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子育て相談 Vol.90

今月のお悩み

“個人面談”

個人面談での先生の指摘が腑に落ちません……。
 小学2年生の息子の個人面談で、担任の先生から腑に落ちない指摘を受けました。「授業中、あんまり話を聞いていない」、先生の指示に対して「めんどくさいな〜」と言い返したり、人の話に割って入ってきたりする……などといったことです。息子に確かめても、「そんなことはしてない」と言いますし、彼の性格的にも、先生に言い返すようなことはないように思います。わが子を信じよう、という思いと、先生の指摘を受けて親として何か手を打たねばならないのではないか……という思いが葛藤し、面談後、もやもやしています。

先生の回答

社会に適応すべく発達過程にある子どもたち
──親と先生の理解が違うのはごく自然なことです

試行錯誤をくり返し「自分らしさ」を見出していく

 子どもが小学校に進学すると、幼稚園や保育園とは違い、学校での様子がわかりにくくなっていきます。これは自立の第一歩で、子どもが本格的に親から離れ、自分一人で学校という社会に参加し始めたということです。
 親にとっては、生まれた時からずっと見守ってきた我が子です。どのような時にどうふるまうか、今までであれば、かなり的確に想像できたと思います。ですが、子どもが親を離れて、家族以外の社会に参加するようになると、子どもはその社会に適応するために、今までにない新しい在り方を発達させていきます。それは、子どもがもって生まれた気質が、その時のその環境、つまり学校、クラス、友だち関係という独特の環境の中で、大きな摩擦を起こさないよう、その場で安心して過ごせるようにと、自分なりに作り上げるものです。
 これは大人でも同じことです。会社で見せる面と、家で見せる面は違います。昔からの友だちに見せる面と、仕事関係の知り合いに見せる面は違います。いわばTPOに合わせて、素の自分をどのように表現するかを変えたり、場合によっては隠したりもします。息子さんは今、その取り組みを始めたところです。さまざまなありようを試し、自分に合っているか、問題がないかを確かめる体験を重ね、やがてそこから「自分らしさ」を見出していきます。とても大切なプロセスですから、温かく見守っていきたいものです。

先生の指摘を、具体化させ、子どもに確認してみても

 さて、小学校の先生の指摘が腑に落ちないということは、実はよくあります。長所や短所、得意不得意、性格の捉え方など、さまざまな角度がありますが、親の理解と先生の理解が違うということは、ごく自然なことです。もしこれが、いじめや犯罪に関係するようなトラブルであれば、事実を確かめる必要があります。ですが、今回はただ先生から「このような行動があった」という指摘・報告を受けたにすぎません。
 腑に落ちない親はどうしたらよいでしょう。一つには、先生に対して「家ではそのような素振りがないので想像できないけれど、そういうことでしたら、帰って本人と話をしてみます」という姿勢を伝えたうえで、たとえば「あんまり話を聞いていない」というのが具体的にどういう行動であるかを確認しておくと良いでしょう。消しゴムをちぎって遊んでいるのか、隣の子と話しているのか、落書きをしているのか、ただただぼんやりしているのか……。ほかの何かに熱中している場合、子ども自身には「聞いていない」という自覚はありません。具体的にどのような状態で先生の話を聞いているのかを確認することで、子どもと話すときの助けになります。
 それから、家に帰って子ども自身に確かめます。「先生からこういう指摘がありました」と伝え「あなたはどういうふうに捉えていますか」と訊ねます。今回はここで、子どもの言い分と先生の言い分が食い違いました。でも、なぜ食い違っているのかはわかりません。子どもが実際にそういう行動を取ったのか、取ったとして、自覚があるのか、自覚があるとして、親に正直に言えるのか。どれもわかりませんし、いま特定する必要はありません。食い違うなら、いったん子どもの言い分を受け止めて、「そうなのね。でも先生としては〇〇してほしいということです。今度もし直接注意されたら、うまく対応できますか?どうしていいかわからなかったら、またそのとき相談してね」としておけばよいでしょう。
 もし、本人がたびたび『先生に誤解されている』という体験をしているなら、親が間に入って状況を確認したほうがいいかもしれません。そうでなければ、今の段階でできることはここまでです。事実はわかりませんが、社会に出れば、自分の行動が思わぬ評価を受けることはあるものです。息子さんは今回、そういうことがあるのだ、という体験をしました。それでいいのです。これをくり返して、徐々に自分がどう見られるかをイメージできるようになり、他者の視線を前提として行動できるようになっていきます。

周囲の指摘を軽視せず、とらわれすぎず……

 我が子を信じるということは「子どもが間違ったことをしないと信じる」ということだけでなく、「紆余曲折があっても、最後には自分にとって良いものを選べると信じる」ということでもあります。子どもは、友だちの振る舞いや、見聞きした物事をいろいろ取り入れ、自分でやってみて、結果と照らし合わせて精査し、自分らしい在り方を探っていきます。周囲からのフィードバックを軽視せず、だからといってとらわれることのないよう、子どものチャレンジが安全であるよう見守っていきましょう。

Vol.90 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年7月号掲載

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