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Vol.18 いい遊びが子どもの能力を育みます

タイトル

子どもの「遊び」を考える

日本は「おもちゃ天国」です。最新テクノロジーを駆使したおもちゃ、人気キャラクター関連のおもちゃ、何世代にもわたってロングセラーを続けている王道的なおもちゃ、昔懐かしい素朴なおもちゃ……多種多彩なおもちゃがあります。

さらに最近はスマートフォンやタブレット端末を使うゲームも次から次へと出てきて、選び放題。「遊び」の幅は、かつてない広がり方をしています。

そもそも、「遊び」とは何なのでしょうか。ひと言でいえば、「子どもに生きていく力をつける」ためのものです。子ども時代にどんな遊びをしてきたかは、その人の「コア」の形成に大きな影響を与えます。

楽しくおもしろく遊べればそれでいいわけではなく、遊んだ経験が、これから社会を生き抜くうえで、その子を下支えするようなものになること。そういうものが、本当にいい遊びだといえるでしょう。ですから、ただ子どもの欲しがるおもちゃを買ってあげるのではなく、そのおもちゃを買い与えることの「意味」をきちんと考えたほうがいいのです。

それと同時に、「いいおもちゃを買い与えたらそれで安心」ではなく、おもちゃを媒介に、「大人が子どもの遊びにどこまで積極的に関わることができるか」も非常に大きな意味をもつことを忘れてはいけません。

いまの時代、どこで生きていくにしても、コミュニケーション力が不可欠です。コミュニケーション力というのは、大人になってから躍起になって身につけようとするよりも、子ども時代に遊びの中で培っていくのがいちばんいいのです。たくさんの大学生を見ているとよくわかりますが、いい「遊び体験」をたくさんしてきた人は、間違いなくコミュニケーション上手になります。

遊びとのいい関わり方を大人が主導して教えてあげることが、その子のコミュニケーション力を左右するといえるのです。遊びは、人と人を笑顔でつなげる重要なコミュニケーションツールであり、強力な絆醸成グッズなのです。

子どもを取り巻く遊びのあり方が様変わりしていくなかで、子どもの成育にとって、遊びが、どんな意味をもつかをあらためて見直して、子どもにとって良好な遊び環境を整えてあげてほしいと思います。

進化したおもちゃと「遊ぶ力」

いまはおもちゃの種類が本当に多彩です。最新ハイテク玩具の開発は目覚ましいものがありますし、子どもに人気のキャラクター関連のモノも数多あります。一方、昔からあるアナログなおもちゃも、アイデアの工夫が凝らされて、どんどん進化し、質や精度はますます高まっているような気がします。では、子どもたちの「遊ぶ力」はどうか。おもちゃが高性能化している一方で、子どもたちの「遊ぶ力」は、昔に比べると衰えているのではないか︱私にはそう思えます。

あまりに完成度が高いため、子どもたちが想像を加えにくいという側面もあると思います。強い刺激のあるものばかりに接し、次から次へと新しい刺激を浴びることばかりを求めるため、退屈な中から自分で楽しみや喜びを見出す力が育ちにくくなっているのです。

退屈な時間を実りある時間にしていく力こそ、いまの子どもたちに求められています。おそらくこれから必要とされる学力というのは、「主体的な思考力」です。ある教科が得意だ、テストの成績がいいといったことよりも、この状況で何ができるかを自分の頭で柔軟に考えていく力。そういう発想力で、自ら遊びを作る力です。この主体的な思考力とは、そのまま「仕事力」に置き換えることができます。仕事を与えられるとまじめに一生懸命やる、そういう人も必要です。しかし、いまいる環境の中で、自分で仕事を見つけ出して、おもしろがれる人のほうが、仕事力が高い。就活では、間違いなく後者が選ばれます。主体的な思考力、クリエイティビティというのは、就活を控えた年齢になってにわかに身につけられるようなスキルではありません。むしろ生き方の姿勢です。それは、子どものころから、どんなふうに遊んできたか、その積み重ねで変わってくるのです。

対人関係も社会のルールも遊びから学べる

遊びには、「社会性を培う」という大切な役割もあります。たとえば、他の子とおもちゃの貸し借りができるとか、自分の順番を待てる、といった行動は、社会性が備わることでできるようになることです。

とくに、言葉という手段を使ってコミュニケーションが取れるようになることで、相手との関係を良好にできる。「貸して」「いいよ」と伝え合うことができると、気持ちのいい交流ができる。小さな子どもでも、コミュニケーションがうまく取れれば気持ちがいいわけです。そこから「代わりに、これ貸してあげる」とか「じゃあ一緒に遊ぼう」と次の関わりにつながっていきます。

子どもがコミュニケーションの大切さを最初に知るのが、遊びの共有なのです。人間は何かの社会に属さないと生きてはいけません。「他の人たちとうまくやっていく能力」は、どこに行っても必ず求められます。

「遊ぶ力」こそ生きる力

「遊びたい」という欲求、「もっと楽しくなるにはどうしたらいいか」という工夫、ワクワク感、祝祭感。遊ぶことの中には、人生を豊かに楽しむ秘訣がつまっています。

子どもの本質は、遊ぶことです。「遊びきったなぁ」と幼少期を思い返すことのできる人は幸福です。大人の役割は、こうした遊ぶ力が育つ環境作りをしてあげることです。遊ぶ子どもの声を聞くと、自由にならない大人の我が身も動かされる。大人の身にも子どもの頃の遊ぶ自分が生きていて呼応してしまうのです。遊んだ経験は消えることなく、一生身のうちに残ります。

高齢になってもの忘れがひどくなっても、子どもの頃に覚えた歌は忘れない。子どもが遊んで過ごす「時」は特別な価値があるのです。何でも遊びにしてしまう、いわば「遊び化力」の高い人は、仕事もクリエイティブです。仕事を遊びのように、真剣にワクワクしながらやる。ストレスもまた遊びの重要な要素と捉えてしまう。一流の人とたくさん出会うたびに、この「遊び化力」を感じます。

現代では、パソコンやスマホのゲームが発達しています。こうしたゲームの中にもすぐれたものがあると思います。ゲームで三国志に詳しくなったという大学生もいます。「どんなゲームがいいのか」について親も関わって「これならOK」というもので楽しく遊ぶ。こうした選択力が問われる時代です。

家族で昔なつかしいボードゲームをやりながら会話するのも楽しい時間です。子どもと遊べる時間はそう長くはありません。貴重な「遊びの時」を存分に味わってほしいと願っています。ぜひ、今年のお正月は、古来から続く遊びで盛り上がってみてください。

vol.18 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年1月号掲載

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