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子育て相談 Vol.92
“父親のしつけ”
- 細かい夫のしつけの仕方が気になります……。
- 休日、息子(小5)が所属する野球チームのコーチとして指導にあたる夫は、家でも指導に余念がありません。家事もよくしてくれるのですが、いろいろ気づく分、口うるさい。息子の腹痛(過敏性腸症候群)は、夫がストレス源に違いないと思っています。息子は夫の小言が始まると自室にさっと入るのですが、夫はその態度にますますかっとなる……といった日々です。反抗期のよくある光景なのかもしれませんが、体調に影響しているだけに心配しています。何か対処したほうがよいでしょうか?
先生の回答
まずは夫婦でじっくり話してみましょう
“反抗期の光景”は“成長の姿”ととらえてOK
小学校の高学年になるころ、子どもは思春期にさしかかります。幼かった時期とは違い、子どもが親との間に壁を作りはじめます。この壁は、子どもが大人になっていく上で重要な役割を担います。親から離れ、親に寄り添っていた生活から、自分自身と向き合い、自分の考えはどうか、自分の価値観はどうかを確かめ、親とは違う個人としての自分に出会う、すなわち、アイデンティティーを確立していくのです。
このプロセスは子どもの健全な成長のために必要なものです。お父さんの小言が始まると、さっと自室に引き上げてしまう「反抗期のよくある光景」は、まさにこの思春期の子どもの、親の考えをそのまま鵜呑みにすることをやめ、自分の考えや自分の価値観に沿って行動し始めようとする、成長の姿です。いい感じに成長しているととらえてください。
“フェアな会話”なら子どもも楽しい
同時に、この時期はまだまだ親から受ける影響も大きく、親との会話の中で子どもは多くを学びます。親が自分を一人の人として、フェアに会話をしてくれれば、子どもは親との会話を楽しむことができます。ところがその内容が、子どもに対する攻撃や叱責、批判となると、当然ながらその会話を楽しむことはできません。親との時間を避けるようになるのは当然でしょう。これは子どもに限ったことではなく、大人でも同じです。自分を批判したり、攻撃したりする人との会話は避けたいですよね。お子さんの気持ちを大切に、彼の心を育てるつもりで、日常の会話を意識してはいかがでしょうか。
思っていたよりもずっとわかりあえるもの
そして、お父さんはいろいろ気づいて口うるさい方だということですが、それが本当にお子さんの腹痛の原因かどうかはわかりません。そうかもしれませんし、別の精神的、あるいは身体的な理由があるかもしれません。お母さんのほうで、お父さんの口うるささが腹痛の原因だと決めつけてしまうと、今度はお父さんとお母さんのコミュニケーションが難しくなる可能性があります。
お父さんはお子さんの野球チームのコーチとして活動しておられるということです。恐らく、お父さんなりに、お子さんに対する愛情があってやっているのでしょう。その愛情をより伝わるようにするために、まずはお母さん自身が、お父さんと二人で、じっくり話してみてはいかがでしょうか。これは、何かの結論を出すための会話ではありません。お二人でゆっくりできる時間の中で、生活のこと、お子さんのこと、お二人の理想を話せる時間を設けてはいかがでしょうか。お互いの考えを理解するきっかけになります。気持ちや考えを言葉にしてやり取りしていく中で、これからどんなことをしたいと思っていて、今どんなことが気になっているのかを共有することで、お互いにサポートしあえる部分や、変えていく部分が見つけられるかもしれません。
ある女性が、そういう話をする勇気がない、と言ったことがあります。夫婦の会話をする勇気がない?と聞いていくと、彼女が自分の中で感じていることを言葉にして、誰かと対話することへの苦手意識があることがわかりました。そのような気持ちを持っていることもあるかもしれません。「こう思う」「こうしたい」と伝えても、相手と性格や考え方が違うと、「私はそう思わない」と言われるかもしれない、そのことを恐れるのです。その女性は、ちょっとの勇気を出して話し始めたところ、すべての意見がぴったり合うわけではなくとも、思っていたよりずっとわかりあえることを見つけました。今では食事中の夫婦の会話が弾み、一人息子もよく会話に参加するそうです。
今後、思春期を迎えるお子さんを、お父さんとお母さんの二人三脚でサポートできるように、まずはご夫婦の相互理解を進めてみませんか。
Vol.92 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年9月号掲載