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Vol.111 子どもを勉強好きにするための保護者の関わり方を探る

 前月に続いて「嫌いだった勉強が好きになった子の特徴」に関する調査結果をご紹介していきます。今月は、小学生のお子さまを持つ保護者の皆さまにとって関心が高い「保護者の関わり方」について掘り下げていきます。勉強嫌いを好きに変えた秘訣はどんなものだったのでしょうか。さっそくデータを見てみましょう。

保護者の「自分の子どもに対する関わり方」について

 最初に紹介するのは、2016年の調査で保護者に対して聞いた「子どもとの関わり方」です。お子さまの学力状況に関係なくまとめられた全体的な傾向をご確認ください。

保護者の関わり(学校段階別)

  小1~小3 小4~小6 中学生
勉強の内容を教える 73.5% 59.9% 34.4%
勉強のやり方を教える 72.1% 59.2% 42.2%
勉強のおもしろさを教える 44.3% 38.3% 32.3%
何にでもすぐに口出しをする 60.2% 61.8% 58.9%

「どちらも低め」、無回答、不明を除く。

 「勉強の内容を教える」という項目では、小学校高学年では半数以上の保護者が何らかの形で指導をし、中学生でも3人に1人の保護者が指導していることがわかりました。中学生に対する指導の割合は私の予想よりも高かったのですが、「英語だけなら」「数学なら」という限定的なものも含まれているとすれば理解できるところです。小学校高学年から中学生にかけて数値が減少する理由としては、もちろん「難しくなって教えられなくなった」ということもあるでしょうが、私が塾講師として見聞している限りでは「日曜に父親が算数を教えようとしたところ、(父親の)説明を理解できない子どもの様子に父親がイライラしはじめ雰囲気が険悪になってしまい、以降子どもが拒否するようになった」ケースが最も多いことをお伝えしておきます。次に「勉強のやり方を教える」ですが、これは「解き方」「正解の出し方」ではなく、例えば学習スケジュールの立て方であったり、英単語の効率的な覚え方であったり、極端な例では「算数・数学でわからない問題に対峙したとき、先に正解を見ることの是非」といったものまで、保護者自身が経験した学習法や工夫したポイントのレクチャーということです。中学生を指導していても、これまで誰からも勉強のやり方を学んだことがないという生徒は年々増えている印象があり、これを指導するだけで飛躍的に成績が向上したケースはこれまで何度も自分の目で見てきましたので、お子さまの学年に合わせたアドバイスや経験談は押し付けにならない程度にお話しされることをお勧めします。同様に「勉強のおもしろさを教える」も、皆さまが昔好きだった教科についてその理由を普段からお話しされるだけでも効果があります。「お母さんが社会を好きになるきっかけとなった○○」がいよいよお子さま自身の目の前に登場したときに、授業を受ける態度や集中力がどれほど向上するかは言うまでもありません。最後に「何にでもすぐに口出しをする」ですが、小学校低学年から中学生まで、その割合にほとんど変化がないことに注目してください。中学生といえば「子ども扱いを嫌い、反発し始める時期」でもありますが、保護者の側は小学生時代と変わらずの子ども扱いをしている傾向が浮かんできます。勉強面においても「宿題はやったの?」「テスト勉強はちゃんとしなさいよ!」と、具体的なアドバイスはなしで追い立てている様子が私には想像できますが、こうした言葉をちゃんと聞いて行動に移すことなどほとんどないことは、我々保護者のほうが経験上わかっているはずですね。

勉強が「嫌い→好き」になった保護者の関わり方

 次にご紹介するのは、前月同様「2015年と2016年で同じ人に同じ調査をした結果」です。1年間の子どもの変化に保護者の関わりをかけあわせてみると、「子どもを勉強好きに変えた保護者の傾向」が浮かび上がってくるのです。
 先ほど紹介した全体のデータと数値を比較してみてください。勉強を嫌いから好きに変えるための保護者の関わりとして有効なのは、小中学生の区別なく「勉強も教え、かつ励ましの声掛けもすること」「勉強のおもしろさを伝えること」であることがうかがえます。前述の「父親が勉強を教えようとして、(険悪な雰囲気になるから)子どもが拒否する」という光景は、まさにお子さまにとって逆効果であることがわかります。小学校高学年以降であれば、父親が関わるなら「経験談のアドバ イス」「勉強のおもしろさを話してもらう」に限定しておくほうがよいかもしれません。
 これを裏付けるデータとして「親子の会話」に関する結果を紹介しておきます。もちろん会話の頻度は母親のほうが父親よりも高いのですが、勉強の好き嫌い別で見ると父親との会話で差がついているというのです。その差が最も顕著に現れた中学生でみると、勉強が「嫌い→好き」と「嫌いなまま」では、「社会のニュースを父と話題にする」が6・2ポイント、「将来や進路のこと」では6・4ポイント、そして「勉強や成績のこと」では9・7ポイントも差をつけて「嫌い→好き」がいずれも高い結果となっています。勉強や成績の話題は、ただ結果についてほめたり叱ったりするだけでは会話になりません。今の勉強が将来にどのような影響を及ぼすのかを話してあげたり、頑張っているのに結果が伴わないときに励ましながらアドバイスをしてあげたりするなど、普段顔を合わせる時間の長い母親とは違う視点で客観的に話してあげる機会が重要なのでしょう。

保護者の関わり(学校段階別・「勉強の好き嫌い」の変化別)

  2016年回答 小5・小6 中学生
勉強も教え、失敗したときの励ましも 嫌い→好き 32.5% 28.4%
嫌いなまま 25.6% 23.1%
勉強に関することが中心 嫌い→好き 31.1% 28.7%
嫌いなまま 39.3% 30.5%
失敗したときの励ましが中心 嫌い→好き 8.8% 14.2%
嫌いなまま 11.9% 15.8%

「どちらも低め」、無回答、不明を除く。

保護者の関わり(学校段階別・「勉強の好き嫌い」の変化別)

  2016年回答 小5・小6 中学生
勉強のやり方を教える 嫌い→好き 62.6% 57.2%
嫌いなまま 64.4% 53.2%
勉強のおもしろさを教える 嫌い→好き 35.4% 41.4%
嫌いなまま 31.9%% 31.6%

 塾講師として現場のことを思い出しても、「ほめる・叱る」は簡単ですが「励ます・アドバイスする」は大変難しく、子どもとの信頼関係の濃淡を考慮した役割分担を講師の間で事前に決めておくことは不可欠です。ましてやご家族の間だと、このような会話習慣をある日突然始められるものではありませんから、お子さまが小学生のうちから少しずつ準備し、特に父親の役割分担について確認されることをお勧めします。お子さまが小学生の時にうまくいかない役割分担は、中学生になっても高校生になっても改善されるはずはありません。将来の高校選びや大学選びの際、お子さまが成績や進路で迷ったときにご家庭の方針が一枚岩にならず困ってしまうケースを、残念ながら我々塾講師は毎年数多く目にしているのです。

出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査 2016」

vol.111 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年7月号掲載

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