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子育て相談 Vol.73

今月のお悩み

“反抗期”

反抗期の言動、どこまで意見すべき?
小6の長男は反抗期に入ったのか、この数か月、あまりしゃべりません、たまに言葉を発したと思えば、ものすごくけんか腰で生意気な物言いをするので、私はいつもしばらく落ち込んでいます。夫がそんな長男の言動を横で聞いていながら全く無関心なことにもがっかりしています。私としては、たまにはビシッと叱ってほしいのですが……。反抗期としてどこまで許して、どこまで意見すべきなのか……。ご教示よろしくお願いします。

先生の回答

思春期の子どもが冷静に親と話し合うのは困難
親が、大人として冷静な態度で接しましょう。

親と距離をとり自分自身と向き合う時期

 以前のように話さなくなったお子さんに対して、気をもんでおられるのですね。子どもが成長するとき、必ず通る道ですが、親としてはなかなか、その変化を穏やかに受け止めることができません。

 この時期の子どもは、自分の世界を持つために、親と距離をとり始めます。これまで10年以上、親の価値観の中で生きてきましたが、そろそろ自分自身の価値観を形作る時期になったのです。これまでのように、親の価値観に寄り添って暮らしていたのでは、自分個人が誰であるかというアイデンティティを見つけることができません。ですからこの時期の子どもは、親と距離をとり、自分自身と向き合う必要があるのです。
 とはいえ、これらは無意識に起こることです。子どもとしても、「これから、一人の人間としてのアイデンティティを見つけていかなくてはいけない。そのためには、親に反抗しなければ」などと考えているわけではありません。すべては遺伝子レベルでプログラムされた人間の成長の一部です。ですからもし、親が子どもの態度に腹を立てて「なんでそんな言い方をするの!」と叱っても、彼らはそれには応えられません。彼ら自身、自分が何故そな態度をとるのか、わかっているわけではないのです。そこで親がしつこく迫れば、何故親はこんなにうるさいのかと不思議に思い、うっとうしく感じるに違いありません。頑張って遠ざけようとしているものがむきになって追いかけてくれば、けんか腰にもなるでしょう。
 この時期彼らは、肉体的にも急速な成長を始めています。成長ホルモンが多量に分泌され、女子は言葉による反抗が、男子は行動による反抗が目立つとも言われています。脳も大人の機能に向かって著しい成長をしていますが、完成は20歳ごろと言われています。思春期の子どもの脳は未熟で、自分の言動を制御する機能は完成していません。ですから、彼らにとって冷静に親と話し合うのは大変困難であると言えます。この時期、親子関係を健全なものに保つため、大人として冷静な態度で接するのは、親の役割と言えるでしょう。無関心に見えるご主人は、その辺りをわきまえておられるのかもしれません。

信じて・任せて・見守り・話を聴く

 この時期の子どもとの付き合いは、「信じて」「任せて」「見守り」「話を聴く」を心がけましょう。お母さんはこれまでいろいろお子さんに教えてきたと思います。ご自身がやってきたこととお子さんを信じましょう。もちろん、子どもは未熟ですから、まだ上手に自分をコントロールできるわけではありません。
 自分の価値観を見出し、自分の言動を制御できるようになるプロセスは、ちょうど一人で自転車に乗れるようになるプロセスと同じです。最初は親が後ろで押さえて転ばないようにしました。いま子どもは、親に手を放してもらって、一人で走り出しているのです。最初は必ず転びます。親にとっては苦しいことかもしれませんが、信じて見守りましょう。何度も転んでけがをして、「痛い!」と親のところに泣きついてきます。「痛かったね」とただ話を聴いてやってください。「もっと力を抜いて!」「前を見て!」などとアドバイスもいりません。必要以上にアドバイスされると、「わかってるよ!」「何にもわかってないくせに!」と、子どもは親を遠ざけます。なぜならば、もはや親の言葉ではなく、自分自身の言葉で自分を支える必要があるからです。

手を離すことで親子関係を維持する

 この時期にきちんと親が手を離さないと、親子関係を壊すことになりかねません。親子関係が壊れると、親は子どもを見失うことになります。親子関係が良いものであれば、子どもは親に反抗しながらも、あれが嫌だ、これがうれしいと、いろいろ話してくれます。だから親は、離れた場所で子どもを見守ることができます。親が、親の価値観を押し付けることをせず、話に耳を傾け、迷う自分を受け止め寄り添ってくれれば、子どもはまたチャレンジしようという気になります。
 ですから、まず、反抗期に無事たどり着いたことを喜びましょう。そして、今までのようなやり方で子どもを教え導こうという考えを手放しましょう。大人もまた、新しい付き合い方を学ぶ必要があるのです。もはや、「生意気なことを言ってはいけません」と言っても、子どもの心には届きません。子どもの言動を変えるのは、親の態度です。大人であるというのがどういうことか、身をもって示していきましょう。子どもの不安定をおおらかに受け止め、余裕をもって寄り添いましょう。その姿勢はやがて、大人として生きることがどういうことかを子どもに伝えます。

Vol.73 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年2月号掲載

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