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Vol.79 日本の年中行事は、世界に誇れる日本固有の文化です。

タイトル

日本の伝統文化を体で感じ取る

 伝統とは、昔から今まで受け継がれてきた、しきたりのことです。形あるものもあれば、形のないものもあります。
 今の世の中、インターネットの発達によって世界中が一瞬にしてつながり、世界中で起きている痛ましい事故や事件だけでなく、世界を舞台に活躍する日本人たちの姿もリアルタイムで知ることができます。これから、ますます海外で活躍する人も増え、また、海外から日本へ来る人も増えてくるでしょう。
 世界がつながると、固有の文化を持っていることが強みになります。ところが現代の日本社会においては、ライフスタイルや社会環境の変化により、こうした日本人らしい習慣の多くが忘れられつつあります。
 日本の伝統を知ることは、日本という国の良さ、日本人が大切にしてきた心を知ることになります。固有の文化がなくなり、世界中が全部同じようになると、まったく面白みのない世の中になるでしょう。
 そこで、日本の伝統的な習慣やたしなみ、日々、培ってきたならわしを暮らしに取り入れることで、再確認してみてほしいのです。こうした日本固有の行事に親しむことで、いつの間にか昔から受け継がれている日本人の思いが体に染み込んできます。先人から受け継ぎ、醸成してきた“日本人らしさ”を感じ取ることができるでしょう。

年中行事「節分」に親しむ

 私は四十年来、体と心のあり方について研究しています。そのなかで、勉強でもスポーツでも、そして文化・精神においても、よりどころの大切さをくり返し実感しています。くり返し実感することで「量」が「質」に変わります。つまり、量をこなしたとき、それが心身に定着するということです。
 日本人らしい習慣においても同様でその意味を理解し、くり返し実践することで習慣が自然に身につくのです。
 たとえば、二月三日は、節分です(2026年〜2029年)。季節の変わり目には邪気が生じるといわれ、それを追い払うためのならわしがあります。節分とは、本来、四季の節目のことです。「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の各前日をいいました。
 旧暦では春のおとずれを正月と同様に新たな年の始まりとしてとくに大切にしていたことから、春分の前だけが「節分」として残ったようです。
 では、なぜ、節分に豆をまいて鬼を追い払う風習があるのでしょうか。
 昔は、災害や飢餓などを引き起こす厄災は、鬼による人知を超えた現象と考えられていました。そのため、鬼は邪気の象徴とされていたのです。新しい年を迎えるにあたって、病気や災いのない年になるように願いを込めて、節分に邪気を払う豆まきが行われるようになったのです。豆には魔よけの力があるとされ、「魔を滅する」とか、炒った豆をまくことで「魔の目を射る」などの語呂合わせの意味もありました。
 豆をまくときの掛け声は、「邪気を外に出したのち福を内に呼びこむ」ことから、「鬼は外、福は内」が一般的です。しかし、地域によっては、「福は内、鬼は外」「鬼は内、福も内」と言うところもあります。また、鬼を祀る寺社では「福は内」のみを言う場合もあります。
 節分に、焼いたイワシの頭をヒイラギの枝に差した「やいかがし」を門前や玄関に飾る風習もあります。ヒイラギのトゲとイワシの頭の悪臭で鬼を追い払う魔よけ、厄払いの意味があります。イワシを節分の行事食としている地域もあります。
 学生と話をしていると、節分には子どもの頃から必ず豆まきをし、恵方巻を食べていたのに、大学生になり親元を離れたことで食べそこなうと、物足りなさを感じるという声をよく聞きます。それは、伝統が身体化されて自分の一部になっているということです。さらに、日本語や日本文化は、歴史的に中国の影響を受けています。日本流にアレンジして取り入れた先人の感覚にも目を向けてほしいと思います。

先人から受け継いだ「日本人らしさ」を再発見

 私たちが何気なく楽しみ、参加している春夏秋冬ごとの風習やしきたりは、そのほとんどが江戸時代に今の形になったといわれます。
 ところが厄介なことに、江戸時代には「旧暦」が使われていました。現在の新暦と、昔の旧暦とでは、一か月前後のズレがあります、そのタイムラグのうえに、人類の営みがもたらした自然環境の大きな変化なども加わって、今と昔の季節感はずいぶんと違うものになっています。
 しかし、私たち今の日本人は、旧暦のもとで暮らしていた先人の血を脈々と受け継いでいます。四季がめぐるすばらしさ。その移ろいを気象の動きや動植物の変化、人の営為や風習・しきたりから感じ、語り継いできました。それぞれを少し暮らしに取り入れることで、ともすれば失いかねない日本人の豊かな感性を取り戻せるのではないでしょうか。
 「ああ、懐かしいな……。子どもの頃は、そんなことしたよな……」それは単にノスタルジックで、後ろ向きの懐古趣味とは違います。心の底から湧きたつ素直な情感が、とかく殺伐となりがちな暮らしにみずみずしい潤いをもたらしてくれるはずです。子どもたちや孫たちの代にも受け継がれることを心から願うしだいです。

vol.79 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2026年2月号掲載

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