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子育て相談 Vol.99
“相談ごと”
- 「先生に言わないでね」と言われていたのですが……。
- 小6の娘から、クラスの友だちの困ったふるまいについて相談を受けました。「先生に言わないでね」と言われていたのですが、他の子も困っているようだったので、こっそり先生に相談してしまいました。先生は、私から聞いたとわからないように話してみると言ってくださったのですが、娘は気づき、「もう信用できないからこれからは相談しない!」とすねてしまいました。娘にどう声かけすべきでしょう?
先生の回答
言い訳せず、誠実に謝るしかありません。
“子どもの手本”であり続けるべく、がんばりましょう
思春期の子どもの心は大人が思うよりずっと複雑
小学校6年生にもなると、子どもは思春期に入り、親より友だちとのつながりをより強く求めるようになります。この時期の子どもたちは一般に、同年代の友だちとグループを作り、大人や他のグループの人にはわからない共通の話題で盛り上がったり、秘密を共有したりして、心を通わせるものです。この友だち付き合いの核にあるのは「私たちは似ている/同じ」という同質性ですが、同時に、自分と友だちの違いにも気づくようになります。一人ひとりが、友だちとの間で友情をはぐくみながらも、自分と友だちを比較して、「あの子は○○できるのに私はできない、あの子のほうが○○だ……」と劣等感をもったり、逆に、「私は友だちの中で一番○○だ」と優越感をもったりします。このくり返しの中で徐々に、自分の価値観に気づいたり、性格を理解したりして、アイデンティティを確立していくことになります。子どもにとって友だちは、自分自身を見つけるための物差しのような、鏡のような存在なのです。
ですから、友だちはとても大事な存在であり、友だちとの関係に悩む子どもも多くいます。友だちが、自分の心を占める割合が高いほど、友だちとの間に問題を抱えたときの悩みは深くなります。私たち親は、そんな子どもの心理をよく理解しておくことが重要ですね。子どもの心は、大人が思うよりずっと複雑なのです。
先生に言わざるを得ない理由を伝え理解と納得を求める
友だちの困ったふるまいに対して、お子さんは葛藤したことでしょう。「なぜ?」「どう理解すればいいの?」「どう対応すればいいの?」そんな思いだったのではないでしょうか。この問題の相談相手として、お子さんはお母さんを選びました。信頼するお母さんならどんなアドバイスをくれるだろう、そう考えてのことだったでしょう。
お母さんとしては、学校のお友だちのことだし、他にも困っている人もいるのだから、先生に相談したほうがいいと、善意で判断したのだと思います。ですが、お子さんの考えは、恐らくそうではありませんでした。もしお子さんがその葛藤を学校での問題として処理したいと思ったら、きっと先生に相談したと思います。でも、お子さんは先生ではなくお母さんを選んだのです。つまりそれは、お子さんは自分の心の問題として、より自分の心に近いところにいるお母さんに助けを求めたのです。思春期にさしかかった子どもにとって、友だちとの間のことを大人に相談するというのは、特別なことです。お母さんはお子さんに信頼されているということです。
お子さんが、「先生には言わないで」と言ったとしても、話を聞いたところで、親としてはこれは先生に言わざるを得ないと判断することもあるかもしれません。その場合は、まずそのことをお子さんと話し合うべきでした。「あなたは先生に入ってほしくないと思っているようだけど、お母さんはそういうわけにはいかないと思うの。というのはね……」と、はっきり理由を説明して、子どもの理解と納得を求めるべきでした。
これは、お子さんを一人の人として尊重することでもあります。たとえご自身の子どものことであっても、「言わないで」と口止めされたことを、本人の了承を得ずに話してしまうというのは、軽率だと言わざるを得ません。この軽率さに関しては、謝るしかありません。言い訳せずに誠実に謝ることです。その誠実さが伝われば、お子さんは許してくれると思います。またこれまでのように、相談してくるかどうかはわかりませんが、もともと信頼関係のある親子です。この一件に関しては許してくれるでしょう。
そして、その後が大事です。今後、お母さんが継続的に誠実な姿を見せることができれば、お子さんとの関係も修復されていくことでしょう。これからますます難しい時期を迎えるお子さんにとって、いざという時に親に相談できるというのは、大変心強いものです。ぜひお子さんとの関係をより良いものにできるよう、子どもを一人の人として尊重し、子どもからの信頼に感謝し、「あんな大人になりたい」と思えるような存在であってください。子どもの成長に合わせて、親にも成長が求められます。がんばりましょう。
Vol.99 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年4月号掲載