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Vol.72 私たちのミッションの一歩を踏み出そう!
本来あった地球の姿へ
私たちはいま、「分かれ道」の目の前に立っています。一つめの道は、環境破壊が進み気候変動も頻繁に起こり、戦争も差別もなくならない、厳しい世界です。要するにいまと変わらない、このままの状態が続く道です。もう一つの道は、環境破壊や気候変動のスピードがゆっくりで、戦争も差別も少ない、穏やかな世界です。本来の地球の姿へ戻ろうとしている道です。どちらの道へ進むかを求められているわけですが、答えは明白です。
本来あった地球の姿へ戻ろうとしている道です。そしてこれが「SDGs」への道です。
2015年9月、ニューヨーク国連本部に150を超える加盟国の首脳が集まり、「国連持続可能な開発サミット」が開催されました。そこで貧困問題や気候変動など、地球を取り巻く問題に向き合い、世界中の人々が幸せに生きていける社会をめざしていくために目標が定められました。
SDGsは、「SustainableDevelopmentGoals(持続可能な開発目標)」という英語の頭文字をとった略称で、2015年から2030年までの15年間で、持続可能な世界を実現するために「17の目標」が定められました。小学校ではすでにSDGsを学習ツールとして取り入れているので、お子さんのほうが詳しいかもしれません。
このSDGsは、2015年の1月から本格的な実施を開始したのですが、じつは江戸時代にはすでにサステナブル(持続可能)な生活をしていたといわれています。モノ不足を補うためとはいえ、たとえば、魚から出る油を行灯(照明)に使っていたり、着物をリサイクルしていたり。そのために、古着屋がたいへん繁盛していたといいます。江戸時代にリサイクルの考えがあったのは驚きです。このように江戸時代の人たちは、あらゆる知恵をしぼって生活していました。
意識の変化が地球を変える
私たちは先人の足跡をもとに、世界のリーダーたちが定めた目標に向けて歩きだすときがきました。そのためにはまずSDGsの全体を理解することが大事です。SDGsの全体像が見えてきたら次は、「地球は危機的状況にあるんだ」という意識を持ってください。地球温暖化や自然破壊により、多くの生物が絶滅しています。飢餓や人権侵害も年々、深刻化しています。そして、世界が直面しているあらゆる問題に目を向けて、危機感を持つことです。問題を解決するにはどのように行動するかも重要です。
みなさんもSDGsの理解を深め、使命感を持ってもらえたらいいなと思っています。少しオーバーかもしれませんが、「地球を救うのは、私たちのミッションだ!」という気持ちを持ってもらえたらうれしいです。なかには難しい問題もあるかもしれません。そのようなときは、周囲の人たちも巻き込んで一緒に考えてください。そこには初めて聞く言葉や、知らなかった内容が書かれているかもしれません。ですが、一人ひとりの「意識」が変わることによって、日々の「行動」に変化があらわれます。
行動が変わると、「習慣」も変わります。習慣が変われば、それはやがて地球に大きな「変化」をもたらします。
世界には解決すべき問題が山積
貧困、人種差別、環境破壊など、世界には解決すべき、地球規模の問題がたくさんあります。こうしたさまざまな問題の解決をめざしたのが、国際連合(国連)が2030年までの国際目標として定めた「SDGsの17の目標」なのです。
17の目標を見てみますと、たとえば、目標1は「貧困をなくそう」、目標2は「飢餓をゼロに」、目標7は「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と、さまざまな目標が設定されています。ここで考えてほしいのは、たとえば、「貧困をなくそう」が目標になっているのは、世界には「なくさなければならない貧困がある」ということです。「飢餓をゼロに」が目標になっているのは、「飢餓で苦しむ人がいる」からです。「エネルギーをみんなに」とは、私たちが毎日便利な家電を使って快適に暮らしている中で、電気を使えない人がいるということです(世界銀行の発表によれば、2021年時点で7億5900万人)。
17の目標は、世界にそれだけたくさんの解決しなければならない問題があることを示しているのです。
17の目標は、地球上にあるさまざまな問題を紹介しています。みなさんが知っている問題もあるかもしれませんが、知らないこともたくさんあるはずです。まず、私たちがすべきことは、どんな問題があるかを知ることです。
なぜなら、どんな問題があるかを知らなければ、その問題を解決することができないからです。そして、どんな問題があるかを知ったら、その問題をどうすれば解決できるだろうかと考えてほしいと思います。どれもそう簡単に解決できる問題ではないことがわかってくるはずです。知れば知るほど、世界にはたくさんの問題があることが見えてきて悲しい気持ちになるかもしれません。しかし、現実から目を背けてはいけません。
よりよい地球のために
国連も、国連の力だけではSDGsは達成できないとわかっています。だからこそ世界中の人々の力を求めています。そのなかには、当然、「私」も「あなた」も含まれています。みんなの力が必要とされているのです。
地球は、本来あった姿に戻るときがきました。「別れ道」の前に立って迷っている場合ではありません。未来のためにできることはたくさんあるはずです。一緒に、SDGsに真剣に向き合うための一歩を踏み出しましょう。
vol.72 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2025年7月号掲載