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Vol.20 情報読解力は現代社会に適応するための力です

タイトル

メディアに惑わされない「情報読解力」

昨今、メディア・リテラシーという言葉が時代のキーワードとしてクローズアップされています。学校教育の現場でも「メディア・リテラシー教育」が掲げられています。「リテラシー」とは本来「読み書きする能力、識字能力」の意味。そこから派生した「メディア・リテラシー」とは、テレビ、新聞、インターネットといったあらゆるメディアの情報をしっかりと読み解き、真偽を見極める能力、つまりメディア情報の読解力のことを指します。

とくにインターネットの普及を境にメディアの多様化が進み、私たちは常にあらゆるメディアに接して、そこから発せられる膨大な情報に取り囲まれながら生活しています。ただ、世の中にあふれる情報は、そのすべてが正しいとは限りません。そこにはまったくのうそやデタラメ、根拠のない情報、誇張や偏りのある情報など、不確かで怪しい情報も数多く混在しています。そうした時代を生き抜くために、これまで以上に正しい情報を識別し、適切に判断する能力=メディア・リテラシーの必要性、重要性が高まっているのです。

ネット情報は「まず疑う」というスタンスで

現代社会のメディア・リテラシーを語る上で、とりわけ重要なのが「インターネット上の情報」との向き合い方でしょう。必要な情報がいとも簡単に手に入るという意味で、インターネットがこの上なく便利なメディアであることには異論はありません。ただ、常に意識しておかなければいけないのは、インターネットから得られる情報は「玉石混淆」だということです。専門家や学者先生が発信している正確で有益な情報から、その辺の誰かが適当に書き込んだ根拠のない情報、さらには意図的に捏造された情報まで、十把一からげでごちゃ混ぜに存在しているのがインターネットの世界です。そこでは「玉」よりも、むしろ「石=間違った情報」のほうが多いかもしれません。

また、そうした「石」の情報ほど独り歩きしやすい傾向があります。ネットの世界では何の根拠も確証もない誤った情報(デマ)が瞬く間に不特定多数に拡散し、収拾がつかなくなるといった状況が珍しくありません。グリム童話『ハーメルンの笛吹き男』のように、吹き鳴らされた笛(=流された情報)につられて、判断力のない子どもたち(=鵜呑みにしてしまう人たち)が群れになってついていってしまう︱︱そんな現象が起こり得るのです。

2016年の熊本地震の発生直後、ツイッターに「動物園からライオンが放たれた」という一文がライオンの画像とともに投稿されました。この投稿はたちまち多くのリツイートによって拡散し、動物園や警察に問い合わせが殺到。ところがこの投稿はまったくのデマで、ライオンの画像も無関係な写真だったのです。最終的に投稿者は逮捕されたのですが、実に多くの人がうそのネット情報に翻弄されてしまったわけです。

膨大かつ玉石混淆で、正しい情報も愉快犯的な悪意あるうそ情報も、何もかもが同じ土俵に上げられてしまう。そして、私たちは自分自身で、情報の真偽や正誤を判断して取捨選択しなければなりません。手軽に、簡単に情報が入手できる時代だからこそ、それが「玉」なのか「石」なのかをしっかり見極めるために、冷静になって能動的に真偽を判断・読解するスキルが求められるのです。

違和感センサーを研ぎ澄ます

ネットに限らず、あらゆるメディアが発する情報を読み解くメディア・リテラシー(情報読解力)には、二つの重要なプロセスがあります。一つは「まず疑う」こと、二つ目が必ず「裏を取る」ことです。

一つめの「まず疑う」は、月並みな言い方をすれば「情報を鵜呑みにしない」ということ。そのためには目の前の情報に対して常に批判的な視点を持っておくことが大切になります。そのとき大事にしたいのが、その情報を前にしたときの「何だか怪しい」「どこかしっくりこない」「話ができすぎていないか?」「都合が良すぎはしないか?」︱︱ という感覚、つまり違和感です。

違和感を察知する「違和感センサー」を研ぎ澄まして、少しでも引っかかりを覚えた情報に対しては、まず疑いの念を持って向き合い、そのままでは信用しない。これが情報の真偽を読み解くメディア・リテラシーの基本姿勢になります。疑わしきは信じない︱︱この意識を持つことが、ネットという海で「石」をつかまないための基本の防衛策になるのです。

そして、二つ目は根拠のない不確かな情報は、必ず「裏を取る」。違和感センサーが反応した疑わしい“推定有罪”の情報は信じない。鵜呑みにして発信しない。これがメディア・リテラシーの基本です。では、そうした不確かで疑わしい情報を前にしたとき、どのようにしてその真偽を見極めればいいのでしょうか。答えはシンプルかつ明快。その情報を、多角的かつ徹底的に調べてみることです。つまり、情報の「裏を取る」のです。「裏を取る」とは、情報の真偽を識別できる証拠を集めて事実関係を確認すること。容疑者の不確かな供述の裏を取る刑事のように、不確かな情報があったら事実関係を徹底的に調べて真偽を確かめる。そして、裏が取れた(正しいと判明した)情報以外は信用しない。これがメディア・リテラシーのもう一つの基本姿勢になります。

言葉の真意を読み解けるように

今や一億総発信時代。世の中には、一部だけを抽出されて前後関係を失い、本来の意味合いが変わってしまった「単体の言葉」があふれています。こうした言葉と向き合ったときにも誤解せず、曲解もせず、冷静に隠れた真意を読み解ける能力、それこそが現代人に必須の情報読解力なのです。

「昭和、平成、そして令和と、時代は進み、世の中はますます高度情報化の一途をたどっています。メディアは多様化し、情報を取得するツールは日々進化しています。私たちにとって、「言葉」を、言葉の集合体としての「情報」を正しく読み解く力は、現代を生き抜く力と言っても過言ではありません。

vol.20 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2021年3月号掲載

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