「きれいな字で書く」とメモしておいてもいいかもしれませんし、慌ててしまうなら、深呼吸してから書くようにしてもいいかもしれません。やってみて、うまくいかなければ、他の方法を探せばよいのです。
必要な時に、読める字が使えればOK
そうして、連絡帳をきれいな字で書くようになっても、連絡帳以外は殴り書きのままかもしれません。それはそれで良いのです。この先、大切な試験や、手紙を書く時など、読んでほしい、伝わってほしいという思いが芽生えた時、読める字が使えれば、それで構わないと考えましょう。
よく、雑な字を書く子は、頭の回転が速いため、手が頭に追いつかなくて雑になってしまうのだ、とも言います。お子さんの場合もそうかもしれません。丁寧に書くことそのものを楽しむ子もいますが、そうでない子もいます。丁寧に書く子も、几帳面さゆえであったり、美的感覚の問題であったり、細かい作業自体が好きであったり、字をきれいに書く理由は様々です。いちがいに「字が汚いから、きちんとやっていない」と決めつける必要はありません。
大人になってもまだ、きれいな字を書くのが苦手だという方はたくさんいますが、大人になってからでも、きれいな字の書き方を学ぶことはできます。今直そうと焦って親子の関係を壊すより、おおらかに構えて信頼関係を確かにしていったほうが、のちのち、素直に「ペン習字を習いたい」と相談してくれるようになるかもしれません。何もかも親の仕事だと抱え込まずに、長い目で見て関わっていきましょう。
Vol.58 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年11月号掲載