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Vol.61 「体も頭も」タフネスになりましょう

タイトル

超AI時代に求められる人

 2023年は、生成AI元年と言える年でした。対話力と創造力を備えたChat-GPTを活用する際に、本当の頭のよさが問われる気がしました。どんな質問をするか。回答をどう発展させ、現実の改善にどうつなげていくか。「頭の強さ」とメンタルタフネスが、これからの超AI時代には、より重要になってきます。
 人から話を聞いて答えたり、本を読んでその内容を人に話したりする行為は、私たちが日常行っている基本的なコミュニケーションです。しかし、誰もが同じようにしているように見えるその行為も、その中身は人によってまったく異なります。正しく聞いて、正しく返す。あるいは正しく読んで、正しく伝える。シンプルにいえば、頭がいい人はこのインプットとアウトプットが正しくできている人です。
 頭がいい人は、言いたいことを短い時間で要約し、わかりやすい言葉で無駄なく伝えることができ、また聞いている側は無駄な時間を使わず、情報を楽にインプットできます。相手の時間を奪わない、相手に迷惑をかけない人は「頭がいい」ということです。

「頭がいい人」は周囲の人を幸せにします

 頭がいい人は会話が上手ですが、それは「おしゃべり」が上手という意味ではありません。ペラペラと口が回る人を「頭がいい」と見る人もいますが、頭がいい人は情報を整理する力や要約する力、構成する力、説明する力などが備わっている人です。
 会話とは、イメージでいえば川の流れのようなものです。聞いている相手が、川にジャブジャブと入って渡って来てくれれば、こちらの意図を伝えることはできます。しかし、流れが急で、渡るのが難しいと相手が感じたなら、踏み台となる石を置いてあげることで、その人は容易に川を渡ることができるはずです。
 会話における「踏み石」とは、カギとなるワードです。キーワードとなる石を3つほど置いてあげて、その順に沿って説明することで、相手も踏み石をピョンピョンと渡るように理解できるわけです。会話ひとつをとってみても、頭がいい人はこうしたスキルを普段から何げなく使っているものです。
 こうした力を備えた人と組んで仕事をすると、そうでない人との仕事と比べ、成果は格段に期待できますし、何より仕事の最中も余計なストレスを感じなくてすみます。必然的に、職場での信頼も高まり、「あの人は頭がいいね」という評価につながるわけです。頭がいいということは、周りの人を幸せにするということなのです。

知識の上に表現力を

 ほかにも、頭がいい人というのは、物事の何が重要か、あるいは重要でないかを、自分の視点で理解できている人です。そして、この「自分の視点」を獲得しているということが、すなわち知性や教養を身につけているということにもなるのです。
 教養とは、知識を身につけることで養われる心の豊かさであり、私も、頭がいい人とはそういう人のことではないかと思っています。
 最近は大学入試の形態が変わってきました。同じ問題を一斉に解く一般入試以外に、学校推薦型選抜や総合型選抜という方法で選抜されるようになりました。いわゆる入試の多様化です。
 そこで感じるのは、受験日に向けて何年もコツコツと準備してきた学生というのは、やはりすばらしいということです。合格するためにやらなければならないことを理解し、受け止め、それを長期にわたり持続することができる人は、当然ながら粘りもあります。
 サッカーであれば、まずはボールを蹴るという基本技術がしっかりしていなければ困ります。それには、受験勉強のようにコツコツと繰り返して練習をする必要があります。そのうえでクリエイティブ性が加わると、その選手は非常に強いということになります。
 近年、教育の現場では「表現力」というものが問われるようになりました。これは思考判断といわれるものです。新しい価値を見出す知性であり、頭がいいといわれる人が共通してもっている力です。
 これを日常的に活用できているのが、たとえば数学者であり、科学者であり、将棋の棋士などもそうです。もちろん、スポーツ選手だってそうでしょう。
 今までの方法を学習して知っていて、そのうえに新しい価値を加える。つまりは、付加価値を見つける力です。「付加」とはすなわち、今までのことをわかっているということ。新たな付加価値を生み出せる人は、受験生型の努力を決して怠らなかった人でプラスαのできる人という言い方もできるでしょう。

知識から知識への飛躍が面白い

 私は脳にはジャンプ機能というものがあると思っています。ある知識からジャンプして「おぉ、これとこれがつながってる!」というところが面白い。つながりが生まれたときの驚きや感動が、知識のご褒美みたいなものだと思うのです。「これとこれがつながってる!」というときに、私のイメージですが、脳内でご褒美が、幸せホルモンがシュワっと出るような感じがしています。
 アルキメデスがお風呂で比重の原理を思いついたときに「へウレーカ!(わかった)」と叫んだのは有名な話ですが、何かがつながるひらめきやAha体験では、幸せホルモンのドーパミンが出るという研究があります。
 私の教えている大学でも、誰かが言った言葉の中のキーワードをひろって、〇〇と言えばとはじめて、隣の人が続けて話をする授業をやることがあります。そうすると、自分ひとりだけの知識ではなくて、何かがきっかけになって次の知識が出てくる。この人の話がきっかけで新しい何かが出てくる、インスパイアされて何かが出てくるというのが、学生にも好評です。
 教科書になぜ面白みがないかというと、飛躍がないから。知識から知識へのジャンプを思う存分楽しめるようになってほしいと思います。

vol.61 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2024年8月号掲載

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