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子育て相談 Vol.87

今月のお悩み

“くせ(噛む.ちぎる)”

噛む、ちぎる……くせを直すには?
 小学1年生の男児ですが、爪噛みをやめたと思えば鉛筆噛みがはじまり、鉛筆噛みをやめたと思えばプリントの端っこをちぎるようになり、手先の悪いくせがすっきり直りません。一つひとつのくせを指摘しやめさせても解決にはならないと感じていますが、では他にどうすればよいのかと頭を抱えています。

先生の回答

くせは、ストレス発散の手段
上手な発散方法が身につくまで気長に待ちましょう

子どもの日々はストレスであふれている

 「くせ」のあるお子さんは少なくありません。爪を噛む、鼻をほじる、髪を触るなどは、よく見られるくせです。ほかに、文房具に関係するくせ、たとえば鉛筆を噛む、紙の端や消しゴムをちぎるなども、小学生になると多く見られるようになります。くせの原因は明らかではありませんが、ストレスがかかる場面でくせが強く出る場合が多く、ストレスを逃がすための手段の一つではないかと考えられています。ですから、お考えの通り、一つひとつのくせを指摘してやめさせることができたとしても、元のストレスがなくならない限りは、別のくせが出てくることでしょう。くせの原因となっているストレスをうまく解消できない限り、すっきり直る、ということは期待できません。
 「子どもにストレスがかかっている」というと、大変なことのように思われるかもしれませんが、実際、子どもの日々はストレスであふれています。まず、身体の成長自体が大変な苦痛を伴います。1年生なら、いつもどこかの歯がグラグラしていて、食べるのもしゃべるのも難しく、抜けた後も困難が続きます。背が伸びることで関節に痛みを抱えることもあります。心の成長に伴って、周囲の友だち関係も複雑になっていきます。今まで考えたこともなかったような困難が、日々次々に現れます。学校生活にもストレスはあふれています。ただ授業を受けるだけの場面でさえ、内容が難しすぎても、逆に簡単すぎても、45分間がストレスになります。

ストレスへの対処法は成長とともに身につく

 日常的なストレスに対して、大人だったらどうするでしょうか。体が痛ければ休んだり、病院に行ったりします。人間関係が難しければ、誰かに相談したり、距離を置いたりします。今までの経験から解決策を考えられる部分もあるでしょう。難しくてついていけない課題なら予習をし、簡単で退屈な課題に対しては、何かひと工夫を加えたり、違うことを考えて時間をつぶしたりします。
 1年生の子どもたちが、大人と同じように要領よくストレスに対処できるでしょうか。恐らく難しいでしょう。子どもたちは、小さな体でストレスを受けとめ、そしてたまたまお子さんの場合、そのストレスを目に見える「くせ」の形で逃がしているのかもしれません。だとすれば解決策の一つは成長を待つことです。子どもが成長し、さまざまなストレスへの対応策を身につけ、日々をうまく回していけるようになることで、くせに頼らなくてもいられるようになります。
 爪噛みをやめたのはなぜでしょうか。もし自分からやめたのだとしたら、何か爪を噛むのが良くない、恥ずかしい、困ってしまうと思う出来事があったのかもしれません。親に指摘されたのだとしても、それでくせをやめてしまえるというのは、なかなかすごいことです。ですが、場合によっては「爪を噛むのをやめなくては」と思ってブレーキをかけること自体が、大きなストレスになるかもしれません。そうして爪を噛むのをやめても、そのぶんのエネルギーは鉛筆を噛むことに移っていきます。

ガムを噛みながら宿題をするのもあり

 ところで、噛むというのは非常に合理的なエネルギーの発散法です。爪も鉛筆も、噛みぐせのある人たちには人気のアイテムです。噛み心地が独特で、力を加えたという手ごたえが得やすく、スッキリするのかもしれません。直接くせをやめることにはつながらないかもしれませんが、噛みごたえのよいおやつを食べることで、少し気持ちがすっきりすることもあるかもしれません。バリバリとかたいせんべい、噛みごたえのあるスルメやジャーキー、かたいグミなどがまず考えられますが、それだけでなく、噛み心地が独特の飴菓子やスナック菓子なども多く販売されています。子どもが喜ぶものを一緒に探して、「噛みたい」というニーズを満たしてあげることも、役に立つかもしれません。咀嚼運動で脳が活発に働き、集中力を増しつつリラックスできる、という研究も多くあります。家でぐらいは、ガムを噛みながら宿題をしても良いのかもしれません。

くせを直すよう強要するのはNG

 大切なのは、親が神経質になりすぎないことです。「○○してはいけない」とずっと自分を抑えて過ごすと、非常に強いストレスがかかります。いつか子ども自身が「このくせをなくしたい」と感じるようになり、それでストレスを受けながら努力するのは構いませんが、親にくせを直すよう強要されてストレスをためていくと、親子関係にまでひびが入ってしまいます。1年生はまだ小さく、生きているだけでストレスがたまるものです。上手な発散方法を身につけるまで、気長に待つようにしましょう。

Vol.87 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年4月号掲載

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