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Vol.103 小学生の保護者からは見えにくい「最近の大学生の姿」をのぞいてみると

 

 スマホの普及に伴う人間関係構築方法の変化、急激に進む企業のグローバル化や就職活動の複雑化などによる「自己研鑽やインターンシップ」に費やす時間と手間の増大など、大学生を取り巻く環境はここ数年だけを切り取っても大きく変化しているようです。
 今回は、早稲田大学学生部が発表した「第33回学生生活調査報告書(2014年)」を基に、小学生の保護者からは見えにくい「最近の大学生の姿」を見ていくことにします。

大学生が抱える悩みや不安

 「進路・就職等」で悩む人は全体の70%に達しています。2008年の調査結果( 56.4%)に比べて10%以上も増加しており、社会情勢の急激な変化を反映した数値になっています。2008年との比較では、「経済問題」が13.1% → 23.4%、「アルバイト」が5.3% → 20.4%、「対人関係」は18.8% → 25.1%、「性格・能力」は15.0% → 26.7%と上昇していて、現在の生活環境、対人コミュニケーション、そして将来のことまで、8年前の大学生に比べても悩みや不安を抱える人が増えています。

修学上での不安や悩みを教えてください
(主なもののみ)

進路・就職等 70.0%
成績不振 26.7%
留学 11.2%
アルバイト 20.4%
経済問題 23.4%
対人関係 25.1%
性格・能力 26.7%
悩みや不安はない 10.8%

将来の進路に対する不安
(2 つまで回答:主なもののみ)

  全体 文系 理系
やりたいことがみつからない
29.8% 30.5% 27.4%
志望する進路が絞り切れない
35.3% 35.8% 33.8%
志望する進路先に進む能力がない
30.9% 31.2% 29.9%
進路先でやりたいことができるかわからない
24.0% 23.1% 27.2%
志望する進路で自活できるか心配
28.6% 28.2% 30.2%

 「将来の進路に対する不安」についてより詳しく見ていきます。ここでは、「やりたいこと がみつからない」という項目の数値にご注目ください。2008年、2011年、今回の順で数値を並べると、24.7% → 27.0% → 29.8%とジワジワ上昇を続けており、自分の適性や興味関心を見究めることができない大学生が増えているようです。「進路を考え始めた時期」という質問に「大学に入ってから」と答えた比率が41.9%と高くなっていて、「大学で何をやりたいか」「将来どんな職業に就きたいのか」という明確なイメージを持たないまま大学に入学してくることも一因として挙げられます。
 皆さんのお子さまは「将来の目標」をお持ちでしょうか。こうした資料から読み取れる「目標を持たない大学生」の姿から、成長に伴う方向転換、実現の可能性は別としても、子どもの頃に「目標」を持ち、それに向けて歩み続けられることがどれだけ貴重なことであるかがおわかりいただけると思います。

卒業後の将来設計について

 私自身も「大学生の子どもを持つ保護者」であり、「はたしてちゃんと就職できるのか」に始まり、就職活動の方法や志望する会社あるいは業界の将来性に至るまで、心配が尽きることはありません。
 そんな私にとっても大変関心が高い「卒業後の進路希望」に関するデータも公開されていましたので紹介していきます。

卒業後の進路はどうしたいと考えていますか
(主なもののみ)

  全体 文系 理系
民間企業
50.8% 50.3% 51.8%
公務員
10.2% 12.5% 4.4%
大学院に進学
8.6% 6.3% 14.8%
小中高教員
4.7% 5.5% 2.5%
大学教員
3.6% 3.8% 3.0%
研究所・シンクタンク
4.0% 1.5% 10.6%
起業家
2.0% 2.1% 1.8%
未定
10.1% 11.0% 7.8%

 「民間企業」と回答した学生は全体の半数 を超えました。過去のデータと比較してみると、37.8%( 04年)、46.3%( 08年)、41.7%( 09年)、47.4%( 11年)と、この10年あまりで最高値となっています。09年度の一時的な減少はリーマンショックの影響とみられ、景気動向と連動しながらも増加傾向にあることがわかります。これは「大学院に進学」という項目とも関連があり、前回2011年のデータに比べると、今回は理系で大きく数値が減少していることを紹介しておかなければなりません( 11年は理系24.7%)。また、時代の流れを感じさせる「起業家」という項目が初めて登場し、2.0%もの数値となったことが驚きですが、これから10年後、皆さんのお子さまが就職を考える年代になる頃には、この値はどのくらい上昇していくのか大変興味があります。

卒業後の進路希望を「未定」
と答えた学生の比率

全体 10.1%
1年生 16.2%
2年生 12.4%
3年生 10.1%
4年生 2.9%
5年生以上 10.3%
修士課程 4.7%
博士課程 6.2%

 「未定」は10.1%となっていますが、この値を学年別に見ると1年生の16.2%に対して4年生では2.9%となっていて、「やりたいことがみつからない」「志望する進路が絞り切れない」と悩みながらも進路に対する意識や関心を持ち続け、キャリア形成に向けて折り合いをつけようと努力している様子が想像できます。
 その過程では、当然ながら積極的に自分の能力を磨かなければなりません。「将来設計に向けて、現在どのような準備をしていますか」という質問があり、「語学習得」という項目では全体では44.1%ですが1年生に限れば55.2%と高く、「企業研究・就職試験対策」「資格試験対策」という項目は3年生から数値が上昇しています。
 こうした情報を併せると、いまどきの大学生が「ちゃんと勉強しなければならない様子」が浮かび上がってきます。授業に出る、単位を修得し無事に卒業することがゴールではなく、将来から逆算して「自分がいま身につけるべきこと(語学力だったりプレゼン能力だったり)」を明確に把握し、自分の経験値を高め続けることがすでに前提となっているのでしょう。
 ところが、それだけのことをやり続けたとしてもグローバル社会で生き抜いていけるのか保証されていないのが現実です。どうすれば成功するかなんて、まだ誰にもわからないのです。我々大人だって将来を不安視するのですから、大学生は「自分の努力が報われない可能性」が重なる分だけ不安に押しつぶされそうになっても不思議ではありません。
 だからこそ、小中学生の間には「可能性に関係なく果敢に挑戦する経験」を積ませておきたいものです。現在の大学生が抱える不安は、幼少期に「勝ち戦しか経験していない者」にとってはあまりにも高い壁に見えることでしょう。「進路・就職」に対する不安が8年前に比べて10%も上昇しているというのは、私には危険信号にしか見えないのです。

    

資料:早稲田大学学生部 第33回学生生活調査報告書

vol.103 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年11月号掲載

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