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Vol.122 大学入試改革の象徴、大きく変わる英語の概要について

 現高1生が大学入試を迎えるタイミングでスタートする「大学入学共通テスト(センター試験に代わるもの)」では、英語で民間の資格検定試験を採用することが話題となっていました。ようやく全体像が発表されましたので、その中身を確認していきたいと思います。

現在持っている英検は使えるの?

 今回採用が決まった民間の資格検定試験は以下の8種になります。

・ケンブリッジ英語検定
・TOEFL iBTテスト
・IELTS
・TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests
・GTEC
・TEAP
・TEAP CBT
・英検(1日完結型、公開会場実施、4技能CBT)

 大学入学共通テストについて簡単におさらいをしておくと、このテストはかつての共通一次・センター試験の後継となりますから、国公立大学を志願する際には必ず受験しておかなければならないものです。英語においては「聞く」「読む」「話す」「書く」という4技能が適切に評価されますから、「大学入試英語成績提供システム」の参加要件を満たした前述の民間の資格検定試験が活用されます。
 なお共通テストを受験する場合には、高校3年生の4月から12月までの期間に、予め受験生が申請した2回までの民間資格試験の受検結果が成績提供システムによって大学へ通知されるとのことですから、英語の検定に費やす時間が長くなれば受験勉強のスケジュールに影響を及ぼしそうです。これまでにもまして、特に英語では早めの継続的な準備が不可欠になりそうです。
 そうなると気になるのは、小学生でも受検している人の多い英検の扱いではないでしょうか。「1日完結型って何?」「4技能?」と思われた方が多いことでしょう。実は、現在多くの小中高生が受検している従来型の英検は共通テストに関しては不採用となり(共通テスト以外の大学が個別に行うAO・推薦入試などでは従来型も使われるとのこと)、採用されたのは新たに導入される3方式であることを覚えておいてください。お子さまが現在持っている英検の資格は、大学入学共通テストに関しては評価の対象にはなりません。
 英検によると、採用された3方式に関しては今年度中に新たな試験方式として英検CBTを、次年度より公開会場実施と1日完結型を実施するとのことですから、情報が流れ始めた際には気に留めておいてください。
 なお、現中1生が大学入試を迎えるまでは大学入試センターが実施する共通テストでも英語が用意され、資格検定試験と共通テストの英語の活用方法(いずれかを使うのか、両方ともOKなのか)は大学の判断に委ねられます。しかし現小6以降の学年では、民間の資格検定試験活用が基本となるようですから、この推移にも注意が必要です。


高3までにどのレベルへ到達しておけばいいの?

 新テストの詳細が明らかになってくると、保護者としては「高3までにどのレベルに到達しておけばいいの?」という点が気になります。ゴールの目安がわからないと逆算もできませんから、小学生・中学生の時期の勉強スケジュールが立てられなくなってします。
 大学ごとの評価基準はまだまだ公開されていませんが、そのヒントは既存の大学入試要項の中に隠れています。例えば青山学院大学では、いくつかの学部学科の出願基準に民間資格試験の数値を用いています。
 英検2級が一般的に「高校卒業レベル」と言われていることを考えると、表にもある通りいわゆる難関大学レベルでは英検準1級レベル以上の受験生が集まってくることが予想されます。求められる資質は同じですから、就職活動や留学の際に求められるTOEFLあるいはTOEICを早い時期から受検する中高一貫生も増えてくることでしょう。一部の中高一貫校ではGTECを受検させているところもあり、おそらく学校によって推奨する資格試験が異なることが予想されます。「全員一律でこの試験を使いなさい」という学校からの強制はないと思いますが、地域によっては試験会場の利便性が問題になったり、学校行事との兼ね合いで試験時期を考慮して試験を採択したりする可能性もあります。どの試験に照準を合わせておけばいいのかについては、まだまだ不透明な部分が多いのが現状です。試験ごとの時期や会場といった細かな違いについても可能な限り確認しておくに越したことはありません。

 

青山学院大学 外部資格試験を出願資格として利用している学部(2018 年度 一部)

                                                       
国際政治経済学部
国際政治学科
B方式
総合文化政策学部
総合文化政策学科
B方式
地球社会共生学部
地球社会共生学科
B方式
T E A P2技能 110点以上
Reading / Listening
2技能 110点以上
Reading / Listening
英検準1級以上2級以上2級以上
I E L T S5.0以上4.0以上4.5以上
G T E C850点以上1100点以上
TOEFL iBT57点以上42点以上50点以上
T O E I C560点以上500点以上500点以上

 先日文部科学省が公表した「平成29年度英語教育実施状況調査」によると、英検準2級以上およびそれに相当する英語力を有する高校3年生は39.3%、英検3級およびそれに相当する英語力を有する中学3年生は40.7%とのことです。国の目標はいずれも50%に設定されていたのでまだまだ課題が多いのですが、大学入試での各大学の基準が判明してくれば加速度的にこの数字は上昇することでしょう。
 しかしながら我々大人は、今回の大学入試の目的が「実社会で使えない英語」ではなく「使える英語」の習得にあることを忘れてはいけません。否応なく国際社会の一員としてのふるまいが求められるであろうこれからの子どもたちに、「大学入試に必要だから」という理由だけで英語を勉強させ検定を受けさせようとするのは筋が違います。小学生のお子さまに対してはまず英語を楽しむこと、コミュニケーションツールとして使えるようになることを優先してあげてください。試験の得点や級に振り回されてしまうようだと「英語が好き!」と言えなくなってしまうかもしれません。英語と一生付き合っていく世代にとって、大学入試はゴールではないのですから。

vol.122 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2018年6月号掲載

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