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Vol.3 「学び続けることを学びましょう」

タイトル

好きを見つけよう

人は、なんのために勉強するのでしょう? その答えは、ズバリ「自分の好きなことを見つけるため」です。勉強すると知識が増え、自分の世界も広がります。すると好きなこと、時間を忘れるぐらい熱中できることに出会うでしょう。

好きなことを見つけると、それについてたくさん知りたいとか、上手になりたいとか思います。そのときに、国語で身につけた理解力や、算数で身につけた根気よく計算する力や、理科の実験で身につけた観察力や科学的なものの見方、体育で身につけた体力やチームワークなど、学んだいろいろなことが役に立つのです。

砂場で山を作ったときのことを思い出してみてください。土台を大きく作らなければ富士山のような高い山は作れません。土台をどれくらい大きくしっかり作るかで、山の高さは決まります。ですから、まずはしっかり学ぶ、知識や技能を習得することが大切なのです。

その土台の上で、自分が好きなことに興味をもって突き詰めて、世界に認められた人たちがいます。「ノーベル賞」の受賞者たちです。こうした人たちは、天才で自分とは住むところの違う人、と思ってしまうかもしれません。ところが、ノーベル賞を受賞した立派な博士たちの出発点は、私たちと同じ、身近なものに対する好奇心だったのです。

例えば、ノーベル化学賞を受賞した野依良治博士は、中学時代に、食器を洗うスポンジの材料であるナイロンが、水と石炭と空気でできていると知って驚きます。水と石炭と空気から、まったく違う物質を作り出す、化学はすごい! と感動したそうです。それから化学の知識・技能を身につけ、その知識を基に朝から晩まであーでもない、こうでもないと試行錯誤し、研究に明け暮れます。そしてついに、ノーベル賞学者として認められたのです。

学ぶことの意味

今、明治大学の私のゼミには、40歳代の社会人の女性がいます。彼女を見ていると、「学ぶことは素晴らしい」と明確に自覚していることがわかります。彼女が非常に熱心に学ぶので、他の若い学生たちにもいい影響が出てきています。学びが本来持っている価値を理解できるようになってきているようなのです。

勉強を続けていると、自分にとって楽しくて心地よい勉強がなんなのかが、だんだんわかってきます。楽しく勉強できるようになると、将来、大学で研究を続けていくときや会社で仕事をするときなど、なにを目標に立てたらいいのか、それを達成するためにどうすればいいのかがわかるようになります。

自分がやりたいという気持ちをもてて、楽しく心地よく続けられる研究や仕事を見つけられたら、それは生きがいを見つけたということです。さらに、その研究や仕事が、他の誰かから感謝されたり期待されたりするものであったなら、それ以上の幸せはないでしょう。そうしたやりがいのある研究や仕事を長く続けていくために必要なものが勉強、学びなのです。

研究や仕事に限らず、好きなスポーツや習い事をしていても、壁にぶつかることや、新しいことに挑戦しなければならないときがあります。でもそんなとき、学ぶ習慣が身についている人は、上手に難問を乗り越えていけるでしょう。なぜかというと、そういう人は、難しい研究や新しい仕事を乗り越えていくための訓練ができているからです。

壁を乗り越えたり、新しい挑戦をしたりするときに必要な、我慢強さや工夫する知恵は万能なのです。

時代が変わっても変わらないもの

今から約20年前、文部科学省は、子どもたちにじっくり考えさせることを目的に、2002年度から本格的にゆとり教育をスタートさせました。学校は土日が休みになり、授業日数が少なくなりました。各教科書の内容も減りましたが、その一方で、「総合的な学習の時間」がつくられました。子どもたちが、教科にとらわれずに自分で課題を見つけて、解決に取り組むようになることを目指したものです。

しかし、数年後子どもたちの学力低下が問題にされるようになりました。すると今度はゆとり教育の見直しを求める意見が強まり、小学校では、2011年から再び授業日数を増やすことになりました。そして、2020年、新たなる教育改革が進められます。

文部科学省のお偉い方々も勉強が子どもたちの将来に役立つものであってほしい、そう願っているのですが、二転三転しているのも事実です。時代変化が激しい今、これから先のことは誰にもわかりません。

それでも、勉強の目的は「自分の好きなことを見つけること」です。このことはずっと変わりません。勉強をすると、好きなことに出会います。好きなことに出会うと、もっと知りたくなって勉強する。そして、好きなことが広がります。勉強は必ず好きなことにつながっているのです。

まったく関係がないと思ってやるよりは、好きなことにつながると思って勉強するほうがはかどります。そうして勉強をすることの楽しさ、大切さを知ってほしいと思います。生きていくということは、学び続けるということでもあるのです。

vol.3 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2019年3月号掲載

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