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Vol.120 中学生に求められる「発信力」について考える

 就職活動における面接やグループディスカッションではもちろん、東大や京大(京大の名称は特色入試)の参入で影響力が大きくなってきた大学の推薦入試においても、自分の考えをしっかりと述べる「発信力」が注視されています。明確に点数化できないだけに「いつまでに、どのレベルまで」到達しておけばよいのか、その目安が気になるところです。今回は、高校入試を題材にしてその目安を考えてみます。

どうして「発信力」が問われるのか

 まず、下の【参考 1】をご覧ください。これらは、都立高校の推薦入試における集団討論のテーマです。正しいか正しくないかが問われるわけではありませんから、積極性や説得力も含めたトータルな「発信力」が問われています。「言われたとおりのことをそつなくこなすことで評価を得る」タイプの指示待ちで受け身の「いい子」が求められているわけではないことがおわかりいただけると思います。
 我々が子どもの頃の価値観では、中学・高校・大学入試を問わず入試を突破するために要求されてきたのは「正解力」でしたから、ミスをしないことが高い評価に直結していました。その反面、「受験学力は高いけど社会人としてはちょっと……」という生徒の存在が問題視される場面があったことでしょう。それに対して現在は、「自分で考え・解決する能力」をいかに磨いてきたかが問われます。受験学力が不必要だとは言いませんが、受験学力を磨き上げた結果手にしたものが学歴だけだったとしたら、昨今のグローバル社会において同僚や上司が外国人になってしまえば全く役に立ちません。社会に出た途端に、学生時代に費やした時間と労力が無価値になってしまう可能性だってある時代なのです。
 簡単にいえば「机に向かって黙々と勉強してきた優等生」ではなく、「仲間や同僚とチームで課題を克服し、プレゼンテーションで周囲を説得できる人材」の価値が高まっているということなのです。


【参考 1】推薦入試の集団討論出題例

○ 都立青山高校(男子)
 2020 年に東京で行われるパラリンピックでは、ブラインドマラソンという競技が行われます。この競技は、視覚に障がいがある方が走るマラソンです。最も障がいが重いクラスでは、伴走者が必須となります。もしあなたが、その伴走者になるとしたら、どのような点に気をつけますか。これから送る高校生活の抱負もふまえて話し合ってください。

○ 都立青山高校(女子)
 来年5月1日に、日本の元号が平成から新しい元号に変わります。みなさん自由な発想で新元号を作ってみてください。そして、その元号にどのような願いを込めましたか。これから送る高校生活の抱負もふまえて話し合ってください。

○ 都立日比谷高校
 自動化されるとよいと思うものは?


いつまでに、どのレベルまで到達しておけばよいのか

 もう一度【参考 1】をご覧ください。これは高校入試(推薦)の集団討論のテーマです。少なくとも私は、中学・高校時代に「正解のない問い」が選抜に使われたことはありません。大学入試で小論文はありましたが、データをもとに概況をつかみ考察し問いに答える形でしたから、「次の元号を考えてみてよ、理由や新生活の抱負も含めてね」というテーマを事前準備なしで考え、しかもみんなで話し合うことが当時の自分にできたかといえば、正直疑問符がつきます。
 大学入試で多く用いられる推薦・AO入試でも同様の出題が多く見られます。「小論文・面接・プレゼンテーション」などが合否判定に用いられますから、自由に話し合うことが許される集団討論よりもハードルは高く、受験生は大学に対して徹底的に自身を売り込まなければなりません。
 そして、就職活動の際にも同種の資質が問われることは言うまでもありません。結果的には、15歳と18歳と22歳が、その中身の濃さに差があるとしても同じ資質を問われていることを知っておいてください。
 見知らぬ人、価値観や文化・環境が全く異なる人が相手でも、臆することなく自分の考えを理路整然と述べ、自分の考えを理解してもらうための工夫まで気を配ることが、15歳にも求められる時代になってきました。我々大人が気をつけておかなければならないことは、このような資質が「ある日突然身につくものではない」ということです。この点に関しては幼少からの積み重ねが最も効果的であり、私の周りでは「中学生のときできない者は、高3になってもやはりできない」「高3でしっかりできている者は、中学生のときにもしっかりしていた」という傾向がはっきり見て取れることをお伝えしておかなければなりません。【参考 1】で紹介したテーマは、いずれも小学生であっても考えてみることは可能です。ぜひ親子で自由に話し合ってみてください。その積み重ねは、学生生活はもちろん社会人として独り立ちする過程においても鍛えておいて損をすることはありません。


入試問題にも登場する「発信力」

 続いて【参考 2】をご覧ください。これらは高校入試で出題された自由英作文です。一昔前の英作文といえば文字通りの「和文英訳」でしたが、いまどきは英作文にも「正解のない問い」が登場しています。出題者の意図は「理解と記憶に重きを置いた英語力」のみならず「何を考え、自分なりに整理し、まとめるか」にあります。英語で、という制限をはずせば、小学生でも原稿用紙1枚ぐらいでまとめてみることは十分可能でしょう。
 自由英作文においても、大学入試との差は語数(大学入試では70語から120語程度が多い)しかありません。英語の試験でありながら「一般教養」「背景知識」「異文化理解」といった領域まで問うこと、そして自由に解答させることによって、これまでの日本が量産してきた「暗記型の秀才」では対応できない力、すなわち「発信力」を確認しようとする流れがすでに登場しているのです。


【参考 2】自由英作文の出題例

○都立戸山高校
(理由とその具体例を含めて40語から50語の英語で答える)
Do you think it is important to use your imagination when you study something?
(何かを学ぶ際に、自身の想像力を使うことは重要だと思いますか)

○埼玉県学校選択問題
(賛成か反対か自分の立場を明らかにして、その理由が伝わるように40 語から50 語の英語で答える)
Today AI is widely used for a lot of different purposes, such as computers and machines. Some people say that AI should be used more. What do you think about this idea?
(今日、AIはコンピュータや機器などさまざまな目的のために広く使われています。AIがもっと使われるべきだと言う人もいます。あなたはこの考えについてどう思いますか?)


 最後に、こうした「発信力」を養うには長期的な練習と習慣化が必要です。都立日比谷高校が課す小論文(資料を見て答える、合計600字程度)における観点評価基準は、
ア:出題の意図を的確に把握する力
イ:資料を正しく分析し、考察する力
ウ:根拠を明確にして自分の意見を的確に表現する力
エ:文章を論理的に構成する力
と公表されています。小学生の作文といえば「自分はこう思う」という一方的な主張が目立つものですが、15歳(高校入試)でどこまで問われるかを知ったうえで、ほんの少しでも「他者の考えを想像・理解し受け入れたうえで自分の考えをまとめる」ことを練習させ習慣としていけば、入試に限らず世の中がどのように変化しようとも、お子さんの将来にとってきっと有益な財産となるはずです。

vol.120 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年4月号掲載

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