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子育て相談 Vol.72

今月のお悩み

“落ち着きがない”

すぐに物を壊してしまいます。
小学4年生の三男が、家でも学校でもすぐに物を壊してしまい、困っています。リコーダーを振り回して傷つけたり、学校の備品で触る必要のないところを触って壊してしまったり……。わざとではないのですが、いじくったり、振り回したり……と、本来の使い方ではないことをして壊しています。その度にものすごく反省はするのですが、しばらくすると同じようなことをしてしまいます。幼いころからいっこうになおりません。よい方法はないでしょうか?

先生の回答

まだまだ成長途中。好奇心は大切にしつつ粘り強くサポートしていきましょう

脳の発達に従って回避できるように

 幼いころからのその傾向は、ひとつには性格によるものもあるかと思われます。好奇心が強く、興味を持つと手に取らずにはいられないのではないでしょうか。子どもの好奇心は未来を拓くものとして大切に育てたいものです。

 また、小学生の脳の成長は体と共に現在進行中なのです。しかもその進行は人によって異なるため、他の子にはない動きや、癖として現れることもあるでしょう。手に取ったはいいが、好奇心に任せて無理に動かしたり、扱いが不器用だったりしても不思議はありません。成長するに従って、お子さん自身がさまざまな経験を重ね、脳の発達に従って、そういった状況を回避する方法を学んでいくでしょう。
 ですから、親は基本的に、その様子を見守っていけばよい、ということになります。とはいえ、物を壊してしまうことは問題です。ただ成長を待つだけでなく、不用意に物を壊してしまうことを減らし、子どもの発達をうまくサポートできるかについて、考えてみましょう。

叱ってもよくはならない

 まずは、あまり子どもを叱らないほうがよいでしょう。何故なら、叱っても子どものその傾向はよくはなりません。叱り続けることでかえって、その傾向を強化したり、子どもに『自分は悪い子なんだ』という見方を植えつけたりしてしまいます。悪いことをした子どもを叱るという姿勢ではなく、「困る状況を一緒に解決していこう」という姿勢で、失敗を一緒に受け止め、子どもの成長をサポートしていくようにしましょう。

対策❶ 壊れた状況を整理して理解しておく

 何かを壊してしまったときは、反省を促すことよりも、状況を整理して理解することのほうが大切です。どんな状況だったのか、何をしたら壊れたのかを振り返り、行動と結果の因果関係を確認していきましょう。親が怒ったり、責めたりせずに、「それで、どうしたの?」と聞いていけば、子どもは「何だろうと思って持って、グルグル振り回したら、壁に当たって……」と、そのときの状況や行動、自分の気持ちや判断を、一つひとつ振り返ることができます。
 振り返りの目的は、原因の特定ではありません。興奮したり、はしゃいだりして起きた状況を、一歩ひいた冷静な目で見直すことです。何をしたら壊れたのか、なぜそういう状況になったのかを理解すれば、どんなときに注意したらいいか、どういうふうに振る舞ったらいいかを考えることができます。この積み重ねと並行して、脳が成長していきますから、次第に自分で制御できるようになっていきます。

対策❷ さまざまな場面をシミュレーションしておく

 この先どうするかということを考えるときには、「わかった? もうやっちゃだめよ!」という禁止は、あまり意味がありません。そうではなく、「じゃあ、今度同じ場面になったら、どうする?」と、行動を考えさせてみると良いでしょう。自分の意図や行動を意識することが、行動制御の役に立ちます。学校の備品などに触りたくなったとき、「これはそっとしたほうがいい」とか、「これは触らないほうがいい」ということを意識的に選択できるようにするため、あらかじめ、選択肢を増やす手助けをしていきましょう。
 ですから、「どうする?」の答えは一つでなく、たくさんあったほうが良いのです。触らない、そっと触る、深呼吸してから触る、周りを確認してから触る、先生に聞く……などなど。繰り返しシミュレーションしておくことが、いつか、実際の場面で役に立ちます。

 脳の発達の段階として、自己制御が完成するのは、比較的遅いタイミングです。思春期を終えて、20歳を過ぎるころまで、発達が続きます。親にとっては長丁場になりますが、今日からの根気強い関わりによって、子どもの自己肯定感や問題処理の能力を高め、ひいては人生の質を高めることができます。気長に、粘り強く支えていきましょう。

Vol.72 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年1月号掲載

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