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子育て相談 Vol.80
“思春期”
- 友だちの言葉を気にしすぎる娘が心配です。
- 小学4年生の娘の、友だちの言葉や評価を気にしすぎるところが気になっています。たとえば、一目ぼれして購入したお気に入りのワンピースなのに、お友だちに「もっとスポーティーな服が似合うと思う」と言われ、着なくなり、髪型をツインテールにしてあげた日などは、「かわいこぶっていると思われないか」ととても心配します。
こんなに周囲の評価に気を使って生きていて大丈夫なのかと心配しています。何か声掛けなどしてあげたほうがいいのでしょうか。
先生の回答
親世代とは違う文化や考えをつかもうとし始めた
お子さんの成長を喜んでください
周囲の声を気にするお子さんの様子を見て、心配に感じておられるようです。お子さんのそのような行動は、年齢によるもの、また、気質によるものであると考えられます。順を追ってみていきましょう。
「私らしさとは何か」という問いと向き合う時期
小学4年生というと、ちょうど思春期の入り口に立つ時期です。これまでの、親の価値観を素直に受け入れてきた子ども時代が終わり、親に反抗しながら、少しずつ自分の価値観を見つけていく時期が始まります。一般にこの前後から、友だちの意見を気にする傾向が強くなっていきます。友だちの意見を重視しながら、親世代とは違う「自分たちの文化」「自分たちの考え」をつかもうとしているのです。そして、思春期は「私らしさとは何か」という問いに向き合う時期でもあります。一目ぼれしたワンピースとはいえ、果たしてこれを着て学校に行くことが本当に「私らしい」のか。これを着た私は、人の目にどう映るのか。人からそのようなイメージを持たれることは、自分にとってどのような影響を持つのか。キレイなのか、カワイイなのか。元気なのか、おとなしいのか。自分なりに「これだ」と思えるイメージがつかめるまで、数年にわたって、様々なレベルでの試行錯誤が続くことになるでしょう。言葉遣いや服装の変化は、その試行錯誤が表現されたものと考えてください。
同じ思春期でも、周囲の様子をとても気にする子もいれば、マイペースを貫く子もいます。これは気質の違いによることがほとんどです。気質は生まれつきのもので、家族であっても全く違う気質になることがあります。それでも、小さなころは親のスタイルをそのまま取り入れて真似るので、ある部分では、親とよく似たふるまいをすることが多くあります。ですが思春期に差し掛かると、子どもは親の真似をするのをやめ、自分なりの方法を手に入れようとします。
このご相談の内容からして、きっと親御さんは、あまり周りの目を気にしすぎることのない、自分の意見をはっきり持って、それに沿って生きるタイプなのでしょう。もしかしたら娘さんも、そのスタイルを取り入れ、最近までは同じようにふるまっていたかもしれません。ですがこのたび、思春期に足を踏み入れるにあたって、無意識の中で、もう私は親のスタイルで身を守らなくても大丈夫、自分なりの方法を探していこう、ということになったのです。
ですから、親からすれば、初めて出会う子どもの姿、ということになるかもしれません。これまでは自分と同じようにふるまっていた子どもが、急に自分と違うスタイルを採用すると、不安に思うかもしれません。ですがこれは、お子さんが無事に成長した証として、ぜひ喜んでいただきたいところです。最終的にそのスタイルが定着するかどうかはわかりませんが、少なくとも今お子さんは、安全に成長していると考えられます。
親は、指示者からサポーターにシフトチェンジを
さて、それを踏まえて、どのように接したらよいかということですが、残念ながらもう、親の言葉は、今までほど直接的な影響力を持ちません。親が強く声掛けをすればするほど、むしろ反抗的な部分を引き出すことになりかねません。
ですから、これまで以上に、子どもの思いを問いかけ、その言葉に耳を傾けるよう心がけましょう。もっとスポーティーな服が似合うと言われた」と言ったなら、「そうなのね。あなたはどう思うの?」「あなたは何が好きなの?」と質問してください。どんな答えでも問題ありませんから、子どもに話させることです。「お母さんはどう思う?」と聞かれたら、その時は自分の考えを伝えましょう。そしてぜひ、お子さんが「これだ!」と思えるようなものに出会えるよう、サポートしてあげてください。予算の中で、いろいろなテイストの服に挑戦できるよう、一緒にお店を開拓していくのもよいですね。
大切なのは、「困ったとき、モヤモヤしたとき、親は話を聞いてくれる。一緒に考えてくれる」という土台を作っておくことです。これからお子さんは、より葛藤の多い時期に入っていくことが予想されます。その中で、親が心を支えられるよう、関係をより確かなものにしていきましょう。親が指示命令をする時期は終わりました。親もまたこの時期に、子どもの考えに耳を傾け、子どもの決定をサポートする、コーチとしての役割にシフトチェンジしていきましょう。
Vol.80 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年9月号掲載