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子育て相談 Vol.76
“勉強が苦手”
- 勉強を諦めているような息子が気になります……。
- 小学6年の二男は、兄や妹より成績が悪いと嘆くわりに、自分で勝手に宿題をしなくていいと決めて遊んでしまうことがあります。親から注意されないよう、家の中で気配を消していたり……。担任の先生からは「追い詰めてはいけない」と言われるし、祖父母からは「しっかり勉強習慣をつけさせなくてはいけない」と言われるしで、親子共々つかれてきました。ママ友は「勉強以外でいいところを見つけて伸ばしてあげて」と言いますが、親としてはなかなか諦められません。アドバイスお願いします。
先生の回答
親が、「いつか好きな道が見つかる」と信じることで
子どもも自分を信じ、成長していきます。
「できる自分」に出会わせてあげて
きょうだいであっても、子どもの傾向は一人ひとり独特ですね。その独特さは、本人の持って生まれた気質と、どういう環境で育ったかによって形づくられていきます。息子さんの場合、三人きょうだいの二番目という環境も、大きく影響しているのではないでしょうか。親が比較するかどうかは別として、上と下に比較の対象がいます。特に全員が学童期になれば、成績は一番わかりやすい比較の材料です。兄や妹より成績が悪いと嘆くのは、もっと自分も優秀でありたいという気持ちの表れでしょう。
そういった気持ちのある人は、成績以外に何かこれが好き、これが得意といえるものを見つけることができれば、そこから伸びていくものです。「お兄ちゃんは算数が得意、妹は国語が得意、そして僕は〇〇が得意」と、学校の成績だけにとどまらない強みがあるということを伝えられたら良いですね。親の役割は、子どもが得意なものを見つけられるような環境をつくることです。お子さんは何が好きですか? 何が得意ですか? 今の時点で成績を諦める必要はありませんが、まずは本人が好きなもの、得意なものを持つことで、「できる自分」に出会うところから始めてはどうでしょうか。
「好きそうなこと」を、深める体験を提供する
今社会は大きく変化しつつあります。将来お子さんたちが働く社会を想像してみると、今の大人たちが働いている社会とは全く異なる環境であることは、想像に難くありません。会社に行って、上司に求められることをきっちりこなす働き方から、一人でも創造的に仕事をつくり、仕事を進めることで、組織や社会に貢献することが求められるようになります。そのような働き方をするためには、まず日々の生活が充実していることが重要です。好きなことができて、生活が楽しめるとき、同じように仕事でも力が発揮できるようになるのです。
もし、好きなことを仕事にできればそれも最高です。ですがまずはあまり欲張らずに、毎日を楽しく過ごせること、自分はやればできるという手ごたえを持てることを探すことから始めてみましょう。
お子さんを観察して、お子さんが好きそうなことがあれば、それを深める体験を提供しましょう。ゲームのように受け身でこなすコンテンツではなく、自分で目的を見出して工夫しながら進めるようなものが良いでしょう。興味がどこに向いているかわからなければ、博物館や美術館に一緒に足を運んで、何に興味を示すか、どんなことを楽しむか、時間をかけて探究してみましょう。水族館や動物園、植物園なども良いですね。体を動かすことが好きなら、釣りや山歩きも、大いに知的好奇心を刺激します。スポーツは、やるのも観戦するのも面白いものです。読書や工作が好きな子もいます。電子工作やプログラミングは、やってみて初めて興味がわいてくることもありますから、機会をとらえて何でも試してみると良いでしょう。楽器演奏や料理、ガーデニングなどが楽しみになることもあります。
勉強は、必要になってから始めてもかまわない
やりたいことや好きなことを見つけるタイミングは、人によって様々です。現在海外の大学で学ぶある女性は、日本の高校に在籍していたころ、成績が思わしくなく、特に数学は本人曰く「絶望を感じる」というレベルでした。なかなか勉強する気にもなれず、教師からも両親からも理解が得られないまま、彼女は高校を中退しました。その後、海外の大学に進学し、そこで見つけた夢に向かって猛勉強を始めるのですが、ここで立ちはだかったのが、高校の時に苦しんだ数学でした。ですが今、彼女は数学に絶望することなく、日本に住む妹の助けを借りて、オンラインで数学の基礎を学んでいます。
ご両親が、「いつかこの子は自分の好きな道を見つけて歩んでいくだろう、それまで一緒にその道を探そう」と思って関わっていけば、きっと息子さんも、自分に対して同じような意識をもって成長していきます。そしてもし、彼が見つけた好きな道のために勉強が必要であったら、その時に始めればいいのです。今、やりたいことが見つかっておらず、勉強していても「できる」「楽しい」と感じることの少ない子どもにむかって、「とにかく成績をあげなさい」と追い詰めることは、将来の道を閉ざすことにもなりかねません。もちろん成績を諦めることはしませんが、成績で彼を追い詰めることがないように意識してください。
Vol.76 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年5月号掲載