子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

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子育て相談 Vol.94

今月のお悩み

“意見が言えない”

〝自分の意見〞を言えません……。
 小学6年の男子です。〝自分の意見〞を求められて行き詰まってしまうシーンを最近よく見かけ、気になっています。授業中や課題はもちろん、友だちといるときでも、常に誰かの意見に合わせているようで……。姉が二人いる末っ子ゆえかなとは思いますが、このままでは、不安です。
 日頃から家庭などで心がけたほうがいいことなどアドバイスお願いします。

先生の回答

小学生では自然なこと。徐々に「自分」が見えてきて、
考えを言葉にし、意見をまとめられるようになります。

 アクティブラーニングの重要性が注目される中、小学生にも主体的な発信や対話の力が求められるようになっています。たしかに自分の意見を言えるというのは大切なことですが、子どもにとって、大人が思うほど簡単なことではありません。
 まず、小中学生ぐらいの年齢ではそもそも、大人ほど明確な「自分」を獲得していません。小さな子どもは、親の考えや先生の教えること、他の子どもの言うこと、様々なメディアで触れる物語や作品の中の言葉や態度など、無数で雑多な「ありかた」に触れ、思春期ごろから徐々に「“私”はこんな感じ」「これが自分なんだ」という感覚を手に入れていきます。小学6年生はまだ思春期の入り口です。「感覚」「感情」「好き嫌い」はありますが、大人が言うような意味での「自分の意見」を持っていないのは、ごく自然な発達です。
 自己主張の強い子であれば、「自分」の感覚が育ち切っていなくても、ああしたい、こうしたいと、口にしてみることがあります。お子さんの場合、末っ子という環境のせいか、もともとの気質のせいかはわかりませんが、自分の主張を通そうという気持ちがあまり強くないのかもしれません。そのような子が、しかるべきタイミングで自分の意見をもち、それを言えるようになるために、家族にはどんなサポートが可能でしょうか。

家庭のサポート1

自分で選ばせるようにする

 まずは「自分」の確立をサポートするために、いろいろな選択をさせましょう。服や文房具を買うとき、外食するときなど、自分のものは自分で選ばせましょう。たくさんの選択肢の前でゆっくり悩む時間があると良いですが、難しければ「色はどっちがいい?」「肉か魚、どっちがいい?」というところから始めていきましょう。自分で選んだものを手に入れてみて、しっくりくるとか違うとかいう体験をくり返すことで、徐々に「自分」が見えてきます。

家庭のサポート2

感想をどんどん聞く

 さらに、何かを評価し、言葉にする体験も役に立ちます。いろいろなことについて感想を聞きましょう。「あのシャンプーはどんな匂いだった?」「その漫画はどんなところが面白いの?」「あなたはその服が好きだけど、他の服とどんなところが違うの?」などなど。食べ物やコンテンツのおすすめを聞くのも良いですし、行きたいところややってみたいことについて説明を求めるのも良いでしょう。言葉にしてみて、まさにこれ!という感覚が得られることもあれば、なんか違うんだよな…と違和感をもつこともあります。この積み重ねで、徐々に考えを言葉にする力が育っていきます。

家庭のサポート3

主張の裏側の気持ちを引き出す

 そして、子どもが何かを主張してきたら、「なぜそうしたいのか」を言葉にするよう求めましょう。この時気をつけたいのは、たとえば「ハンバーグ食べたい」に「なんで?」と返すと、断られたと思って黙り込んでしまうことがある、ということです。主張の裏側にある考えや気持ちを引き出すテクニックとして、いったん主張を復唱して受け取るというオウム返しのテクニックがあります。子どもに「ハンバーグ食べたい」と言われたら、親は「ハンバーグ食べたいのね」と返します。うまくいけば、復唱して少し待つだけで「このあいだ給食でね、ハンバーグが出たんだけれど……」というふうに、続きを話してくれます。うまく続かなければ、「はい・いいえ」では答えられない質問、たとえば「どんなハンバーグ?」「どういうソースで食べるの?」「いつ食べたいの?」などと投げかけることで、話を広げやすくなるでしょう。

家庭のサポート4

最初に発言させる

 家族で何かを決めるとき、あまりしゃべらない子の意見を最初に言わせてしまう、という手もあります。あまり自己主張しない子にも話せるように、決める前にはブレインストーミングの段階を用意するとよいでしょう。「夕飯何がいい?」と言ったときに、誰かが「カレー」と言ったら、「いいね、他にどんな案がある?」と、どんどんアイデアを出すよう求めてみましょう。「○○が食べたい」よりも「チャーハン、から揚げ、オムライス……」と列挙するほうが簡単ですし、意見を言うことで他の人に影響を与える経験ができます。うまく意見の言えない子は案外、いろいろなアイデアを持っています。うまくアイデアを引き出して、時々その背景を語らせることで、徐々に意見をまとめるのがうまくなっていきます。

Vol.94 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2022年11月号掲載

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