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子育て相談 Vol.75
“おとなしい気質”
- 困っているといえない娘が心配です。
- 今春、4年生になる次女はおとなしく、先生の説明がわからなかったり、道に迷ったり…と困っていても、黙って一人で抱え込んでしまうようなところがあります。親としては、もっと人に聞くなどして、要領よく生きられるようにしてやりたい…。どういった声かけ、指導をしていけばよいでしょう?
先生の回答
親が先回りして心配しないことが大切
おおらかな気持ちで、気長にサポートしていきましょう。
親の指示で子どもの行動は変わらない
人間には、生まれ持った気質があります。お子さんの気質が神経質だったり慎重だったりすると、特にこれといった原因や理由がなくても、質問したり、助けを求めたりすることが苦手だと感じることがあります。「聞けばいいのに」ということがわかっている親からすると、子どもの行動にヤキモキすることになるでしょう。
とはいえ、ここで「なんでちゃんと言わないの」「早く聞きなさい」とプレッシャーをかけても、子どもの行動を引き出す効果は期待できません。神経質で慎重な子であればむしろ、余計に声をかけにくく感じたり、困りごとを隠そうとしたりするかもしれません。親はどのように対応していけばよいのでしょうか。
親の対処する姿を見せることで問題解決の選択肢を示す
生まれつきの気質は人によって違います。ある気質を持った親にとっては要領よく生きることがいいことかもしれませんが、違う気質を持った子どもにとっては、安全に淡々と生きることのほうが、より優先順位が高いかもしれません。ですから、親が関わりを工夫しても、子どもの行動は変わらないかもしれません。それでも、もし原因が生まれつきの気質であれば、子どもは自分自身の特性と一生付き合っていくことになるのです。子どもが自分自身の気質を理解し、負担なく問題解決できるような選択肢をたくさん持てるように、気長にサポートしていくのがよいでしょう。
まずは親自身が、手本を示すというのがひとつです。周りの人に聞くなどして、要領よく対処する姿を見せていきましょう。親が道を聞いたり、質問し直したりする姿を積極的に見せることで、それが普通のことであるということ、難しいものでないということを見せていきます。また、助けてもらったときにはきちんとお礼を言う、逆に、こちらから自分から進んで人を助けるなどの姿を見せることで、「助け合い」「お互いさま」ということを伝え、頼ることへの抵抗感を減らしていくこともできます。これは種まきの作業なので、すぐに効果が出るものではありませんが、親が繰り返しして見せている行動は、そのまま子どもの選択肢となります。
困っているときの気持ちや状況を聞く
そして、子どもが困っているようであれば、何をしようとしていて、何に困っているのかを聞きましょう。「それはこの人に聞きなさい」とアドバイスしても、できない、という気持ちが強ければ、行動に移すことは難しいでしょう。アドバイスをするときは、「お母さんだったら、近くにいる人に聞いてみるところだけど、どう?」「先生に頼んでみたらいいと思うんだけど、頼みにくい理由がある?」などと、子どもの気持ちや状況を確認してみましょう。もしお子さんの心配が、「恥ずかしい」「変に思われたらどうしよう」とか「迷惑をかけたくない」など人の目を気にするというところにあるのであれば、「お母さんだったら、そういうときに頼られるのはうれしいけどな」とか、「○○ちゃんだったら、こういうときに喜んで教えてくれるんじゃない?」などと、相手の立場に立って考えてみるよう促すことが、役に立つかもしれません。
ロールプレイで練習しておくのも有効
もし、親が「聞けばいいのに」と思っているだけでなく、子ども自身もはっきりと「聞きたいけど、聞けない」と感じている状態であれば、ロールプレイで練習をするというのも、大きな効果があります。「そういう時にどう聞いたらいいか、練習してみよう」と言って、最初は親が「質問する役」、子どもが「答える役」をします。友達に「ねえ、ここわかる? どうしたらいいの?」、あるいは先生に「明日の図工の持ち物をもう一度教えてください」と聞くような、具体的な言葉遣いを確認しながら、繰り返し声を出してみることが大切です。声を出しておくだけで、いざ必要な時に、声を出している自分をイメージしやすいものです。練習しておくことで、一歩踏み出す助けになるでしょう。
大切なのは、親が焦らないことです。助けを求めたり、声をあげたりしていくことの重要性は、子どもが、自分自身で対処できるような小さな困りごとを解決していく中で、徐々に覚えていきます。親があまり先回りして、もっとこうしないと大変な思いをすることになるとか、こうでないといけないというふうに捉えてしまうと、子どもはいざというとき、親に頼りにくくなってしまいます。子どもの様子をおおらかな気持ちで受け止めながら、他の選択肢を見せたり、状況を整理したり、場合によっては練習したりすることが、子どものサポートになります。お子さんも成長していきます。きっとある日、こんなことが一人でできるようになったと思う日がきますよ。
Vol.75 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年4月号掲載