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Vol.46 「憲法」は不安な社会を照らしてくれる「灯り」のような存在です。

タイトル

「憲法」を見つめ直してみませんか

 みなさんは、「憲法」について考えたことがありますか?「国が決めたものなので、普段の生活には関係ない」「大切なものなのはわかっているけれど、結局のところ何だか難しそう」と、重要だけれど、自分の生活からは遠い存在だと感じ、意識したことのない人がほとんどでしょう。
 ですが実際には、憲法は日々、生活にかなり近い場所に存在しています。たとえば、SNSで結びつく人々の間で起こる、個人情報に関する問題。ウクライナがロシアに侵攻された事実。これらにも「憲法」はかかわっているのです。
 もっと言えば、人が生まれてから成長し、学校に通い、就職して家庭を持ち、社会で働き、年金を受け取り、一生を終えるまで……「憲法」は、人生のどの場面にも登場してきます。
 「憲法」は「人権」――つまり、私たちの権利を常に守るものだからです。「憲法」を知ることは、私たちがどんな権利を保障されているのかを知ることでもあるのです。
 一方で「憲法」は、日本がこの先どのような道を歩むかにも、かかわっています。天皇制をどう維持していくか、他の国で争いが起こったときどう行動するか。国として、このような大事な決定をする際の指針となるのも、「憲法」の大切な役割の一つです。
 憲法がわかれば、今の社会がわかり、日本がわかり、そして世界がわかるでしょう。つまり、私たちの生きる方向性を示す「羅針盤」の役目を果たしてくれるのです。だからこそ、憲法についてよく知らないまま人生を送ることは、非常にもったいないと私は感じるのです。

憲法と法律はどこが違う?

 まずは「憲法とはそもそも何か」。憲法とは、簡単に言えば「国のあり方を定め、それを動かしていくための根本のルール」です。国を動かしていくための「決まり(法)」には、憲法の他にも「法律」や「条例」など、様々なものが存在します。よく耳にする「法律」。これは国会でつくられ、その法が扱う分野ごとに「民法」「刑法」「個人情報保護法」「会社法」「消費者契約法」などと分かれています。また、命令として内閣が定める「政令」、国務大臣が定める「省令」、地方公共団体(地方自治体)が定める「条例」などもあります。その他、外国と結ぶ「条約」も法の仲間です。個々の例としては、会社法施行令(政令)、会社法施行規則(省令)、東京都都税条例(条)、外国関係に関するウィーン条約(条約)などが挙げられます。これらはたしかに、どれも同じ「決まり(法)」ですが、そのレベルは同じではなく、順位があります。
 そして、憲法はこれらの最上位に位置するもので、最高法規と呼ばれます。
 したがって、憲法の下にあるすべての法律において、仮に「憲法で言及されている事項と合わない内容がある」と裁判所に判断された場合、それらはすべて無効になってしまうのです。
 それほど憲法は、強い力を持った法典なのです。憲法と他の法律が決定的に違うところが、もう一つあります。
 民法や条例など、憲法以外の法律の類では、国民に生じる権利・義務を定めるものも存在します。つまり、国家権力を行使する権力者以外の国民を対象にしたものが主です。一方憲法は、権力者が行ってよいことと悪いことを定めています。
 例として憲法の一部を見てみましょう。

日本国憲法

第九条(一部)

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 つまり、憲法は権力を有する者の行動に制限をかけているのです。そのため、権力者が憲法の定めから外れた行為をした場合には、その行為は効力を発揮しません。

第九十八条(一部)

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 これによって、権力者が自分に都合のよいことばかりを好き勝手に行い、国民の基本的人権を侵害するリスクを未然に防ごうとしているわけです。国家権力は、その権力を行使する者によって濫用されがちです。どんなにうまくいっている国でも、それを防ぐことは簡単ではありません。
 憲法の目的は「国民の基本的人権や自由を守ること」です。そのため、「国民のために国家権力をコントロールする」という、とても難しい、そして重大な仕事をしています。
 私たちが普段生活している中では、憲法という存在の重要性やありがたみを、頻繁に実感することは少ないかもしれません。ただ、「当たり前の状態が守られている」ことは、当然のことのようでありながらも、実はとても貴重でかけがえのないものなのです。

「賢者の書」を次世代に

 憲法は、他の法律の最上位にありながらも、同時にそれらを土台から支える役目も果たしています。もしも憲法がなかったら、様々な法律の法的な根拠が失われてしまいます。その結果、社会はまるで床と天井が崩れ落ちた廃墟のようになってしまうでしょう。
 憲法は国民の基本的人権や自由を守るためのものです。その守りが失われた社会は、弱肉強食の非常に危険な状態におちいります。つまり、強い者が弱い者を食い散らかす状態になるのです。
 無法地帯と聞いて、戦争であらゆる破壊行為、略奪や虐殺を受けた国のことをイメージする方もいるでしょう。建物は実際には破壊されなくても、私たちの暮らし、日常、そして心は破壊されてしまいます。
 戦争や未知のウイルスによる感染症、大規模な自然災害などが起こったとき、人権が守られていないと、強い者だけが生き残り、弱い者が切り捨てられていくことになってしまう。それを何とかできないだろうかと人々が考え、少しずつ積み重ねてきたものが憲法です。憲法は、人々がその時代を生きる中で、次の世代はもっとよくなるようにとバトンタッチしながらつくり上げてきた、貴重な歴史的財産です。いわば、「先人の教え」がギッシリと詰まった「賢者の書」なのです。

vol.46 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2023年5月号掲載

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