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Vol.112 大人でも悩む!? 公立中高一貫校の出題内容

 いきなりですが皆さんは、日本の伝統楽器である「箏こと」についてどれほどの知識がありますか。私は触ったことすらないのですが、一度説明を受けただけではまったく仕組みを理解できないことでしょう。その仕組みや特徴について、先生と生徒の会話を読み取りながら理解することが「公立中高一貫校の受検問題」として求められたら、皆さんは冷静さを失わずに解き進められるで しょうか?

大人でも悩む題材に挑む子どもたち

 実は、今春行われた公立中高一貫校「九段中等教育学校」の受検において、A4サイズの用紙5枚を読み進める形式で「箏」が取り上げられました。
 先生と二人の生徒との間で進む会話形式の設問で、写真と図で箏の演奏方法や弦・部品の名称紹介から始まって、先生が音の鳴る仕組みや音の高さが変わる理由を説明していきます。問1では、先に「資料3」として提示してある箏の状態を使って、
 13個の柱が「資料3」の位置にあるとき、13本の弦の中で、もっとも低い音が出る弦はどれですか。
という質問に答えなければなりません。確かに先生と生徒のやりとりから正解を見つけられるはずなのですが、そもそも箏に興味のない私では「読んでも頭にまったく入ってこない」状態で、早くもギブアップ寸前に追い込まれてしまいます。
 その後の問題には、「押し手」と呼ばれる演奏方法についての説明を読んだ上で、
 「押し手」という方法を使って演奏すると、柱の位置を変えなくても、出る音の高さが高くなる理由を説明しなさい。
という記述問題や、一人の生徒の「弦の振動数について調べてみたいです」という、多くの受検生から「おいおい、何を言い出すんだ……」と文句を言われそうな提案によって始まる音階の比例計算まで、題材のとっつきにくさから心を折られてしまうケースが多々 あったであろう、と予想できる出題だったのです。小学6年生にとって「箏」はけっして身近な楽器ではありませんから、出題意図は「好奇心をもって未知の事象に向かい合えるか」の1点だったのかもしれません。

公立中高一貫校の問題の特徴とは

 この「箏」が出題されたのは「適性検査2(45分)」の大問1です。出題はもちろんこの1題ではありません。問題は全部でA4サイズの用紙13枚分に及び、「紙」を題材にした大問2では、
 粘土板や木簡・竹簡(資料として提示あり)よりも、紙の方が扱いやすい理由を説明しなさい。
という出題のほか、紙の生産量とインターネット利用者の推移についてのグラフを読み取って考えを述べさせ、さらには東京オリンピックと結びつけて「JR目黒駅のホーム看板の写真」を見ながら駅ナンバリングの利点について説明させる問題が続きます。
 大問3では、リニアモーターカーの仕組みについて前述の「箏」と同様に、先生と生徒の会話を読み進めながら解答することが求められます。最後は「飯田橋駅から九段中等教育学校までの距離(505m)を、時速505㎞のリニアモーターカーで走行すると何秒かか るか」という速度計算までついてくるのですから驚きです。
 今回は九段中等教育学校の適性検査を紹介しましたが、多くの公立中高一貫校では出題形式が私立中学の入試問題とも異なり、「その場で考え、表現する」ことが強く求められます。いわゆる「解き方」のトレーニングを積むだけでは対応できない資質が問われ、問題の題材が日常生活の中から拾われているので普段からの「知的好奇心の差」が試験のできを左右するケースも少なくありません。
 これに、長文を読みこなすだけの読解力と確実な計算力も要求されていますから、倍率の高さを取り上げるまでもなく「合格するためにはかなりのトレーニングを積んでおかないと、試験中の集中力を維持させることすらできない」難度であることがおわかりいただけると思います。

私立中学と公立中高一貫校出題傾向の違い

  公立中高一貫 私立中学校
内容 指導要領範囲内 指導要領範囲外も多い
解答 正答は一つに限らず、複数あることが多い 決まった正答がある
教科 教科横断型 算国理社の4教科が多い
出題傾向 極端な傾向はない 学校ごとに傾向が異なる

受検準備は保護者も一緒に頭を悩ませて!

 こうした出題傾向を知っておくと、公立中高一貫校を志望する保護者の方々へのアドバイスは、以下の二つに集約されてきます。
 一つ目は「私立中学受験志望者と同様の『学校別の傾向と対策』を早い段階から準備することにそれほどの価値はない」ということです。もちろん出題形式に慣れるための準備は必要ですが、問われていることは「正解を導くテクニック」ではなく、お子さま自身がこれまで学んできた知識とその場で発揮する観察力や思考力を用いて導く結論、つまり「思考の過程」であることを知っておき、普段から会話の中に取り込むなど習慣にしてしまうほうがよいでしょう。
 二つ目は「公立中高一貫の受検準備は楽じゃない」ということです。これまで公立中高一貫を考える保護者からは「公立中高一貫校であれば、私立受験ほどのハードな受験勉強は必要ないから」「公立中高一貫校のことはよく知らないけれど、公立中学に通わせるよりリスクが少ないと思って」といった声が、少なからず私にも聞こえてきたものでした。
 しかしながら、その実状は今回紹介した問題の性質からもわかるとおり、大人でも戸惑うことが珍しくないほど手間がかかることが知られてきました。自分の意見を書くということ一つをとっても、他人の意見を聞くことによってはじめて得られる「こんな考え方もあるんだ」という気づきの有無が、その後の成長に大きな影響を及ぼすことはいうまでもありません。そのためには、保護者が子どもと同じ条件で考え、表現することで論を重ねることが必要なケースも生じるでしょう。前述のような軽い動機では親子ともに受検準備が続けられないケースもあることを覚えておいてください。
 具体例として、今春桜修館中等教育学校で出題された問題を最後に紹介します。親子で考えをすり合わせてみるだけでもその大変さが実感できると思いますので、ぜひ夏休みに時間をとってあげてください。

文章 よき細工は、少し鈍き刀を使ふといふ。妙観が刀は、いたく立たず。

(「徒然草」より)

 右の文章は日本の古い書物の中の一部分で、「名工(優れた工芸技術を持つ人)は少し切れ味の悪い小刀を使うという。奈良時代の名工の妙観の小刀はたいして切れない。」という意味です。

  1. あなたはこの書物の著者は、この文章を通して、どのようなことを言いたかったのだと考えますか。
  2. あなたは「著者の言いたかったこと」について、どのように考えますか。

 第一段落では①について100字程度で、第二段落以降で②についてわかりやすく書きましょう。なお、全体の字数は500字以上600字以内とします。
(一部改)

vol.112 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年8月号掲載

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