子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

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Vol.11 今から、読み解く力を身につけましょう

タイトル

読解力は、人生を生き抜く力

「読解力のある子に育ってね」
これからを生きるお子さんにはこう言いながら育ててあげてほしいですね。小さい頃から、「読解力、読解力、読解力」と念仏のように言い続けてください。

読解力というと、狭義には国語や英語のテストで採点される力の一つで文章を読み解く力のことですが、私の言う読解力とは、もっと広くもっとフレキシブルな力です。

なぜ私がここまでしつこく読解力と言うのかというと、この力があると、もれなく素晴らしい特典がついてくるからです。

それはズバリ、この世を生き抜く力です。

読解力は、あらゆる機会をうまく乗り越えていくための力の素となって、その子の人生をバックアップしてくれます。

というのは、読み解く力があると、物事を多面的にとらえることができるようになるので、他人を深く理解できます。必然と自分の懐も深くなり、寛容にもなれるでしょう。人の気持ちがわかるようになるのです。これを「共感力」と言います。

たくさんの情報の中から何が大切なのかを判断してまとめる「要約力」もつくし、その内容を伝える「伝達力」もつく。それに基づいて人と意見を交換できる「コミュニケーション力」もつきます。

これらはすべてそのまま、生き抜く力につながります。今の世の中は、何かを読み解く力が非常に大きな比重を占めていて、読解力を持っていれば、たいていの仕事や人間関係がうまくいくようにできているのです。

読解力は、仕事力にも欠かせない

読解力は、今のような知識社会では必須の力です。今は一人が処理しなくてはいけない情報量が莫大です。それをさっとつかみ取るのも読解力です。一人でいろいろなことを企画できないと、仕事ができる人とは言われなくなっています。昔は、指示された仕事をやるだけでもよかったのかもしれませんけれど、最近では自分で生み出していかないといけません。

何人かで集まってアイデア会議みたいなのをやるとします。そのときに次々にアイデアを出すためには、ほかの人が今何を考えているのかというのをさっと察しながら、適切に次の言葉を発していかなくてはいけない。会議ですから、基本的には何かを決めることも大事なんですけれど、人の気分を害さないことも大事。相手の感情を理解しつつ、空気を読みつつ、でも自分の意見はきちんと言う必要があるということです。

この、その場その場を読み解く力、そのとき必要な意味をすばやくつかまえる力は運動神経みたいなものですが、これも読解力の一つで、これがとても大事なんです。仕事レベルでのやりとりを円滑にするためには、大前提として読解力がないとコミュニケーション自体が難しくなります。

なのに、この意味の取り間違いというのが実によくある。これは、あきらかにお互いの読解力不足が原因です。諍いやトラブルは、学校や社会、家庭によってさまざまかもしれませんが、「読解力さえあれば防げたのに……」や、「読解力さえあればもっとうまくいくのに……」ということが大半なんです。

でも、これは持って生まれたものではなく、これまで訓練してきたかどうかなんです。実力をつけるには練習が必要ですから。ボールをバットの芯にきちんと当てるように、言葉の芯をとらえるには、まずは練習です。けれども大人になってから初めて練習するのでは、遅いんですね。スポーツと同じでなかなか上達しません。

だからこそ、この力を身につけるには、早ければ早いほど力に磨きがかかるし、その先の人生がうまく回るようになるのです。

小学生から始めよう!

では、いつからがいいのでしょう? 私は小学生からがいいと思っています。

小学生は、母国語の語彙が、話し言葉から書き言葉に移行する時代です。言い換えると、しゃべるだけでなく読むことが要求される時代です。書き言葉は、読むことによって初めて身につきます。

なぜかと言えば、日本語の語彙はほとんどが書き言葉にあるからです。日本語は書き言葉によって発達してきた言語です。とくに日本語の場合、漢字が思い浮かばないと話の意味が聞き取れないということが多い。たとえば、「今年度の実質的成長率は」という言葉は、これを平仮名で聞いている人は意味がわからないですよね。「じっしつてきせいちょうりつ」って何だ? となってしまいます。混乱してしまうというか、意味がわからない。

漢字で「実質的」と「成長率」と書き、それがどういう意味かがわかっていて、初めて話を聞くことができるのです。つまり、言語能力を高めていくためには、書き言葉を大量に仕入れる必要が絶対的にあるんです。

それが読むということですね。幼稚園ぐらいまでは話す、聞くが中心ですけれど、小学校に入ったら、今度は読むということを中心にして、話す、聞くが始まります。そこを磨いてこそ、小学校の6年間で、話す、聞くのレベルがどんどん上がる。だから、読むことを学び始める小学生時代に、それと一緒に読解力をつけてしまうと一番効率がいいのです。

私はいろいろな仕事をしてきましたけれども、自分の仕事のほとんどは読解力でできているんだなとしみじみ思います。そしてその多くが、小学生のときの国語力で培われたんだなとも。私はとても国語が好きで、物語を読み解くことが大好きでした。そのときの先生も、深く読むことを教えてくれる方でした。

今、仕事をしているときに考える作業やコミュニケーションの際の作業が、このときやっていたことと、とても近いと感じています。これは国語の読解よりも、視野としてはもっと広いものではありますが、その基礎は小学生にあり、というのは本当です。

だからこそ、小学生のうちに大量に本を読んで、書き言葉をくり返し浴びてほしいのです。書き言葉の語彙を大量に仕入れて読解力を磨いておいてほしいのです。その後の勉強も人生もグッと変わってきます。なんといっても、小学生のうちにこの世を生き抜く力を身につけられるんですから。

vol.11 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2020年4月号掲載

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