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子育て相談 Vol.84
“ワークライフバランス”
- 父親だって、育児・家事に関わりたいんです……。
- 小学2年の長男と、5歳の次男の父親です。夫婦ともにフルタイムで働いているため、家事も夫婦で分担して日々なんとか回しています。ただ、妻が定時に帰宅できる仕事ということもあり、どうしても彼女のほうに育児・家事の負担が大きくかかってしまい、いつもイライラしてます。私自身、時間さえ許せば育児にも家事にも関わりたいのですが、職場がそれを許しません……。ワークライフバランスなんて言葉が聞こえてくるのに、ちっとも実現できそうになく、毎日憂鬱です。何かアドバイスいただけませんでしょうか。
先生の回答
妻は、“手伝ってくれる人”ではなく、
“一緒に生きてくれる人”を求めています。
夫婦で徹底的に話し合い、理解し合う
夫婦で力を合わせて、二人の男の子を育てているのですね。ところが夫の職場は、定時では帰れない職場で、思うように子育てや家事の時間が取れない。ワークライフバランスを実現しようと、社員に定時で帰るよう促す企業もありますが、そうもいかない仕事もたくさんあります。そうなると、自然に定時で帰ることができる妻の家事や育児の負担が増えて、妻は疲れてイライラしがちになる。多くの家族が体験していることではないでしょうか。
まずは夫婦で徹底的に話し合うことをご提案します。このようなケースで妻がイライラする理由のひとつは、夫の態度です。「時間さえ許せば育児にも家事にも関わりたいのですが」とおしゃっていますが、この“関わる”という態度が、子育ての負担の大きい妻にとっては、“お手伝い”と映ることがあります。夫が妻のお手伝いでいる限り、どんなに手伝ってくれても、妻のもやもやは消えません。妻が求めるのは、手伝ってくれる人ではなく、一緒に生きてくれる人です。主役となって、家事も子育てもやってくれる人です。その姿勢を見せるためにも、まずは自分から「今のこの状況を改善したい」と声をあげて、話し合ってみてはいかがでしょうか。
話し合うことがないと、妻は、定時に帰って食事の支度、子どもの夕食、お風呂と一人で仕事に追われ、「結局私一人で苦労しなきゃいけない」とイライラします。夫も、イライラしている妻相手にどうしていいかわからず、憂鬱な日々を過ごすという構図ができ上がってしまいます。ですが、夫婦でよく話し合い、日々がどのように回っていて、それぞれがどのようなところで困難を感じているかを理解しあえば、解決策が見えてくるかもしれません。妻も、遅れて帰る夫が、一日の中で家事のどのような部分を担ってくれるかが再確認できれば、そこまでの不公平感はないはずです。もし、それでも妻の負担が大きすぎるということであれば、一日の流れをもう一度考え直してみてはいかがでしょうか。
毎日の生活の中にどんな仕事があるのかを書き出し、誰が何を担当するかを考えてみましょう。新しいパターンを試してみることも大切です。いかに家事を簡略化するかを一緒に考え、休む時間、楽しむ時間を増やすようにしてはどうでしょう。妻が夕方の忙しさを担ってくれるなら、朝の忙しさを夫が引き受けるとか。夫婦の仕事や生活スタイルによって、分担し合うことができれば、妻も理解してくれるはずです。
幼いころに父親の存在を根付かせておかないと……
また、子どもが幼いころから積極的に子育てを行うことが、将来、父親を助けてくれることを覚えておいてください。思春期の子どもを持つ父親からよく受ける相談があります。母親の手に負えなくなった子どもの話を聞こうとしても、子どもが父親を相手にしてくれないというのです。父親自身も、子どものことがよくわからないので、どう話しかけていいのかもわからない。幼いころの子育ては往々にして母親が中心になりがちです。子どもが母親を求めるからです。それをいいことに、妻に子育てを任せて、充分に子どもとの時を過ごさないできた父親は、実は、子どものことをあまり知りません。ですから、思春期になって子どもが自立しはじめたとき、慌てて子どもと関係を作ろうとしても、ことはそう簡単ではないのです。子どもが幼いほど、子どもは父親との関わりを無条件に歓迎してくれます。幼いころから、しっかり子どもとの関係を作るように心がけてください。ここでも、お母さんのお手伝いではなく、お父さんとして子どもの中にその存在を根付かせることです。
子どもがどんな子か、何が好きで、何が嫌いか、どんな遊びが好きで、誰とよく遊ぶか。どんな友人がいて、どんな遊びに夢中か。将来何になりたいと思っているか、どんな葛藤を抱えているか。子どもに関する様々な情報は、一緒に暮らしていないとわかりません。暮らすというのは同じ家の中で一緒に生活するというだけではありません。一緒に遊び、同じものを見て、お互いの意見を言葉にしながら、子どもの思いに耳を傾け、子どもを理解することです。お父さんに趣味があれば、子どもを誘って一緒にやるのもいいでしょう。子どもがゲーム好きなら、一緒に楽しむのもいいでしょう。子どもの心の近くにいてください。そんなお父さんなら、子どもが困ったとき、お父さんは頼れる相談相手でいることができます。
Vol.84 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年1月号掲載