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Vol.116 「大学が主催する保護者会」で語られる本音の就活事情

 先日のことですが、我が家の次男が通う大学で「保護者会」が行われました。「大学で保護者 会?」と私もビックリしたのですが、そのテーマが「最近の就活事情」で納得。当日は大学のキャ リアセンター長が話す就職活動の裏話に多くの参加者が熱心にメモをとっていました。企業とや りとりする機会の多いキャリアセンターの方が保護者に熱く訴えかけていた内容について、誌面 の許す限り紹介していきたいと思います。

就活について熱心に勉強する保護者たち

 今回の保護者会は大学2年生の保護者(正確には保証人)が対象で、200人を軽く超える保護者が来場していました。ご夫婦で参加されているおよそ50組を割引いても、150組ほどのご家庭が参加されていたことになります。この学部の1学年は700人弱で、地元(首都圏)占有率が40%を切っていることが公表されているので、首都圏在住の方のうち半数以上が、平日昼間の「大学主催の保護者会」に足を運んでいるから驚きです。中学校の保護者会よりも出席率は高いかもしれません。
 それはすなわち、保護者が「子どもの就職活動について不安を感じている」ことのあらわれなのでしょう。私の妻も、子どもが高校生になる頃から「就職が一番不安だ」とぼやいていたものです。それがいよいよ目の前に迫ってきて、まるで自分が活動するかのように情報を集めてはやきもきしているのですが、この日の「本音トーク」には大変満足していたようです。

知っておきたい「就活の裏事情」

 就活事情について、真偽があいまいな情報が飛び交っているものについて説明がありました。

(1)大卒求人倍率のカラクリ

 昨今は大卒求人倍率が上昇し「売り手市場」 と言われていますが、その言葉に騙されてはい けないとハッキリ語られていました。「売り手 市場は中小企業が作っている」とのことです。

大卒求人倍率(従業員数別)の推移

  2014年
3月卒
2015年
3月卒
2016年
3月卒
2017年
3月卒
2018年
3月卒
大卒全体 1.28倍 1.61倍 1.73倍 1.74倍 1.78倍
300人未満 3.26倍 4.52倍 3.59倍 4.16倍 6.45倍
300~999人 1.03倍 1.19倍 1.23倍 1.17倍 1.45倍
1000~4999人 0.79倍 0.84倍 1.06倍 1.12倍 1.02倍
5000人以上 0.54倍 0.55倍 0.70倍 0.59倍 0.39倍

 数値を見ると、従業員5000人以上の一般的に大企業といわれるところでは倍率が下がってむしろ厳しくなっていることがわかります。大学生はもちろん、多くの保護者が希 望の就職先にこうした大企業の名前を挙げるのですが、見かけの「売り手市場」に騙されて戦略を間違えると報道で目にするような「40社、50社と受けても全く内定がもらえない大学生」になってしまうわけです。
 とある大企業では、門戸が開かれている説明会には15000人もの学生が参加しましたが、エントリーシートやグループディスカッションを経て、1次面接にたどり着いた者ですら200人もいなかったというから驚きです。最終合格者は32人(内定率は0・2%)という厳しい競争ですが、センター長の「これは普通です」との言葉に多くの保護者がため息をついていました。

(2)インターンシップのカラクリ

  最近では大学3年の夏、早いところだと2年のうちから「インターンシップ」として大学生が企業を訪ねる機会が設けられています。保護者世代にはなかった制度なので、その実態がわかっていないという前提で詳しく説明がなされました。簡単にまとめると、
・文系学生のおよそ7割が行く
・就労は少なく、実質説明会。懇親会もあり選考が始まっている
・大手だと優秀な学生には個別に声掛けがある
 一番まずいのは「みんなが行くからなんとなく」「行ったほうがいいと聞いた」など、主体性なく流されて参加するケースです。業界や企業の分析もあいまいなままの参加のため、マイナス評価をつけられて選考対象からはずされてしまうだけなのでデメリットしか生み出さないとのこと。小学生や中学生にはしばしば見られる行動・思考パターンですが、それが通じるのはいつまでなのか親子で話し合っておく必要がありそうです。

保護者の立ち位置を考えておく

 就職活動を通して子どもたちの未来を考えると、どうしても「社会構造の変化」を無視することはできません。大学での学びの目的を「今後40年を生き抜くためのキャリア形成の土台作り」と明確にし、具体的には「社会がどのように変わろうと、どんな環境下でも発揮できる自分の強みを持つこと」を考えて大学を選び、主体的に学んでいかないと高い学費に見合った価値を得られない時代になっていることを我々保護者は知っておかなければなりません。
 最近話題のAIについては、キャリアセンター長は「AIに資金を投入できるのは大手から。大手が厳選採用になるのは当然で、その流れはすでに数値から明らか」と語り、「AIを使う側の人間は1人でいい。成功モデルがないのだから、そのモデルを作れる1人を欲している」と企業の声を代弁されていました。10年前に話題になっていた「グローバル化」については、英語が話せる・使えることは当たり前とした上で「ビジネスでつきあう海外の人材はほとんどが修士課程まで進んでいる。それを見越して高い学位と海外経験を持つ人材を求める(企業の)声が多くなっている」とのことでした。おそらく10年後、皆さまのお子さまが社会人になる頃にはこうした傾向が強まっているかもしれません。
 我々保護者も世の中の変化に鈍感であってはいられない時代となったようです。あらゆる学びを止めずに新たな知識を吸収し、適切な時期に適切な方法で子どもに還元しなければならないと私自身強く思いました。

 再び就職活動の話に戻ります。保護者に向けて注意喚起されていたことが2つありました。1つ目は「最近の大学生は知らない大人と接触する機会が少なく就活時に緊張する」とのこと。バイトであっても、同世代のバイト仲間によるコミュニティでまわせるもの(塾講師や飲食店など)を選ぶ傾向があって、異世代の大人と深く関わる経験に乏しく就活時の大きなネックとなることもあるようです。「小学校から大学まで、教員はタメ口でも怒りません。でも社会に出たら通用しません。しかしながら通用する世界しか見ていない者には、通用しない世界があることすらわからない」と強調しておられました。もう1つは「就活の選考がweb上で進むことを覚えておく」ことです。選考過程が可視化できないことを不安に思う保護者は多く、ついつい「どうなってるの? ちゃんとやってるの?」と口出しして子どもを怒らせてしまうそうです。これは別の講演会で聞いた話ですが、就職活動を終えた大学生の多くが「(活動中に)最も役に立たなかったこと」として「保護者の無責任な口出し」を挙げたそうです。保護者がよかれと思ったアドバイスが、単なる聞きかじりや就活の実態にあっていないもので、かえって子どもにストレスを与えることになってしまう……。これは小学生の勉強についてもあてはまる場面があるかもしれません。
 保護者の立ち位置は、子どもが小学生でも大学生でも変わらず、とても難しいものです。


参考:大卒求人倍率調査(2018 年卒)リクルートワークス研究所

vol.116 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年12月号掲載

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